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渡橋架が退院した翌日。
完全に修復された清正の井戸を囲む壁の前には、一人の部外者と五人のアカデミア生がいた。きっとパラディースへ帰る渡橋紡を見送るために集まったのだろう。
そんな彼等を、理事長とその秘書は遠くから見つめていた。
「若いというのはステキなことですね」
「理事長は充分若いかと。それより良かったのですか? 渡橋紡を帰してしまって。彼女はパラディースにとって重要な戦力でしょうし、軟禁という形でしばらく止まってもらうのも選択の一つだったのでは」
「そんなことをしたら渡橋君の機嫌を損ねてしまいます。彼等にはもっともっと仲間を増やして貰う必要がある。でないと、『わざわざ巡り合わせた』意味がないですから」
理事長は鼻歌交じりに続ける。
「それに、渡橋紡さんをパラディースに帰すことは、私達にとってもステキなメリットがあります」
「と、言いますと?」
「パラディース人と地球人。双方に迷いという名の毒を振りまける。彼女には毒の橋渡しをしてもらうんです。渡橋君も言っていたでしょう? 橋を架けると」
「彼の言う架け橋とは全く意味が違うと思いますが……」
秘書の言葉など全く意に介さない理事長は、引き続き若人達の観察に励むのだった。




