第33話「変な文化」
夜のリース村。
リアカーがゆっくり村へ入ってくる。
村灯り。
夕飯の匂い。
遠くから聞こえる話し声。
フェルド帰りの空気とは、
まるで違っていた。
ルナも少し疲れているのか、
鼻を鳴らしながらゆっくり歩いている。
「……帰ってきましたね」
リリアが小さく息を吐く。
「ああ」
コウも肩を回した。
今日は本当に長かった。
木材輸送。
販売。
後掛け。
加工中販売。
買い出し。
積み直し。
気付けば、
ほとんど休んでいない。
リアカーはそのまま、
グレン工房へ向かう。
工房側はまだ明るかった。
木を削る音。
金属音。
夜でもまだ何人か動いている。
工房前では、
既にロイド達が待っていた。
「お、帰ってきたか」
「かなり遅かったな」
エミルもすぐリアカーを見る。
そして。
吊るせる君を見る。
「増えてる!」
「まずそこかよ」
ロイドが呆れた顔になる。
コウは苦笑した。
「まあ、
色々あった」
木材依頼人も少し緊張した顔で近付いてくる。
「……どうだった?」
「ああ。
問題なく売れた」
コウは頷いた。
「真っ直ぐな木は普通に評判良かった。
あと、
今回くらいの長さなら丁度いいらしい」
「長過ぎると逆に加工面倒だってよ」
ノイルも補足する。
木材依頼人はかなり安心した顔になった。
「じゃあ……」
「予定通り30だ」
コウはルク袋を取り出す。
「手数料6は先にもらってるから、
返すのは30全部な」
依頼人は少し驚いた後、
嬉しそうに受け取った。
「本当に売れたんだな……」
「町まで運んでもらえるだけでもありがてぇ」
ロイドも頷く。
「今回はかなり上手く行ったな」
その横で。
ガルドが腕を組みながら待っていた。
「で、小麦は?」
「問題無し。
20で買えた」
コウは小袋を渡す。
「残り6」
「お、ちゃんと残ってるな」
ガルドは中を確認しながら頷く。
「変な店行かなかったみてぇだな」
「ああ。
前の店使った」
「なら安心だ」
ガルドは笑った。
その時だった。
「だから、
柔らかい方が売れたんですよ!」
ノイルが興奮気味に説明し始める。
その横で、
エミルはもう別方向へ暴走していた。
「加工中でも売れるんだろ!?」
「しかも掛け掛け掛けまで!?」
「絶対もっと売れるじゃねぇか!」
目が完全に輝いている。
ロイドが頭を押さえた。
「……お前は本当に商売絡むと怖ぇな」
ノイルもまだ興奮していた。
「いや、
本当に売れてたんですよ!」
「後掛けした瞬間、
匂いでまた客来るんです!」
「しかも柔らかい方が人気で――」
「増やすしかねぇじゃん!」
エミルが食い気味に入る。
「次4組だろ!?」
「いや6組か!?」
「お前は増やす前提で話すな!」
ロイドが即ツッコむ。
その騒ぎを横目に。
コウはもうリアカー側へ向かっていた。
「ルナ外すか」
「はい」
リリアもすぐ付いてくる。
固定縄。
接続具。
荷重固定。
順番にゆっくり外していく。
ルナも疲れていたのか、
大人しくしていた。
首周り確認。
擦れ。
金具跡。
異常なし。
「大丈夫そうですね」
「ああ」
今日はかなり長距離だった。
だが、
ルナは思った以上によく耐えていた。
固定を外し終える。
ルナが軽く首を振った。
少し楽になったらしい。
コウは水桶を置く。
そこへ、
グレン工房側の飼葉を入れていく。
ルナはすぐ鼻を寄せた。
かなり腹が減っていたらしい。
「今日はかなり引かせたからな」
コウは苦笑した。
そのまま、
腰から蹄掃除具を取り出す。
グレンが少しだけ見る。
「使ってんのか」
「ああ」
コウはルナの脚を軽く持ち上げる。
土。
小石。
蹄裏へ少し詰まっていた。
蹄掃除具で軽く掻き出していく。
ルナも暴れない。
かなり慣れてきていた。
リリアも少し感心した顔になる。
