47 土下座のポンコツたち
「よしっ!できたー!」
両手を大きくのばし、目の前に並ぶ
スイーツの数々を見る。
プリンにチョコケーキ、ミルフィーユに
びっくりするサイズのタルトタタン。
艶々と光を反射するそれらは我ながら美味しそう。
「あらぁ!クレアちゃんすごいわ!
プロになれちゃいそうだわぁ!とっても美味しそうねぇ!!」
隣で両手を握り顎に寄せて
褒めてくれるのはシェフのジェームスさん。
相変わらずの女性口調は筋肉ムキムキの姿から出るのは
やはりアンバランスである。
「本当ですか?ありがとうございます!」
「全部実費なんでしょ?がんばったわねぇ!
やっぱり愛の力なのかしらぁ!!うふふ」
「違いますってば……もう」
今日はルイス王子の13歳の誕生日。
クレアは先日城下町で会った変なおじさんの助言で
ルイス王子の誕生日プレゼントととして
タルトタタンを作ることにした。
でもタルトタタンだけなのは物足りないため、
自分の出せる範囲で材料をかき集めた。
前のパーティーで作ったのは王子に食べてもらえなかった
からたくさん食べられるようにしたかったのだ。
「それでもルイス王子、きっと喜ぶわよぉ!
最近もアイザックちゃんとレオちゃんと三人で
訓練頑張ってるみたいだし!」
「そうですね、喜んでくれるといいんですが……」
やはり形に残るものではないから
少し不安が残る。クレアは机に並ぶスイーツをみてうつむいた。
「当たり前じゃないですか!」
「うわぁ!?スフィアさん!?」
後ろからにょきと現れたのは先輩メイドのスフィアさん。
しっかり整えられた姿から彼女には仕事のできる女の
雰囲気がバリバリ出ている。
「あら、すみません。
でもクレアさんの作ったものですからね。
きっと喜びますよ」
「スフィアさん……」
他人の恋愛好きの彼女はもっと冷やかしたような
ことをいうかと思っていたが優しく言葉に心が温まる。
「もちろん愛のパワーで」
(……ですよね)
ぐっと親指を立てた彼女はふんふんと鼻息が荒い。
いつも通りの彼女の姿にさっき暖まった心も
ぎゅんと冷える。
まったく恋愛チェッカーとしての機能は
今現在も働いているようだ。
「……まぁ、私は先にいきますけど2人も
ぜひ来て下さいね。王子も待ってますし」
「「はーい」」
クレアは机のできあがったばかりのスイーツたちを
かごに入れて別邸に向かった。
― ― ― ― ― ― ― ― ―
(……王子、喜んでくれるかなぁ)
がたごとと揺れる馬車の中でかごの中身を確認する。
この一年で培ったスイーツ作りの腕を見せつけるような
キラキラと美味しそうなそれらは
少し自信を取り戻してくれた。
御者さんにお礼をいって別邸の庭に降りる。
すると数台の馬車が止まっていた。
(……あれ?)
先にアイザックやレオが来たのかと思ったが
2人とも乗馬ができるため馬車ではここにこない。
そのため馬車を使うのはスフィアさんとジェームスさんだけ。
でもその二人はまだ厨房にいるはずだ。
それに止まっている馬車は金や銀など豪華に装飾
されている。平民が乗るものにしては派手である。
なにより、この別邸のことを知っているのは
王子を含めて6人だけだ。
(……誰?まさか王族の誰か……!?)
もし、ポンコツ王子や王様だったら
ルイスのことを消しに来たのかもしれない。
クレアはスイーツそっちのけで別邸に入り
階段をかけ上る。
途中にレオと同じ騎手の服を着た男たちがこちらを
見て止めようとするがそれを振り払う。
彼らがここにいるなんて更に怖い想像が広がる。
「王子!ルイス王子!大丈夫ですか!」
バタンと王子の部屋を開けると部屋の中ではーー……
「は!?」
狐顔の宰相にポンコツ王子、そして王様が
ルイスを中心に土下座していたのだ。
「あ、クレア」
少し戸惑ったような様子のルイス王子は驚きのあまり
固まっているクレアを呼んだ。
「る、ルイス王子?これは……?」
ガタガタと震えながら指を指す。
するとガタンっと大きな音を立てて半開きだった
扉が開いた。
「陛下!王子!大丈夫ですか!
今、怪しい女が乗り込んできたと……!」
「わっ!」
四、五人の騎士が部屋に乗り込んできたと思ったら
クレアの腕を乱暴につかんだ。
どうやら変質者のように思われているらしい。
「ち、違います!私はルイス王子の……!」
「止めよ!彼女は次期王、ルイス王子の妻になるお方だ!」
狐顔のまさに悪い人というような宰相が叫ぶ。
騎士たちは彼の指示に固まったが、
力を緩めはなしてくれた。
(……ふぅ、良かった。助かった……って)
「はい!?」
ルイスが次期王様で、私はルイスの妻!?
ってことは王妃様!?
ルイス王子のほうをすがるように見ると
「……ごめん」
少しきまづそうに頬を染めるルイスを見て
頭の中がパニック状態に陥る。
何がこうしてどうなったの……!?




