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コウの物語  作者: パルス


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50/67

第51話「勝利の朝」



 熊が崩れ落ちた。


 地面が揺れる。


 巨大だった。


 さっきまで暴れていた化け物が、

 今は動かない。


 誰も、

 すぐには動けなかった。


 荒い息だけが響く。


 穴周囲。


 皆、

 武器を持ったまま固まっている。


 松明の火が揺れる。


 東の空が、

 少しずつ白み始めていた。


 その中。


 ロイドが小さく呟く。


「……勝った」


 一瞬。


 静かだった。


 だが。


 次の瞬間。


「うおおおおおお!!」


 怒号だった。


 一気に空気が爆発する。


「やったぞ!!」


「死んでねぇ!!」


「勝った!!

 マジで勝った!!」


 武器を振り上げる。


 地面を叩く。


 抱き合う。


 座り込む。


 泣き出す者まで居た。


 ガルドも大声で笑う。


「クソッ!!

 生きてやがったぁ!!」


 エミルも肩で息をしながら笑っていた。


「マジかよ……

 本当に倒したのかよ……」


 ノイルは完全に腰が抜けていた。


「足……

 震えてるんですけど……」


 周囲も笑う。


 だが。


 その中。


 少し涙声で叫ぶ男も居た。


「見てるかバル!!

 仇取ったぞ!!」


 一瞬。


 空気が揺れる。


 別の男も叫ぶ。


「もう大丈夫だ!!

 終わったぞ!!」


「北の奴らの分まで食え!!

 今日は食え!!」


「おおおお!!」


 歓声がまた上がる。


 シノも興奮して吠える。


「ワフ!!

 ワフ!!」


 リリアも、

 ようやく大きく息を吐いた。


「……終わった……」


 コウも、

 そこで初めて力を抜く。


 全身が重かった。


 腕も痛い。


 足も震えている。


 今さらになって、

 身体が限界を訴え始めていた。


 だが。


 まだ終わっていない。


 ロイドがすぐ切り替える。


「おい!!

 解体急ぐぞ!!」


 空気がまた動く。


「腹開くぞ!!」


「血抜きだ!!」


「縄持って来い!!」


 すぐ作業が始まった。


 熊は大きかった。


 近くで見ると、

 さらに異常だった。


「デカ過ぎるだろ……」


「こんなの森に居たのかよ……」


 村人達もざわつく。


 毛皮は厚い。


 爪も長い。


 腕も太い。


 しかも。


 脂が凄かった。


「うおっ……

 脂こんな取れるのか」


「肉もヤベぇぞこれ」


「骨太過ぎるだろ……」


 解体慣れした男達が、

 すぐ指示を飛ばす。


「雑に切るな!!

 売れる部分残せ!!」


 ロイドも怒鳴る。


「毛皮傷付けんなよ!!

 後で値段落ちるぞ!!」


 空気は完全に仕事だった。


 恐怖の化け物。


 だが今は、

 巨大な資源でもある。


 牙。


 爪。


 骨。


 脂。


 毛皮。


 肉。


 全部価値がある。


 解体が進む。


 血の匂い。


 肉の匂い。


 朝の冷たい空気へ混ざっていく。


 騒ぎを聞き付け、

 村人達も集まり始めていた。


 女達。


 老人。


 子供まで来る。


「うわ……」


「本当に熊だ……」


「倒したのかよ……」


 子供達は巨大な死体を見て固まっていた。


 そして。


 村中で火が増え始めた。


「肉こっち持って来い!!」


「鍋空いてるぞ!!」


「もっと焼け!!」


「塩!!

