46 誕生日プレゼントとおじさん
「へぇ~、そんなことがあったのね」
クレアは同僚のメイド、アンナの前に
ベッドの上で背筋よく正座していた。
一昨日のパーティーで起きたことと
王子と話したことをアンナに軽く話した。
"誰も信用できてなかったかもしれない"という
友達にはきつい話も。
「……なんか、ごめん。
アンナのことを信用してなかったわけではないのよ。
今回のことでもしかしてって気づいたというか……」
「まぁ、私薄々気づいてたのよ。クレアが
他の人に弱みを握らせないように生活してるの。
この前だって半分冗談でいった高いチョコだって
実費で買ってくるわで驚くの何の。
……逆に今回でクレアのことを深く知ることができて
よかったわ」
「アンナ……!」
なんと、友人の口からそんな優しい言葉が出るとは……!
「でも嘘つきは許しません」
ええ……と情けない顔をするクレアをみて
アンナはぷっと吹き出した。
「そ・の・代・わ・り、ルイス王子との関係を教えなさいよ!
あんたたち密かに噂になってんのよ!
華麗な駆け落ちみたいなの見せられて年頃の女の子たちは
あれやこれや妄想たくましくいろいろ捏造してるんだから!
……聞きたい?」
「いや、王子とはそんな深い関係ないからね!?
王子と使用人、それだけだってば!」
「ふーん、そんなに必死に否定するのは
隠したいことがある証拠~!教えなさい!」
「……だって王子と私、年の差が4歳!
相手は今12歳なの!それに王子!ありえないでしょ!」
「違う違う、そんな建前を聞きたいんじゃないのよ!
あんたがルイス王子のことをどう思ってるのかを聞きたいの!
他の人には絶対教えないわ!商家の娘の誇りにかけて!」
本気で顔を覗き込むアンナに根気負けて
クレアはしぶしぶ口を開く。
「……王子はまだ幼いけどかっこよくて、
それでいて優しいの。王様とかにはよく思われてないけど
そんなの関係ないし、尊敬もするけどね。
でもさすがにルイス王子に対して恋愛感情は
抱けないと思うのよ」
「……あと一歩だとおもうんだけどな。
まぁ進展があったら教えてよ」
「……うん」
アンナの変わらない様子にほっとしたが、
どこか胸のもやもやは残ったままだった。
― ― ― ― ― ― ― ―
「あーあ……王子との仲、ねぇ」
クレアは寮を出て、馬車に乗っていた。
今日はルイス王子は訓練といって別邸にもいないし、
お城のお仕事も一段落していて手伝うこともない。
特にやることのないクレアは1人ぼーっと考えていた。
(暇ねぇ……ここにきてから久しぶりの感覚……。
何かやれることはないかしら)
いつでもやれることを先にやるという
少し職業病みたいになっているのだが、
気づかない彼女はんーと考える。
「あ、そうだ!来月は王子の誕生日!
御者さん、城下町に向かってもらえますか」
来月末はルイス王子の誕生日である。
アンナの資料に書いてあったのを思い出した。
御者はこくんとうなずくと馬車は方向をかえて
走り始めた。
― ― ― ― ―
城下町は風がよくとおり、寒さがキンキンと
体に染み込む。
手はかじかむし、耳まで冷たい。
「……寒い。王子のプレゼントを買ったら帰ろうかな」
キョロキョロと何か王子が喜びそうなものはないかと
探していると1人の男の人とぶつかった。
「わぁっ!」
「おっと。すまないね、お嬢さん。
大丈夫かい?」
「あ、はい。大丈夫です」
その男の人は50歳くらいでどこか気品がある。
ここにすむ平民の男性にしては少し小綺麗だ。
「……君は!」
「……?なんでしょうか」
クレアの顔をみて不思議そうな顔をしている彼に
何事か尋ねる。
「……いいや、人違いだ。悪いね。
それより、君はこんな寒い中1人で何しにきたのかね?」
「あ、えーと……知り合いに誕生日プレゼントを
買おうと思って」
王子を知り合い、なんて言ったのは
少し気が引けるが、さすがに初対面の男の人には言えない。
なんせ彼はこの国の王子なのだから。
「そうかい、優しいね君は。
こんな誰もが家から出たくないほどの寒さなのに」
「いえ、そんなことないです。
彼にはいつも優しくしたもらったり……お世話になってますから」
ただの知り合いの男の子への感情としては
少しばかり好意が混ざっているのはクレアは
気づいていない。
そのおじさんはクレアが頬をピンクに染めているのを見て
ほぉ、と目を見開いた。
「……それではこんなモノはどうかな?」
おじさんが突然お店の並ぶ方へ走っていく。
(……何、どうしたのかしら)
数分後おじさんがはぁはぁと息をきらせて帰って来た。
げほげほと咳き込みわたしたのは
りんごに卵、小麦粉に砂糖などが入ったかご。
(……ん?これって……)
「タルトタタン!どうかな?
甘いものは小さい男の子好きだと思うけど!」
かごを顔の高さまで高くあげてにこにこと
微笑む彼は先ほどまでの彼の気品がある雰囲気とは
変わり、和らいでいる。
(あぁそういうこと……まさか男の子がルイス王子だと
ばれたのかと思ったわ)
タルトタタンなんてルイス王子の好物であるから
一瞬ヒヤッとしてしまった。
「……そうですね、彼も甘いもの大好きなんですよ。
でも、食べ物じゃ形に残らないからやめようかと
思ってたんです」
確かに王子へのプレゼントととしてお菓子を作るのは
考えていたけれど、誕生日を過ぎても残るモノが
いいと思ったからだ。
でも、プレゼントとお菓子の材料を両方買うと、
お金が足りないのが難点でどちらを優先するべきか
悩んでいた。
「そうかな?お嬢さんが心をこめて作ってくれたことが
記憶に残ることが大切だと思うけどな。
確かに形に残ることもいいと思うけど、
思い出のほうが大切だと思うよ」
にこにこと微笑む彼は心からそう思っているようで
クレアの心に染み渡る。
悩んでいたのもすっかり晴れ渡ったようだ。
「……そうですね。彼の思い出に残るように
最高のタルトタタンを作ろうと思います!
ありがとうございます」
彼の助言にお礼をいい、材料を買いにお店に行こうとすると
腕を捕まれる。
「……うぇ!?」
(今度は何!?)
おそるおそる振り返るとおじさんは
再びかごを持ち上げた。
「……お嬢さん、僕にもこれでタルトタタン作ってくれるかい?」
振り返り彼の瞳をみてみるとキラキラ輝いていて
それはまるで……。
甘いものを見つめるルイス王子のよう。
「……お礼に作らせていただきますね……」
変なおじさんはクレアが近くの家の台所を借りて
作ったタルトタタンを食べて
ルイス王子のように目をキラキラと輝かせたあと
颯爽と帰っていったのだった。
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どうも、「遅咲き王子のお隣に」を読んでくださり
ありがとうございます!作者の白澤五月です!
あと数話で第一章完結です!
無事にここまで投稿できてよかった……
皆さんの応援のおかげです。
引き続きよろしくお願いいたします!




