第32話「帰り道」
フェルド南門。
夕方。
リアカーがゆっくり門を抜ける。
積まれているのは、
小麦。
塩。
壺。
すり鉢。
縄。
帰り荷はかなり増えていた。
だが。
木材20本が消えた分、
荷台はむしろ安定している。
リアカーの揺れも少ない。
ルナも歩きやすそうだった。
門衛がこちらを見る。
「かなり減ってるな」
「ああ。結構売れた」
コウは肩を回した。
まだ少し腕が熱い。
削り過ぎた。
門衛は吊るされた干し肉を見る。
「掛け掛けって何だ?」
コウが止まる。
「……もうそこまで行ってるのか」
ノイルが吹き出した。
「広まるの早いですね」
「早過ぎるだろ……」
門衛は笑う。
「南通りで変な盛り上がり方してたぞ」
「やめてくれ」
コウは苦笑した。
そのままリアカーが進み始める。
フェルドの喧騒が、
少しずつ後ろへ遠ざかっていく。
鍛冶音。
人の声。
荷車。
獣の鳴き声。
全部が少しずつ薄くなる。
代わりに。
街道の風音が戻ってきた。
夕方の空気は少し冷えている。
ルナも鼻を鳴らした。
リリアが肩を回す。
「……かなり疲れました」
「ああ」
コウも頷く。
今日はかなり動いた。
木材運搬。
販売。
後掛け。
粉削り。
買い出し。
積み直し。
気付けば、
ほとんど休んでいない。
だが。
売上自体はかなり良かった。
ノイルが荷台を見る。
「塩、本当に大量ですね」
「かなり減るからな」
コウは少し考える。
「……最初から全部包む必要はないな」
リリアが首を傾げた。
「包まないんですか?」
「食う時だけ包めば済む」
リリアが少し考える。
「……使う葉っぱ、
かなり減りますね」
「ああ」
今までは、
最初から全部包んでいた。
だが。
その場食い用なら、
注文後だけ包めば済む。
葉の消費がかなり減る。
ノイルが感心した顔になる。
「売り方まで変わってきましたね」
「俺もそんな気がしてきた」
コウは苦笑した。
しばらく進む。
夕方の街道は静かだった。
行きより人も少ない。
風の音。
車輪の音。
縄の擦れる音。
吊るされた干し肉が、
小さく揺れている。
やがて。
コウが前を見る。
「少し休むか」
街道脇。
少し開けた場所。
ルナを止める。
ノイルがすぐ水袋を下ろした。
ルナも疲れていたのか、
すぐに鼻を寄せて水を飲み始める。
行きで空になっていた水桶へ、
ノイルが飼葉を入れる。
ルナはそのまま、
水桶へ鼻先を突っ込んだ。
「かなり腹減ってたみたいですね」
「あれだけ引けばな」
コウは苦笑した。
木材運搬。
フェルド往復。
今日はかなり長く歩いている。
ルナも流石に疲れていた。
コウはその場へ腰を下ろす。
「……疲れた」
リリアが少し笑った。
「今日は本当にずっと動いてましたからね」
「ああ」
木材運搬。
販売。
後掛け。
粉削り。
買い出し。
積み直し。
ほとんど休んでいない。
ノイルもその場へ座る。
「でも、
かなり売れましたね」
「売れ過ぎたくらいだ」
コウは肩を回す。
右腕が少し重い。
肩掛けカバンを開く。
中から。
山椒。
小型すり鉢。
取り出す。
ノイルが呆れた顔になった。
「まだ削るんですか?」
「山椒粉の減り方がおかしい」
コウは山椒をすり鉢へ入れる。
そして。
ゴリ。
ゴリ。
乾いた音が、
夕方の街道へ響き始めた。
山椒の香りが、
風へゆっくり流れていく。
リリアが苦笑する。
「完全に粉屋ですね」
「俺もそんな気がしてきた」
コウは削りながら答える。
その時だった。
街道側から、
人の声が近付いてくる。
「……あれだ」
「吊ってるやつ」
コウが顔を上げる。
街道を歩いていた男2人が、
こちらへ近付いてきていた。
