八
不知火に随行してきた藩の兵士達が、全滅した村の後処理を行っている。
確認されつつあるが生存者は皆無であった。悪兵衛達も遺体の埋葬に協力し、村はずれに簡易な墓をたてた。
小さな墓標に丸石とどんぐりを供え、悪兵衛は手を合わせている。
灰音が静かにしゃがみこみ、同じく手を合わせた。
顔をあげた悪兵衛は灰音に気づき、瞳に涙が溢れだした。
「章さん」
耐えきれず嗚咽を漏らす。
「幼子の姉弟ですね。」
灰音は厳粛な表情で悪兵衛を見つめる。
悪兵衛は涙を土に落としながら頷いた。
「我々は皆、八百万の子。……幼子は悪兵衛殿のまわりに、います。」
しゃっくりを上げる悪兵衛の肩に手を置き、灰音は見上げた。
「霧が晴れましたね。」
*
縁側に火鉢をおき、悪兵衛は報告書に目を通している。
橘川兄弟の破双の性能を灰音の示した項目に沿って評価したものだ。
「新型魁音兵装」を思いながら破双の能力とそれが結びつく想像が
できなかった。
「偃月に歪みがある。お主の一射でこれはひどい」
「ばかな!最初のお主の射抜きに問題があろ!」
騒ぎながら中庭に入ってくる橘川兄弟。悪兵衛は顔をしかめたが、
やがて笑った。
兄弟は競いながら的当てをはじめ、他の不知火隊士も見物に
集まりつつある。
「あれらは変わりませんな。」
灰音が傍らに座る。盆には湯気の立つ焙じ茶がふたつ。
「奴らはつくづく内偵に向かぬわ。とにかく騒がしい」
悪兵衛の言葉に灰音は微笑している。
「入隊当時、悪兵衛殿の部屋の壁を壊したことがありましたね。」
礼をいって茶をうけとりながら、思い出した悪兵衛はうんざりした表情。
「行部殿に人員替えを頼もうと思っておる。」
悪兵衛の言葉に灰音は笑った。
本閥と弥者の非対称戦争は、時に多大な一般人の死傷者の犠牲を出した。
幕僚は詳細な連絡系統を構築し、全国に隠密を配置した。また本閥四軍もそれぞれ調査員を各地に派遣し、異変あらば、不知火が内偵を行っている。
が、その被害は収まる事なく、未だ弥者の行動原理ですら
人類は解明していなかった。
朝霧 了




