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遅咲き王子のお隣に  作者: 白澤 五月
第一章 つぼみ王子と没落令嬢
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39 訓練は男の秘密

「……で?どういうことなの、

 アイザック、レオ?」


 銀髪の美少年は訳も分からないまま

 森につれてこられて2人を訝しげに見た。

 どちらもルイスより年上で、イケメン優男と

 褐色の色男である。

 2人はまったく悪気はなさそうであるのだが、

 それが逆にルイスの神経を逆撫でる。


 それもそのはず、メイドのクレアと

 朝食中に会話を楽しんでいたのに

 突然 "訓練をするぞ、ルイス!来い!!" と言われても

 何がなんだかさすがのルイスでも

 分からないのである。


「どういうこともなにも、訓練だよ、訓練!」

 ニコニコと楽しげに笑う

 紫色の瞳は面白がっているようにしか見えない。


「そうだ、ルイスお前には

 今日から体術、剣術、それに知識を学んでもらう!」


「……は?」


 まったく頭にはいってこないし。

 2人の言葉はルイスの朝の頭を混乱させた。

 ただでさえ、人間は朝に弱いんだから。


「……何をいってるのか分からないんだけど」


「だから!お前には王族の象徴する紋章がないだろう。だから訓練してこのくだらない王族の戦いに少しでも有利になるんだ」


 自信満々にそう答えたアイザックは

 優男称賛されるその美しい顔をニヤリと歪ませ

 ている。


「いや僕王位に興味ないし……。

 それになんでそんな訓練が必要なの」


 朝から突然の訓練やりませんなという勧誘は

 ルイスの胸にはまったく響かず、

 ただ冷静に彼らを問いただす。

 するとそんなルイスの様子にしびれを切らした

 紫色の瞳の青年がわざとらしくチッチッチと

 人差し指をメトロノームみたいに揺らした。


「まったく、ルイス王子はクレアちゃんを

 守りたいとは思わないのかい?訓練して力も立場も強くなってこの前みたいな時に自分の力だけで助けたいって」


「……え?」


 何を言い出すんだ、この人は。

 クレアを守る?確かにこのまえの兄上の件では身の危険を

 感じるような騒動であったみたいだけど……。


「おい、もしかして無自覚なのかよ……?」


 わなわなと体を震わせるアイザックは

 信じられないこの鈍感とでも言いたげである。


「だから何を言ってるの」


「お前クレアのことが好きなんだろ?」

「王子クレアちゃんのこと好きなんでしょう?」


 ……何だって?

 2人そろっての急な発言にまたもや頭がついていかない。

 朝突然別邸に来たと思ったら

 やれ訓練しろ、知識だ体術だ。

 そしたら今度は《クレアのことが好きだろう?》

 って……


「何言ってるの、クレアのことは好きに決まってるでしょ。

 もちろん皆もそうだと思ってたけど、違うの?」


 2人はそろって大きなため息をつき、

 僕の方をかわいそうなやつという顔でみている。


(ちょっと、露骨すぎない……?

 というか何がおかしいのか分からないんだけど……)


「はぁ……だから子供は」


「なんか逆にこの王子に負けてる俺らって

 つらいね……」


「負けてねぇーし!そもそも争ってねぇーよ!」


 ぎゃあぎゃあと今度は2人で言い合いを始めてしまった。まったく何が言いたんいんだか理解できない、

 クレアのことが嫌いな人はこの別邸に来る

 4人ではあり得ないと思うのだが。


「ねぇ、もういい?僕まだ読んでない本

 読みたいんだけど」


「おい待て。それはダメだ」


 がしと肩を捕まれ、逃げられなくなった。

 あーあ、昨日部屋から引っ張り出した

 この国の地理と歴史についての本を

 読みたかったのに。


「まぁ、自覚してないならそれは

 また今度。でも王子が強くなれば

 得なことがたくさんあるのは分かるでしょう?」


 クレアにチャラ男と評される彼は

 意外と堅実で、便りになる。

 彼の言葉に少しは納得するが……。


「まぁ……「じゃあ決まりだ!」……え、ちょ」


「じゃあ王子まずは体術に剣術から

 いってみましょー!」


「おい、ちょっと」


 考え込んでいるうちに、ぐいぐいと腕をひっ張られ

 強引に訓練を始めることになってしまった

 ルイスであった。


 ― ― ― ― ― ― ―


「……はぁはぁ……2人とも少しは手加減を知ってほしいんだけど」


 レオを中心に体術と剣術の訓練が行われたのも

 今から3時間前。

 2人はルイス相手に手加減など知らずにぶっ通し

 に手解きをしていた。

 二年ぶりの訓練はルイスにとって大分体にこたえたが体幹をつけろやら、素振りを毎日しろやら文句や注文が多い。


「何をいってるんだ、このあとは俺と知識対決だ。もちろん俺が勝つけどな」


 ニヤニヤと満足そうに笑う腹黒アイザックは

 ルイスの疲弊した様子に喜んでいる。

 ……まったく性格が悪い。

 しかし、売られた喧嘩を買わないのは許されない。


「わかった……受けてたつ」


 ― ― ― ― ― ― ―


「チャラン!

 Q100 我が国レアリウス王国、三代目国王の名前は?」


「「ジョルジュ・ヴェルダー!!」」


「チャラン!!

 Q104 南方に位置する貧民街の名前は?」


「「ガリアス南方村!!」」


 早押し対決のようになったこの対決も

 既に100問を、こえクイズ150選の本を

 片手に問題だしていたレオも飽きていた。


「……2人とも埒が明かないよこれじゃ……」


 退屈そうに肩を叩くレオはやはり体育系であるようで

 知識などの小難しい話はパスだという。


(案外楽しいのにね)


「いや、まだいけるだろ」


「そうだね、まだ大丈夫」


 ……なにを争ってるんだかこいつら……と隠すつもりもない

 彼は顔にばばんと、あらわれている。


「……いーや、休憩ね。初日から倒れても

 困るし、俺は男の看病しないからね」


 レオはぽすんと冷たいタオルをルイスに

 わたし、ひらひらと手をふった。


「……ありがと」


 ひんやりのしたタオルはここ数時間の

 疲れと熱を取ってくれた。

 この間まで別邸にずっとこもらされていた

 ルイスにとって体力も残り少ないので

 レオの提案は助かった。


(ガリアス、ね……)


「ねぇ、さっきの問題にも出たけどレオの

 故郷とか、レオの昔話ってどんな感じなの?」


「……は?」


「あぁ、それは俺も気になるな。

 ちょっとお前話してみろ」


「いやなんでアイザックはいつも命令口調なんだよ、

  俺Sな男興味ないんだけど?

 ……それに王子、ガリアスに興味がおありなんですか?」


「うん、僕は本からしか知識ないからね。

 実際にそこで生きてきた人物がいるんだったら

 聞いてみたい。それにそこで生きてきたレオのことも

 知りたい。」


「……本当、元令嬢や大貴族、それに国の王子

 なのに君達変わり者だね……。

 わかった、少し俺のことも話すよ」


 どこか恥ずかしげにそう答えたレオは

 嬉しげに頬をかいている。

 そしてゆっくりと、話をするため3人はそろって

  芝生に腰を掛けた。

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