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二人一役の調停者  作者: 襟端俊一
エピローグ それぞれの決着
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 アルマ・アカデミア混合病棟。

 生徒達の健康管理を担っているそこには、大怪我を負った場合に備えて病室もそれなりに用意されている。最近だと、パラディースから帰った怪我人が運び込まれたばかりだ。

 腹に刀が刺さったままだった架も当然ながら入院することになった訳だが。

 入院して五日後。

 驚くべきことに、既に架は立って歩けるほどに回復していた。


 現在、架の病室には架を含めて四人の幟天使ゼーラフがいる。

 彼女達は見舞いに来てくれたわけではない。

 架の呼びかけに応えて集まってくれたのだ。


「もう歩けるなんて、一体どういう体をしているのかしら。いくら幟天使になったとはいえ異常だわ。架先輩の体質か、或いは核となったのがこちら側の人間だからなのか……」

「えっと。今日来て貰ったのはそういう話をするためじゃないんだ」

 一応ベッドの上で大人しくしている架が、申し訳なさそうに依衣の話を遮る。


「紡ちゃんも、ごめんな。わざわざ俺が退院するまで待って貰うことになっちゃって」

「いえ……私が付けた傷ですし。それよりも、その呼び方をどうにかして欲しいです」

「呼ばれたから来たけど、私がいる必要あるわけ?」


 不満げに文句を漏らしたのは照だ。

 彼女は幟天使でありながら未だその力を開花させていない。

 だからなのか架達に劣等感を抱いている。

 早く力に目覚めたいとやたら焦っているのは、照の死神トートとした約束が関係しているようだ。


「照は直接関係がある訳じゃないけど、それでも聞いておくべきだと思う。この面子を見れば、俺が何を話そうとしてるのか何となく分かるだろ?」

「リスクのことでしょ。でも私はまだ何もできないし、リスクも何もないわよ」

「俺が確かめたかったのは紡ちゃんの視力のことなんだ。失明覚悟で羨望術ゼーンズフトを使ったんだから、相当見えなくなってるんだよね」

「……はい」

「? それなら、この子だけ呼べば済む話じゃない」


 話の流れに付いてきていない照に対して補足の説明をする。

「パラディースと地球じゃ、失明するまでの認識が違うと思ったんだよ。何せパラディースには眼鏡もなければコンタクトレンズもない。当然、レーシックなんて技術もないんだから」


 実際、依衣は失った聴覚を補聴器で補うことで普通に日常生活を送れている。

 使い続ければいつか失ってしまうことに変わりはないが、視力に関しては少し話が変わってくる。ぼやけた視界のままでいると、羨望術を使わずとも視力は下がってしまう。

 しかし、度が合った眼鏡をかけるだけでその心配はほぼなくなる。

 勿論、暗い場所で本を読んだりすれば分からないが、ゲームやパソコンがないというのは大きな要素だ。


「あの、れーしっくって何ですか?」

「目の表面の角膜にレーザーを照射して、角膜の曲率を変えることで視力を矯正する手術のことよ。こっちじゃ視力が低下するのは珍しくないからね。色んな技術が確立されてるってわけ」

 紡はいまいちピンと来ていないのか、目一杯に首を傾げた。


「二人には、紡ちゃんに眼鏡を選んでやって欲しいんだ。急だけど、今から駅前のゾフガーデンで。料金はこっちで払うことになってるから、後は視力を調べてデザインを選ぶだけ」

「そういうことなら蒸籠も一緒の方が良いわね」

「……私はパスさせてもらうわ。この前散々二人に引っ張り回されたから」

「あの程度で音を上げてちゃ女子高生はやっていけないわよ?」

「尖堂先輩。生憎だけど、トロウショッピングはお断り」

「乙女のウィンドウショッピングを徒労っつったわねあんた!?」


 二人のやりとりを若干引き気味に見ていた紡が、救いを求めるような顔で架を見る。


「照に付いていけば良いよ。……病院ではお静かにお願いしまーす……」


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