44 大切なモノ part2
「こんばんは、皆さん」
(……え?)
目に涙を浮かべながら後ろを振り向くと
シルクのような銀の髪に深い海のような青い瞳の
美少年……ルイスが立っていた。
「ルイス、王子……」
「きゃぁっ!あなたがルイス王子なの?
カッコいい~!!」
「嘘、オーディン王子の比にならないくらいカッコいい!」
「少し幼いけど、美しい王子ね……!」
後ろに立っている令嬢たちはルイス王子の
美しい容姿に色めき立っている。
「あ……」
ルイスの顔をみると先ほどの令嬢たちの言葉が
頭を駆け巡る。"毛色の珍しい猫"。
王子も父のように思っているのか。
そう考えると彼の顔をみれず、身体中が震える。
「ごめん、少し待ってて」
そうルイス王子が近づいてそう言い、
クレアの頭にポンと手をおいた。
そして優雅に令嬢たちの前に歩んでいく。
「あのぉ、初めまして。デイジー・モランソワと
申します。以後お見知りおきを……」
にこにこと笑う彼女たちは
先ほどの鋭い目付きとガラリとかわり
ルイスに媚を売っていた。
「どうも、初めまして。ルイス・ヴェルダーと
申します、ご令嬢たち」
ルイス王子は彼女たちの挨拶にあわせて
にこにことしている。まるでアイザックのようだ。
「パーティーを楽しんでいただいているようで何よりです。
……ところで、あなた方が今口にしていたスイーツは
いかがでしたか?」
「まぁ、それはもう!美味しかったです!
王子の父上が好んでいらっしゃるのも分かりますわ!」
甲高いこえでルイス王子にすり寄る姿に
クレアは胸がもやもやする。
さっきまでバカにしていた王子に
手の平を返すような様子に納得がいかない。
「……そうですね、それらのスイーツは
クレアが作ったんですよ」
「……はい?」
(……ちょ、ルイス王子?)
それは言うのはタブーじゃないのか。
彼女たちが嫌う私が作ったものを食べていたなんて
屈辱以外の何でもないだろうに。
「ですから、そこのタルトタタンからプリン、他のケーキも
彼女の手作りなんですよ」
「な、なぜですの?彼女はただのメイドでしょう?
こんな美味なもの作れるはずが……」
「いいえ、彼女は優秀ですから。
他の女性に劣ることはありません」
王子がそう言うと彼女たちは眉をぴくと
ひきつらせた。
「……へぇ、そうなんですか。
でもそれは惑わされてるだけでなくて?
その珍しい金の髪、とか」
「……っ!」
にやっと笑い、こちらを見る彼女たちに息がつまる。
(……王子)
「いいえ、全て本心です。
彼女の髪が珍しいのは彼女が特別な女性なんだから
ではありませんか?……あなた方と違って」
ルイスは笑顔の下に毒を隠していたがとうとう
表にでてきてしまった。
つまり、あなたたちは平凡でクレアに劣るといった。
「なっ!」
パシャ
デイジーが持っていた白ワインが
王子の頭にかかった。
「あっ!ルイス王子!大丈夫ですか」
「あ……そ、その申し訳ございません!王子」
感情的に行った行動にしては重罪であり、
その行為に令嬢たちは顔を真っ青にしている。
「……いいえ、おきになさらず。
すみませんが、先に戻らせていただきますね」
ルイス王子は頭からかかったワインに怒らなかったからか
令嬢たちはほっと安堵していた。
ポンコツことオーディン王子ならこの場で処分を下すからである。
ルイスは髪を緩くかきあげると、
貴族の令嬢たちは皆頬を染めた。
「あ、私が拭きますわ。
そこのメイドより私のほうがルイス様に
似合うかとおもいますし……」
令嬢たちが周りにいた使用人から布巾を
奪い取ると、ルイスに近づいた。
「……悪いけど、退いてくれる?
僕は君たちよりクレアの方が大切なんだ」
ルイスは令嬢たちをギンッと睨むと、
辺りは氷点下並みに冷えた。
「……王、子?」
「ほら、立てる?行くよ」
座り込んだままのクレアのもとへかけより、
しゃがみこむ彼はまるでおとぎ話に出てくる
王子のようだ。
ワインがかかり、崩れた髪ですら
ルイスの魅力をかき消すことはできなかったのだ。
クレアは彼の誘いにおもわず手を差し出すと
ルイスはぐいっと引っ張った。
そのせいでクレアはルイスの胸に飛び込んだ。
「ここの皆さん、このことは内密におねがいします。
そこの令嬢たちが僕に働いた無礼は連帯責任しますから。
……僕がつぼみ王子だと甘く見てると痛い目にあいますよ」
再びルイスが広間の貴族たちを一睨みすると、
にぎやかだったはずの会場はしんと静まり返った。
「あっ、ルイス王子!」
ルイスはクレアの手を取り、
お城を出た。




