22 手紙とお祭り
梅雨の時期が過ぎ、とうとう夏がやってきて国中が活気溢れてきた。レアリウス王国は比較的夏は気温が上がりにくく、日中も快適に過ごすことができる。そのため、子供たちは外で遊べるためご機嫌である。
しかし、今日このごろのクレアはと言えばーー。
「何なのよ!これ!」
ーー荒くれていた。
朝急いで別邸まで来る途中、郵便屋さんに呼び止められたと思ったらこの大量の手紙の数々。合計15通はあるだろうか。気になる送り主はあの第一ポンコツ王子オーディンとあの偽優男の腹黒貴族アイザックからである。
クレアはその手紙がたくさん入った袋を机に
投げつけた。なぜなら、その手紙の内容はーーー。
『クレア嬢、最近君の顔を見ていないが、体調が悪いのかい?それとも僕と会えないからと寂しくなってるころかな?大丈夫、僕が今、王都を離れているのは君への思いが揺らいだわけではなく、会議があるからだ。使用人にいって早く帰れるようにしたから安心して待っていー』
グシャッ
『クレア、最近、うまくやってるのか?この前森から歌声が聞こえたんだが第二王子のだろ?気を付けてくれよ、もし俺がお前に王子のことをなつけて言うこと聞くようにしろって言ったのばれたら困るんだからよ。まぁ、お前は音痴だからお前が歌ってないのは知ってー』
グシャグシャッ
「まったく何なのよあいつら…!人をばかにして…!もー!!」
手紙をぐじゃぐじゃに丸め、ポーイと投げた。ポンコツは勝手に寂しがってるって決めつけて私を慰めようとしてるし、腹黒の手紙なんて自分勝手!外はからりと晴れて良い天気なのにここ最近一番イラつく。
「……何?どうしたの、クレア」
「うわぁっ!?ルイス王子!?」
突然後ろから聞こえた声に振り替えると美しい顔の少年、ルイス王子が立っていた。急いで、床に散らばった手紙をかき集める。
「い、いえ、なんでも。それより、王子はどうしたんですか?
朝食は食べ終わったんですか?ダメですよ、しっかり食べなきゃーあはは…」
早口で捲し立てる私に王子は首をかしげたが、どうしてもこれは死守しなければならない。なぜならルイス王子の兄からの変な手紙にあの腹黒の最悪な命令の手紙だ。どっちの言うことも聞くわけないでしょう!と心の内で二人の顔をぼこぼこと殴った。
「……まあ、いいけど。クロの爪を切ってあげたいんだ。つめ切りある?」
そう照れたようにこちらをみる王子は最近より年相応になったよつで嬉しい。ちなみにクロというのはあのルイス王子が大切にしている黒猫のことだ。あの日、別邸に戻って毛を拭いてあげてる時に思い付いたそうだ。まぁ、毛の色が黒色であるところからきている簡単な名前だけれど、王子らしくていいと思う。
「あ、あぁ。分かりました!ちょっと待ってくださいね」
おほほーと笑ってつめ切りを渡す。もちろん、手紙は見えないように。
「……変なの。まぁいいや。ありがとう」
そう言って二階に登っていった王子を見送って一息つく。
「っはぁー…!もう、どうにかしてほしいものだわ…」
どうにか王子には見せたくないこの手紙たちを守り抜くと、どっと疲れてしまった。ポンコツに最近会わなかったのは私にとって
幸運だったのにわざわざ手紙まで送ってくるとは…。
まぁ、それは100歩、いや1000歩譲っていいだろう。あのポンコツ王子のことだし。
しかし、あの腹黒貴族の手紙は最悪だ。よりによってあの時、
王子が歌ったことがばれているなんて。私だけが聞けて特別だな、なんて嬉しかったのに。まぁ実際はクロも聞いたけど。
(それにー………)
《気を付けてくれよ、もし俺がお前に王子のことをなつけて言うこと聞くようにしろって言ったのばれたら困るんだからよ》
(何よ、これ!私このために王子の専属メイドやっている訳じゃないのに!!人をモノ扱いするなんて良い度胸してるじゃない…!)
その瞬間放たれたクレアの負のオーラは上で王子に爪を切ってもらってるクロの野生のかんを怯えさせるほどだった。
ガチャン
「クレアさん、ルイス王子、いますかーってうわぁ!!」
扉から入ってきた女性はスフィアさんだった。私の負のオーラを感じてか、玄関口で固まってしまっている。
「あ、すみません。ちょっと嫌なことがありまして」
てへっと謝るとスフィアさんはびっくりして抜けた魂を取り戻したようだ。
「いえいえ、誰でもそんな時はありますからね」
(あぁ優しい!あの男どもよりずっと優しい!!)
スフィアさんの優しさに負のオーラが抜け、彼女を、尊敬の意で見つめる。
「ふふ、そうだわ。ルイス王子はいるかしら?」
「いるよ」
「え!?」
驚きの声をあげて、後ろを振り替えると少し後ろあたりにルイス王子が立っていた。腕には黒猫を抱きながら階段を降りてきていた。
「………何?」
「いや、いつからそこにいらっしゃったのかなって…」
「……スフィアが入ってきてからだよ、気づかなかったの?」
ふぅーよかった、セーフだ。王子とスフィアさんはやっぱり不思議そうにしているけれど、私はあははと作り笑いをして取り繕う。
(この手紙たちがバレなくてよかったよかった)
すると、スフィアさんが腕にかけたかごから紙を取り出した。
「王子、クレアさん。これ見てください!」
ばっと机の上に広げられた一枚の紙。それはーー。
「「建国記念祭?」」