「大人しいですね」
「ちゃんと見てもらってる馬は違う」
グレンが言う。
コウはもう片方も確認する。
石。
泥。
軽く掃除。
今日は街道をかなり歩いた。
こういう確認は必要だった。
その途中。
「……あ」
コウが止まる。
グレンが見る。
「何だ」
「鼻掛け袋、
買うの忘れた」
今日、
本当はフェルドで買う予定だった。
移動中でも食わせやすい。
今後かなり便利になる。
だが。
完全に忘れていた。
グレンは呆れた顔をする。
「また次行く時買ってこい」
「……だな」
コウは苦笑した。
その横。
風で、
吊るせる君が少し揺れる。
グレンもそちらを見る。
「結局、
かなり使ったみてぇだな」
「ああ」
コウも振り返る。
「思ったより便利だった」
「ただ吊ってるだけだろ」
「客寄せにもなった」
グレンが少し止まる。
「……客寄せ?」
「あれ見て寄ってくる」
コウは肩を回す。
「乾燥。
宣伝。
販売。
全部一緒に出来た」
グレンは少しだけ吊るせる君を見る。
縄。
柱。
揺れる肉。
かなり妙な見た目だった。
「……変な荷車になったな」
「否定はしない」
コウも苦笑する。
そのまま少し止まり。
コウは吊るせる君を見る。
「……これ、
いくらなら譲ってくれる?」
グレンが止まる。
「は?」
「かなり使えた」
「そんなもん、
端材だぞ」
グレンは呆れた顔になる。
「好きに使え」
コウが少し驚く。
「いいのか?」
「工房側も別に困らん」
グレンは鼻を鳴らした。
「どうせ柱と縄だ」
「……じゃあ使わせてもらう」
「ああ」
風が吹く。
吊るせる君が、
夜の工房前で小さく揺れた。
その少し後ろでは、
まだノイルとエミルが盛り上がっていた。
「だから、
柔らかい方が売れたんですよ!」
「加工中だろ!?
加工中売れたのか!?」
「加工中ですよね!?
加工中でも売れたんですか!?」
「しかも掛け掛け掛けまで――」
「掛け掛け掛け!?」
エミルの目が、
完全に輝いていた。
ロイドは頭を押さえている。
「……訳が分からん」
「俺も途中から分からなくなりました」
ノイルはかなり楽しそうだった。
「いや、
本当に売れてたんですよ!」
「お前まで変な方向行くな……」
ロイドは深くため息を吐く。
その空気を見ながら。
コウは少し苦笑する。
今日1日だけで。
木材輸送。
フェルド販売。
掛け掛け。
加工中販売。
色々起き過ぎた。
だが。
確かに少しずつ、
形になり始めている。
「……じゃあ、
そろそろ戻るわ」
コウが言う。
リリアも頷いた。
「今日は流石に疲れました」
「ああ。
かなり動いたからな」
ロイドも頷く。
「今日は本当に助かった」
木材依頼人も頭を下げる。
「町まで運んでもらえるだけでもありがてぇ」
ガルドも笑う。
「小麦も問題無かったしな」
今日の試験輸送は、
かなり成功だった。
コウはリアカーへ手を掛ける。
夜風が吹く。
吊るせる君が、
小さく揺れた。
そのまま。
コウたちは、
森拠点へ向かって歩き始めた。
夜の森道。
昼とは違い、
かなり静かだった。
聞こえるのは、
車輪の音。
ルナの鼻息。
風の音。
それだけ。
リリアも少し眠そうだった。
「……静かですね」
「ああ」
村側の騒がしさが、
嘘みたいだった。
コウも少し息を吐く。
リアカーの後ろでは、
吊るせる君が小さく揺れている。
加工中肉も、
夜風を受けて揺れていた。
やがて。
森拠点の灯りが見えてくる。
「……帰ってきましたね」
「ああ」
まずは荷下ろしだった。
塩袋。
壺。
縄。
すり鉢。
順番に拠点へ運び込んでいく。
リリアは壺を並べ始めた。
「塩、
かなり増えましたね」
「ああ。
これでしばらくは持つ」
コウは頷く。
吊るされた肉を見る。
夜風で、
加工中肉が小さく揺れていた。
「まだ少し残ってますね」
