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不知火戦奇  作者: tsuru hiroki
47/210

暮合の海

序


強い日光に塀の影が濃く落ちている。

クマゼミの騒々しい鳴声が響く。

不知火屯所、作議の間には重苦しい雰囲気が流れている。


「旗本が弥者帰りとな」

不知火隊長、伊庭辰之進が口を開いた。

作議に参加しているのは副長、織田刑部、風祭玲。

また技研の松橋中佐、御津菱の竜井研究主任である。

「中将のお耳にはいずれ入る事と思いますが。」

「事が重大故、緘口令が敷かれています。」

「何故、松橋中佐が?」

「実は、技研で開発中の新型魁音兵装に関しまして、件の旗本、

本橋一成様にご協力をいただいておりました。」

「詳しく申しますと、兵装の実施の為、選抜した兵士の身の回りの

世話をお任せしていたのです。」

竜井主任がごくり、と喉を鳴らして煎茶を飲み干し、口を開く。

「お偉方でも技研とうちに理解あるお方でして。」

幕閣のうち、武官である本閥の指揮官四名と日の本軍主将は主戦派、

それ以外の文官は和平派で日々均衡を保っている。将軍直属の旗本で

ある本橋は文官ではあったが、本閥、特に技研には協力的であった。

「その本橋が弥者に。」

「詳しくは調査中ですが。」

「弥者帰りの際、犠牲が出まして。本橋さまのご内儀、ご子息が

亡くなられました。」

沈鬱な表情の不知火首脳。

「弥者帰りをした本橋様は、お屋敷に併設された社付近で消息を

断たれたそうです。またその際、七つ星が現れた、と。」

目を閉じていた刑部が顔をあげる。

「技研の新型魁音兵装にその原因があるように思われます。」

作議の間が凍り付いたようであった。

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