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二人一役の調停者  作者: 襟端俊一
第五章 左手
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「どうなるんだろうなぁ俺達……。いや、そりゃ殺されるのは分かってるぜ? 俺が言ってるのは殺され方の話だ。どうせ楽に死なせるような配慮はされてないんだ。要は殺せば良いんだから、殺し方は趣味嗜好によって様々。一突きで終わらせてくれる奴もいれば、指を一本一本切り落として死ぬまでの過程を楽しむような……!? ひィィ――――――!!」

「うるさいわよ!!」

「もぉ~……想像しちゃったよ」


 三人が連れてこられたのはブダ地下迷宮の牢獄エリアだった。

 所々に置かれている松明が怪しく暗闇を照らしていて、恐怖と不安を一層煽ってくる恐ろしい場所だ。


「架と黒渦は大丈夫かね」

「二人共、あんたよりよっぽど頼りになるから平気よ」


 と言いつつも、照は平常心ではいられなかった。

 都市内部の螺旋階段を下りる途中、何故か架だけ別の場所に連れて行かれたのだ。

 依衣に至っては幟天使ゼーラフであることが知られているのか、照達三人を別々の檻の中に閉じ込めた後に兵士総出で更に奥へと連行されてしまった。

 お陰で近くに見張りは居ないのだが、持っていた荷物は全て没収されてどうすることもできない。

 しかも優太と蒸籠は声が聞こえるだけで、照の位置から見える場所にいない。

 ここに来るまでに他国のアカデミア生を探したが、こちらも近くにはいないようだった。


(パラディースの牢獄ならって高を括ってたけど……甘かったか)


 先程全力で蹴りを入れてみたが、植物でできた格子の壁はビクともしない。

 入ったときはゴムのように伸び縮みしていたのに、今は鉄格子となんら変わりない頑丈さだ。

 優太も暴れていたみたいだが、悲壮感たっぷりの独り言を聞けば徒労に終わったのが分かる。


「蒸籠、そっちは出られそう?」

「ううん、ビクともしないよ。日の光は届かないはずなのにね」

「これも品種改良された植物ってことでしょ、どうせ」


 優太が力任せに出ようとして駄目なのだから、蒸籠が出られないのは必然だ。

 そんな分かりきったことを聞いたのは声を聞きたかったからである。


(どうしたもんかな。また架と依衣任せってのもあれよね)


 照はほとんど見ていないが、依衣は羨望術ゼーンズフトという特別な力を行使できるのだという。

 その力に頼るのが現状では最善かもしれない。

 架については、無条件で信頼できる唯一の存在だ。


(見張りの一人でも来てくれれば……ん?)


 松明が作り出す淡い光の中に、黒い影が映った。

 その影は少しずつ近付いてきて、松明に近付くにつれて角度を変えていく。

 やがて植物の格子の前に、その影の主は現れた。


「あ、あんた……!!」

「ん? なんだ、どうした!? 照!?」

「照ちゃん、どうかしたの? ねぇ!?」

「……、!」


 影の持ち主が、手に持ったランタンを植物の格子に近づける。

 すると強固だった植物の格子はあっという間に無力化し、人が通れるようになった。

 堂々と檻の中に入ってくる影の持ち主。

 手に持っていた物を照の足下に投げ捨てて、こちらを一瞥した。

 捨てられたのはレイピアとマンゴーシュ。

 来る途中で没収された、照の武器だ。


「そう……そういうことなのね」

「えぇ。そういうことよ」


 影の持ち主は知った顔だった。

 全く同じ顔で。

 全く同じ声の。


 尖堂照の――死神トート


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