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二人一役の調停者  作者: 襟端俊一
第二章 足を手に入れろ
9/100

「ちょ、タンマ! 頼む、作戦タイムをくれ!」

「グルル?」


 首を傾げ、律儀に待ってくれるガリミムスに感謝しつつ、優太は冴えない頭を必死に回転させる。

 周囲は戦いの熱気に当てられて雪が解け、地肌が剥き出しとなっていた。

 もっとも、雪を解かしているのはガリミムスの尻尾攻撃なのだが。


「ふぅ。阿保で助かったぜ」

「グルル……」

「あ、嘘です! すいません!!」


 器用に首を折り畳んで横になるガリミムス。

 その視線は優太に向けられたまま動く気配がない。


(こいつ、馬鹿なのか頭良いのかどっちなんだよ。というか……やばいぜ。架は蒸籠と黒渦の心配しかしてなかった。つまり俺なら確実に勝てると思ってくれてるんだ)


 とはいえ、試せることは試した。

 クレイモアを使えばできることはまだまだある。

 殺すのだって難しくはない。

 しかしそれは最終手段だ。

 仮に優太以外の全員がガリミムスを使役できていたら、皆の足を引っ張ってしまう。

 きっと架は、優太一人を置いて行くようなことはしないから。


(シュヴェルトグラスだっけか。こんなチマチマした武器で戦うのは性に合わないんだよな)


 使い慣れたクレイモアのように扱ってみたものの、やはり根本的な重量が違うため思い通りにいかない。

『重い物を持とうとしたら意外に軽かった』的な感覚が、シュヴェルトグラスを振るう度に襲ってくる。

 おまけに、ガリミムスの機敏な動きと言ったらない。

 あれは正に、小回りのきくクレイモアを相手にしているようだった。

 加えて隙あらば食事をしようとするのだから怖い。


(かくなる上は……)


 奇襲。

 一太刀入れれば勝ちになるのなら、こっそり近付いてプスッと刺してしまえばいい。

 幸い、作戦タイムが何分かは伝えていないので、いつ終わりにしても文句を言われる筋合いはない。

 恐竜相手だろうと関係ないのだ。


「はぁー。な、なんか疲れちまったぜ。このままじゃ勝ち目もなさそうだし、どうすっかなー」


 わざとらしい態度で恐る恐るガリミムスの背後に近付く優太。

 その間もガリミムスの視線は優太から動かないが、襲ってくる様子は無い。

 タイムの終了を待ってくれている。


 そのとき、ガリミムスが瞳を閉じた。

 少し経って、またすぐに開ける。


(……!)


 ここで優太は気付いた。

 ガリミムスの瞬きが随分とゆっくりなことに。

 そして次に瞳を閉じた瞬間、優太は覚悟を決めて行動に出た。


「タイム終了ぉ――――――!!」


 ガリミムスの尾に向かって、シュヴェルトグラスを振りかぶったままの決死のダイブ。

 全体重を掛けた一撃は、ガリミムスの堅い皮膚を軽々と突き破った。

 白い羽毛に、徐々に赤い模様が浮かび上がってくる。


「……、」

「っしゃあ! 一撃入れたぞ!! 俺の勝ち――って、おーい。もしもーし。刺さりましたよー? ご機嫌如何?」


 自慢の尻尾を傷付けられたというのにガリミムスは無反応だった。

 この異常事態に優太が導き出した解答は二つ。


 一、優太の作戦に敬服するあまり微動だにできない。

 二、こんな負け方納得できない。


「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

「後者ですよねやっぱりぃぃぃ――――!?」


 ガリミムスは怒り狂ったように暴れ始めた。

 尻尾にへばりついている優太を振り落とそうと自らの体をひねり回す。

 対する優太もシュヴェルトグラスを更に深く突き立てて必死に食らいつくが、簡単に離れないと見るやガリミムスは方針を変えてきた。

 今度はジャイアントスイングのように体を回転させ始めたのだ。


「あぁ~~~~~~目が回るぅ~~~~~~~~」


 平衡感覚が失われていくのと一緒に、少しずつ優太を蝕んでいく……吐き気。

 もう駄目だと諦めかけたとき、異変は起きた。


「ぐ、グルゥ~~~~~~?」


 延々と自分の尻尾を追いかけて回り続けていたガリミムスもまた、優太と同じように目を回してしまったのだ。

 優太が力無く雪原に放り出されるのと、目を回したガリミムスが倒れ込んだのはほぼ同時。

 結局この戦いは、ガリミムスの一族が初めて味わう引き分けという結末に終わった。


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