↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遅咲き王子のお隣に  作者: 白澤 五月
第二章 溺愛陛下と仮王妃
PR
70/77

13 変わらない優しさ

遅くなりすみません!


いかにもチャラ男で軽口ばっかりのあのレオがまさか騎士団の団長だなんて、嘘じゃないのかと頭がパンクする。……でも剣を持ったこともない素人の私でさえ目を見張る、圧倒的な剣術と彼の憎たらしいほど余裕そうな表情がそれを証明していた。……けど。


「…………レオさんって"残念イケメン"って言葉が誰よりも似合いますよね。これに騙されている女の人がちょっとだけ不憫になります」


「えぇ~?クレアちゃん、そこはかっこいい!って褒めたり、きゃあすごいわ!とか言ったりするところでしょ!?それに"残念イケメン"ってひどい!それに、残念イケメンなんて言葉はアイザックのほうが似合うって!」


…………そういって見た目にそぐわないのに騒ぐからなんですけれど、というのは心に留めておこう。めんどくさくなりそうだし。


私はええー、と不満そうな声をあげるレオから視線を地面に倒れた騎士たちに移した。剣を使ったといっても、ルイスもレオも彼らを刃で切ってはいないようで、見た感じ彼らは擦り傷だけだった。


現団長の彼の近くへ行き、容態を確認すると、大きな怪我もなく、ほっと安堵のため息が漏れでた。紋章の呪いを解くためといえども、たくさん血が流れたりするのも、ルイスたちが人たちを殺すのも見たくないのだ。


「ん、んん…………」


低く、唸るような声を発した団長を一目見て、私はルイスたちに伝えようとした一瞬の間で脳内会議が開かれた。


(ど、どうしよう。王子のこと何て呼んだら……でも皆の前で呼び捨てなんて無理……でもルイス王子って呼ぶのはもう違うし……)


「えーっと……る、ルイス様、団長さんが目覚めたみたいです!彼らにかかった紋章の呪いは……?」


ルイスのことを何と呼ぶか迷ったのを感じとったのか、レオはぶふっと盛大に吹き出し、ルイスは眉を寄せて複雑そうな顔をした。私のせいで緊張の欠片も失くなってしまった雰囲気の中、恐る恐るルイスを振り返る。彼の手の甲で主張する青い紋章に異変があるのかどうかのほうが大事だし。


「……ないね」


ルイスの方も違和感はないようで、首を横にふった。それにまたほっとするが、彼が微かに片方の口角を上げて何か企んでいるような気がするのは見間違えだろうか。……うん、知らないフリをしよう。ついこの前、ルイスに名前で呼ぶように言われていたことを忘れたように頭の隅に追いやった。


するとルイスの返答とほぼ同時に団長が目を薄く開く。


「……こ、ここは?…………それに、あなたは?」


彼は何が起きているのか、そして私が誰なのかさっぱりというように眉を寄せた。大きな身体とは似合わない、不安そうな顔をする彼にとりあえず私は自己紹介をする。


「私は王城のメイドのクレア・アステリアと申します。第二王子のルイス様のことで少し問題が発生しまして……お体は痛くありませんか?」


第二王子、という言葉を聞くと彼の顔が一瞬で驚きに染まる。それは当たり前といえば当たり前。"王族"の名前なんて言われては落ち着かなくなる人がこの国ではほとんどだろう。


眉をしかめる現騎士団長さんがむくりと上半身をおこし、自分の広い背中をさすりながら、王子を探すべく辺りを見渡した。


「レオ団長……!?」


「やあガルダス、久しぶり」


相変わらずの飄々とした態度にガルダスは驚きを隠せないようだった。そして隣に並ぶ、整った顔だちの大人びた青年を見ると数秒考えた後にルイス王子だと分かったように頭を下げた。そしてルイスは彼の元に手を差しのべた。


「あなたがもしや……?」


「初めてまして、ガルダス団長。少しお話する時間を取ってもらっていいかな?」


★ ⭐ ★ ⭐ ★ ⭐ ★


「……も、申し訳ございませんでした!!」


私達は騎士たちが意識を取り戻した後、騎士団の団舎に通してもらった。中は……言うまでもなく、少し物が散乱していていかにも男性たちだけが使用している所という感じがした。レオもうげ、と眉をしかめたから、彼がいた頃より汚いのだろう。


「女性を危険にさらした上に、王子や団長までもそんな無礼を取っただなんて……!団長を辞職なぞでは足りない、ここは私めの命でこの無礼をお許し願えるだろうか……!」


ガバッと勢いよく土下座をかました団長にこちらもどうしたものかとうろたえる。騎士たちも団長の命懸けの申し出にそんな、と顔が真っ青に染まっている。


「……どうするの、ルイス?」


レオがおどけた様子でそう尋ねた先には神妙な顔をしたルイスがいた。その様子をみる限り彼が何を考えているのか分からない。


(……え、嘘。本当に団長さんを処刑しちゃうの?)


地面に膝をついた団長のもとへゆっくりと歩くルイスの様子を見てこちらもハラハラとする。この5年で彼にどんな心情の変化があったのか分からない。


(……でも)


「…………ガルダス」


「……はい」


重々しい声で返答したガルダス団長は足元に視線を落としたままだった。


「君の命なんていらない。それに、君の団長なんていう肩書きも欲しくもなんともないよ」


柔らかな声と優しい表情がルイスを彩る。やっぱり、と安心の思いと共に思わず口から溢れる。5年たってもやっぱり、彼は優しいのだ。ガルダスはその声に思わず顔を上げた。


「……そ、それは何故なのでしょうか!無礼を働いた者にはあなた様の父上や兄上ならば直ぐに処罰なされた……それなのに……私めには分かりかねます」


予想外の答えに驚きを隠せないガルダスが視線を彷徨わせる。それにルイスも少し驚いたような顔をした。


この国では王様の気分でたくさんの人が仕事をクビになったり、最悪では不敬罪で死刑の時もあった。この5年で王様は自棄になったようにそのような処分を下すことが多かったのだ。そのせいか私達使用人をはじめ、彼ら騎士たちも王子たちが帰ってくるのを心待ちにしていた人もたくさんいた。


ルイスは膝をつき、彼と同じ目線になると同時に口を開いた。


「……君も知ってるだろうけど、僕は父や兄とは少し境遇が違う。だから考え方も違うんだ、それだけだよ」


王族であるはずの彼のその行為に騎士たちは目を最大限開いた。私とレオはふふっ、と笑いをこぼす。さすが、私達の王子様だとでも叫びたくなるほど爽快な返答に嬉しさでいっぱいになった。


「……そうで、ございますか」

「ルイス王子っありがとうございます~!!」


ガルダスの声を書き消すように騎士たちが喜びと共にルイスに群がった。狭い部屋に大きな繭玉のような塊になった彼らの表情は喜びに満ち溢れていた。

次回は話が大きく進む予定です!

早めに、更新いたしますのでよろしくお願いいたします!

評価や感想いただけると更新の励みになりますので、どうぞよろしくします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。