 塩足りねぇ!!」


 一気に料理が始まる。


 焼肉。


 脂焼き。


 鍋。


 骨出汁。


 普段では考えられない量の肉だった。


「こんな量、

 初めて見たぞ……」


「村全員でも食い切れねぇだろこれ」


 肉の匂いが村中へ広がる。


 煙も増える。


 火だらけだった。


 皆、

 疲れている。


 それでも笑っていた。


 生き残った。


 その実感が、

 村全体へ広がっていた。


 その頃には、

 コウも限界だった。


 ロイドがそれを見る。


「おい」


「……ん?」


「お前、

 もう寝ろ」


 コウも苦笑する。


「多分今すぐ寝れる」


「寝ろ。

 後はこっちでやる」


 リリアもかなり疲れていた。


 シノまで眠そうだった。


 そのまま。


 コウ達は、

 グレン工房横の離れへ戻る。


 簡易ベッドへ倒れ込む。


 そして。


 すぐ意識が落ちた。


 次に目を開けた時。


 かなり明るかった。


「……ん」


 昼前。


 外はまだ騒がしい。


 肉の匂いまで漂ってくる。


 コウが起き上がる。


 リリアも目を擦る。


「……かなり寝ましたね」


「ああ……」


 シノも伸びをしていた。


 そのまま外へ出る。


 村の空気は、

 昨日までと全然違った。


 明るい。


 疲れてはいる。


 だが、

 皆笑っていた。


 広場側には、

 解体途中の熊素材が並んでいる。


 巨大毛皮。


 骨。


 牙。


 脂。


 肉塊。


 かなりの量だった。


「おう!!

 やっと起きたか!!」


 ロイドだった。


 既に肉を焼いている。


 エミルも居る。


 ガルドも居た。


 ノイルは鍋側だった。


「勝利祝いだ!!

 食え!!」


 そのまま串肉を渡される。


 かなり大きい。


 コウも受け取る。


 リリアも受け取った。


 一口。


「……うまっ」


 思わず出た。


 脂が強い。


 だが臭くない。


 肉の旨味も濃い。


 焼いた脂の香りもかなり良かった。


 リリアも驚く。


「熊って、

 こんな美味しいんですね……」


「だろ?」


 ガルドが笑う。


「高ぇ理由分かったか」


 ノイルも鍋を持ってくる。


「こっちは骨出汁です!!」


 これも美味かった。


 かなり濃い。


 身体へ染みる。


 シノまで肉を貰って、

 かなり機嫌が良い。


「ワフ……♪」


 その様子に、

 周囲も笑う。


「この犬、

 一番最初に気付いたんだろ?」


「居なかったら終わってたかもな」


 シノはさらに尻尾を振った。


 しばらく。


 皆で肉を食べる。


 かなり平和な時間だった。


 その時。


「まぁでも、

 最後止めたのエミルだろ」


 誰かが笑いながら言った。


 周囲も頷く。


 エミル本人は、

 まだ実感無さそうだった。


「いや……

 あれ偶然だからな?」


「暴れた所に刺さっただけだぞ?」


 だが。


「それでも止め刺しは止め刺しだ」


 ロイドが笑う。


「今日から熊殺しだな」


「やめろって……」


 周囲も笑う。


 かなり空気が柔らかかった。


 その後。


 ロイドが、

 ふっとコウを見る。


「……今回の殊勲はお前だな」


 周囲も静かになる。


 コウは少し眉を動かした。


「落とし穴。

 唐辛子。

 距離戦」


 ロイドが続ける。


「お前の案無かったら、

 多分死人もっと出てた」


 エミルも頷く。


「正面から行ってたら終わってた」


 ガルドも腕を組む。


「マジで熊相手に近付きたくなかったからな……」


 ノイルも頷き続けていた。


 周囲の村人達も、

 誰も否定しない。


 コウは少し苦笑する。


「運が良かっただけだ」


 すると。


 ロイドが笑った。


「その運を作ったのお前だろ」


 周囲も笑う。


 空気はかなり柔らかかった。


 その後。


 熊肉の残量を見る。


 どう見ても多い。


「……これ、

 食い切れんな」


「無理だな」


 ロイドも笑う。


「残りは町で売る」


 毛皮。


 爪。


 牙。


 脂。


 骨。


 全部含めれば、

 かなりの値になる可能性がある。


 ロイドがそこで続けた。


「売り分は村管理だ」


 周囲も頷く。


 共同討伐。


 村総出。


 だから基本は村側管理だった。


 だが。


「その代わり、

 お前の功労分は別で出す」


 ロイドが真っ直ぐ言う。


 周囲も異論は無い。


 コウは少し考えた後、

 肩を竦めた。


「別に村で回してもいいぞ」


 一瞬。


 周囲が静かになる。


 だが。


 ロイドはすぐ笑った。


「そういう訳にもいかねぇよ」


 ガルドも笑う。


「働いた奴がちゃんと得するから、

 次も皆動くんだ」


「まぁ、

 その辺は町で見てもらう」


「ああ」


 コウも頷く。


 その時。


 ふと、

 森側を見る。


 東。


 あの方向。


 まだ拠点は見ていない。


 池。


 生簀。


 乾燥場。


 どうなっているか分からない。


 コウが小さく呟く。


「……拠点、

 どうなってるかな」


 リリアも同じ方向を見る。


 村は勝った。


 だが。


 まだ、

 終わってはいなかった。


PL(第51話終了時)


