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「で……早速料理とかしてる訳か」
台所に立った架を、後ろから興味深そうに優太が覗き込んでくる。
成る程、これはやりづらい。
蒸籠が台所への侵入を頑なに拒んだのも分かる気がする。
「野菜刻んで盛るだけのサラダって料理って言うんだろうか」
「言うだろ。昨日は卵かけご飯も目玉焼きも料理だったし」
昨日何があったのかは、夕飯を食べているときに一通り話を聞いている。
優太が料理勝負を持ちかけられて敗北するも、照が意外な才能を発揮して復讐権を行使し、見事勝利を掴み取ったことも。
挑戦権を叩きつけてきた若葉風音というアカデミア生が慕っていたお兄さんが、戸沼幸太のことだったことも。
戸沼幸太の死神と戦った架としては複雑だが、直接手を下した依衣はそれ以上に困惑しているはず。
まあ、それについては照がケアしてくれたようで何よりだ。
「なあ架。サラダに生のピーマンはどうかと思うんだ」
「え? 美味しいだろ」
「苦いだろ! 俺は肉がたっぷり詰まってるか、刻んでハンバーグにしてくれないとピーマンは食わないからな」
「それはそれでどうかと思うけど。心配しなくても、優太のサラダにはピーマン入れないって」
軽くネットで調べてみたところ、嫌いな食べ物をどうにかして食べさせようとするレシピが存在するらしい。
何故態々その食材の味を殺してまで食べさせようとするのだろう。
肉の味しかしないならピーマンを食べる意味はない。
特定の栄養がとりたいなら別の食材でとれば良いのだ。
「良かった、安心したぜ。他には何を作るんだ?」
「そうだな。ぬか漬けとか作ってみたい」
「いや、将来の展望じゃなくて今朝の献立の話」
「とりあえず、目玉焼きの話を聞いたから目玉焼き」
「普通そこは避けるべきじゃね?」
優太の言葉は無視して、計画通りに目玉焼きに取り掛かる。
架の目玉焼きはハムを焼いて、その上に卵を落として作る。
前から作っていたものなので手慣れたものだ。
「……ん? お、おい!」
「何だ?」
「目玉焼きの横で焼いてるのピーマンじゃねぇか!! ああっ、ピーマンの汁が目玉焼きと混ざり合っていくぅ~……っ」
「これは俺の分だから。優太のはピーマンと一緒に焼いたりしないよ」
「むぅ……同じフライパンというのが少々気になるが。ぎりぎり許容範囲か」
不思議とイラッとする。
優太のピーマン嫌いは知っているので、こういった反応が返ってくることも承知の上で作っているのに。
料理に口を出されると苛つき、褒められると嬉しい。
弁当を作ってきてくれていた蒸籠は、いつもこんな感情に振り回されていたのだ。
「おい優太。もうできるから大人しく席に着いててくれよ」
「俺もそうしたい所なんだがな。どうにも嫌な予感がするんだよ」
「失礼な……」
文句があるなら食うなと言いたくなる気持ちが分かってしまった。
料理というのは、作って貰えるだけでありがとうと言うべきなのだ。まずは労力や気持ちを労うべきで、味の評価はその後でなければならない。
これが分かっただけでも料理に興味を持って良かった。
「架、この鍋は何だ?」
「朝練終わって帰った後すぐに作っておいた味噌汁。温め直してあるし味は保証する」
「おお……やっと安心して食べられそうな料理が。それで、何の味噌汁だ?」
「何の?」
「あるだろ、色々。豆腐とかワカメとかお揚げとか大根とか絹さやとか」
「んー……色々ぶっこんだから分からないな」
「分からない!? 料理作る人間が一番言っちゃいけない台詞だぞそれ!!」
そう言われても、昨日蒸籠が持って来てくれた食材を片っ端から放り込んだので本当に覚えていないのだ。
架がそんな暴挙に出たのは、残った食材がそのまま鍋にも使えそうな程バラエティに富んでいたからである。
「というか、味は保証するって言っただろ。味見もしてるし、大丈夫だよ」
「……いや! やっぱり俺の予感は正しかったみたいだ。この鍋を改めさせて貰うぜ」
架が言うよりも早く優太は鍋の蓋に手を掛ける。
「やっぱりピーマン入って……、え?」
「美味しそうだろ」
「こんなグリーングリーンした味噌汁があってたまるか!!」
鍋を持って中身を見せてくる優太。
架は作った本人なので何度も見ているし、味も確認済みなのに。
「お前今さっき何を入れたのか分からないって言ったよな!? こんだけピーマン入れても分からないって言ったのかお前は!」
「一応、他の材料も入ってるんだよ。ピーマンの量が多いだけで」
「どうしてこんな大惨事になったんだ……っ」
「蒸籠が持って来た食材にピーマンがごっそり入ってたもんだから。早く食べないと悪くなっちゃうし、蒸籠にも悪いだろ。安心しろって、優太にはピーマンよそわないから」
「よそうよそわないの問題じゃない! これもうただのピーマンスープだよ」
「まあまあ。しばらくはピーマンの処理に協力してくれよ」
「俺を巻き込むんじゃねえええええええええええええええええええええ!!」