「ああ」
リリアは焚火を準備し始める。
火打石。
枯葉。
小枝。
少しずつ火が広がっていく。
コウは残っていた加工中肉を取り出した。
「今日はこれ食うか」
「掛けますか?」
「せっかくだし試す」
火へ鉄板を置く。
軽く焼く。
山椒の香りが、
ゆっくり広がった。
リリア側は、
山椒掛け。
コウ側は、
唐辛子掛け。
それぞれ少し振る。
ジュ、と音が鳴る。
リリアが先に食べる。
少し噛む。
「……やっぱり山椒の方が好きです」
「唐辛子まだ苦手か?」
「ちょっと辛いです」
コウも食べる。
唐辛子側。
辛い。
だが、
かなり香りが強い。
「……悪くないな」
火が揺れる。
夜風が吹く。
吊るされた肉も、
静かに揺れていた。
コウは火を見ながら、
小さく息を吐いた。
「……次は、
もう少し試してみるか」
夜風が吹く。
吊るされた肉が、
小さく揺れる。
山椒の香りが、
静かな森へゆっくり流れていった。
PL(収支表)
通常収支
項目増減
開始77ルク
終了77ルク
依頼管理収支
小麦購入依頼
項目状況
購入額20ルク
手数料4ルク(受取済)
返却金6ルク返却完了
木材売却依頼
項目状況
木材20本売却完了
売却額30ルク返却完了
手数料6ルク(受取済)
食料・素材変動
項目増減
山椒干し肉(加工中)-2(夕食使用)
山椒粉-1(夕食使用)
唐辛子粉-1(夕食使用)
運用・状況
内容状況
木材輸送試験成功
フェルド販売成功
加工中販売有効確認
吊るせる君客寄せ効果継続確認
リアカー安定性良好
蹄掃除運用実施
鼻掛け袋購入忘れ発覚
BL(資産表)
武器
主人公携帯
* 鉄ナイフ×1
* 剣×1
* 木槍×1
リリア携帯(外出時)
* 鉄ナイフ×1
森拠点保管
* ナタ×1
* 斧×1
衣類・装備
主人公携帯
* 革靴×1
* 革手袋×1
* 背負いカバン×1
* 肩掛けカバン×1
* 水筒×1
* ルク袋×1
主人公管理袋類(携帯中)
* 薬草袋×1
* 山椒袋×1
* 唐辛子袋×1
* 予備袋×1
リリア用(必要時持ち出し)
* 葉用カバン×1
* 採取袋×1
* 水筒×1
* 革靴×1
馬用品・運搬
現在使用中
* リアカー×1
* ルナ×1
吊るし構成
* 吊るせる君×2組
* 柱×4
* 縄×2
追加資材
* 縄×4(増設用)
馬用品(リアカー常備)
* ロープ×1
* 縄×3
* 水袋(小)×2
* 水桶(大)×2
* ブラシ×1
* 蹄掃除具×1
* 飼葉枡×1
* 飼葉袋(4食分借用中)
森拠点保管
* 一輪車×1
* ロープ×2
* 紐×3(罠用)
食料
完成品
* 山椒干し肉×0
* 塩干し肉×1
* 固形パン×1
加工中
* 山椒干し肉(加工中)×9
簡易生簀
* 魚×10
素材・薬品
携帯中
* 薬草×37
* 山椒×10
* 唐辛子×5
* クルム葉 多数
粉類
* 山椒粉×15
* 唐辛子粉×19
塩保管
* 塩壺A×1(塩7)
* 塩壺B×1
* 中壺×1
* 塩袋(大量保管)
小壺類
* 山椒壺×1
* 唐辛子壺×1
* 小壺×1
すり鉢
* 山椒用×1
* 唐辛子用×1
* 小型すり鉢×2
容器・収納
リアカー積載
* 木箱(大)×1
* 木箱(小)×1
森拠点保管
* 木箱(大)×1
* 木箱(小)×1
布・寝具
リアカー常備
* 普通の布×1
森拠点保管
* 厚手の布×2
* 干し草×2
* 簡易ベッド×2
* 棚×1
* 鉄板×1
* 中鍋×1
* 古い大鍋×1
* 小鍋×2
* ショベル×1
* ツルハシ×1
* 竹食器2人分
設置・稼働
* 動物罠×3(設置中)
* 簡易生簀×1(稼働中)
* 魚罠×2(引き上げ中)
通貨
* 77ルク
同行・管理対象
* リリア×1
* ルナ×1