通常収支


項目増減

開始236ルク

変動なし±0

終了236ルク


⸻


食料変動


普通干し肉A


開始8


変動なし


残8


⸻


普通干し肉B


開始5


変動なし


残5


⸻


普通干し肉加工中A


開始5


変動なし

※先行乾燥分・未回収


残5


⸻


普通干し肉加工中B


開始30


変動なし

※後発乾燥分・未回収


残30


⸻


塩干し肉


開始10


変動なし


残10


⸻


塩漬け魚A


開始2


変動なし


残2


⸻


塩漬け魚B


開始6


変動なし


残6


⸻


熊肉


開始0


* 熊解体+確保

* 村共同消費

* 一部町売却予定確保


※量が多過ぎるため個数管理保留


⸻


粉類変動


山椒粉


開始57


変動なし


残57


⸻


唐辛子粉


開始25


変動なし


残25


⸻


セルハ粉


開始57


変動なし


残57


⸻


粉塩


開始45


変動なし


残45


⸻


素材変動


乾燥薬草


開始41


変動なし


残41


⸻


生山椒


開始5


変動なし


残5


⸻


乾燥山椒


開始50


変動なし


残50


⸻


山椒(乾燥中)


開始30


変動なし


残30


⸻


乾燥唐辛子


開始25


変動なし


残25


⸻


セルハ草(乾燥中)


開始10


変動なし


残10


⸻


薬草(乾燥中)


開始10


変動なし


残10


⸻


BL(第51話終了時)


魚関連


* 魚罠 稼働中×4

* 魚罠 交換用×4(リアカー積載)

※状況未確認


⸻


簡易生簀


* 熊襲撃により大破

* 魚消失

* 修復未着手


⸻


食料


完成品


* 普通干し肉A×8

* 普通干し肉B×5

* 塩干し肉×10

* 塩漬け魚A×2

* 塩漬け魚B×6


⸻


加工中


* 普通干し肉加工中A×5

※先行乾燥分・未回収

* 普通干し肉加工中B×30

※後発乾燥分・未回収


⸻


熊関連


* 大型熊(討伐済み)×1

* 熊肉(大量・村共同消費中)

* 熊素材(町売却予定)


⸻


熊素材


* 熊毛皮

* 熊牙

* 熊爪

* 熊脂

* 熊骨

* 熊胆(状態確認中)


※正式査定は町予定


⸻


素材・薬品


リアカー積載


* 乾燥薬草×41

* 生山椒×5

* 乾燥山椒×50


⸻


乾燥中


* 山椒(乾燥中)×30

* 薬草(乾燥中)×10

* セルハ草(乾燥中)×10


⸻


粉類(小壺)


* 山椒粉×57(小壺)

* 唐辛子粉×25(小壺)

* セルハ粉×57(小壺)

* 粉塩×45(小壺)


⸻


リアカー積載


木箱


* 木箱(大)×2

* 木箱(小)×2


⸻


武器・工具


* 剣×1

* 槍×1

* 片手斧×1

* ナタ×1

* ツルハシ×1

* ショベル×1


⸻


調理器具


* 小鍋×2

* 中鍋×1

* 鉄板×1

* 古鍋×1


⸻


その他


* 購入網×1

* 竹網×2

* 紐

* 縄

* ロープ

* 壺類

* 陶器類

* 水袋

* カバン類


⸻


拠点状況


* 池周辺荒廃

* 熊侵入跡

* 生簀破損

* 常設設備状況未確認

* 拠点未帰還


⸻


村側状況


* 熊討伐完了

* 熊解体進行

* 村全体で熊料理消費

* 熊素材町売却予定

* グレン工房離れへ避難継続中

* 警戒態勢継続中


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