片方の男が指を差す。
「あ、掛け掛けの」
コウが止まる。
「……もうその呼び方定着してるのか」
ノイルが吹き出した。
「広がるの早いですね」
男達は笑いながら近付いてくる。
「南通りで見たんだよ」
「気になってたんだが、
人多くてな」
もう1人の男の視線が止まる。
加工中の山椒干し肉。
まだ柔らかい肉が、
風の中で揺れていた。
「あれは?」
コウもそちらを見る。
「まだ加工中だ」
「売らねぇのか?」
「まだ乾き切ってない」
男は少し近付く。
匂いを嗅ぐ。
「……でも旨そうだな」
さらに別の男も頷いた。
「柔らかそうだし」
コウが少し止まる。
確かに。
まだ柔らかい。
保存用としては途中。
だが。
食うだけなら問題はない。
リリアも吊るされた肉を見る。
「どうします?」
「……試してみるか」
コウは苦笑した。
吊るされた加工中肉を外す。
まだ少し柔らかい。
完全な干し肉ほど固くない。
客へ渡す。
男はそのまま一口齧った。
少し止まる。
そして。
「……あ、こっちの方が好きだな」
コウが眉を動かす。
「そっちか?」
「香り強ぇし、
柔らかい」
さらにもう1人も食べる。
「食いやすいな」
「酒に合いそうだ」
「焼いても旨そうだなこれ」
反応がかなり良い。
リリアも少し驚いた顔になる。
「加工中なのに……」
「俺も驚いてる」
さらに男が言う。
「辛く出来るか?」
「出来る」
コウは山椒粉を少し掛ける。
柔らかい肉へ、
粉がかなり絡む。
男が食べる。
「……あ、これいい」
「香り強ぇな」
「こっちの方が好きかもしれん」
さらに別の男。
「唐辛子も掛けられるか?」
「出来るぞ」
ノイルが少し笑う。
「また始まりましたね」
コウは苦笑した。
「俺もそう思う」
コウは唐辛子粉を少し振る。
赤い粉が、
柔らかい肉へ絡んでいく。
男は受け取ると、
そのまま齧った。
少し噛む。
そして笑った。
「……辛ぇ」
「掛けたからな」
「でもいいなこれ」
さらに山椒側の男も頷く。
「乾き切ってるやつより、
香り強い気がする」
「ああ。
まだ油残ってるからかもな」
コウも少し考える。
確かに。
完全に乾いた肉より、
香りが立っている。
リリアが少し不思議そうな顔になる。
「保存用じゃない方が人気なんですね」
「……塩無しの方が、
食うにはいいのかもしれんな」
コウは吊るされた肉を見る。
元々、
塩を減らす方向は少し考えていた。
だが。
それはあくまで、
塩節約の話だった。
だが今は違う。
客側が、
柔らかい方を選んでいる。
ノイルが腕を組む。
「用途が違う感じですね」
「かもな」
コウは頷く。
男達も笑っていた。
「これ完全に酒のつまみだろ」
「街道で売ってるのおかしいぞ」
「また見掛けたら買うわ」
男達が去っていく。
街道は再び静かになった。
ルナも水を飲み終え、
鼻を軽く鳴らした。
コウは立ち上がる。
「……そろそろ行くか」
ノイルが頷く。
「暗くなる前には戻りたいですね」
「ああ」
荷物確認。
壺。
塩袋。
小麦。
縄。
リアカーへ固定していく。
リリアも吊るされた肉を見る。
「……少し減ってますね」
コウも見る。
風の中で、
加工中肉が小さく揺れていた。
リアカーが再び動き始める。
夕方の街道。
空は少しずつ赤くなり始めていた。
行きより静かだった。
荷車も少ない。
人も少ない。
聞こえるのは、
車輪の音。
ルナの足音。
縄の擦れる音。
そして。
吊るされた干し肉が、
小さく揺れる音。
コウは前を見ながら歩く。
右腕が少し重い。
肩も疲れている。
今日は本当に動き続けた。
やがて。
前方に小さな灯りが見え始める。
リース村。
コウが小さく息を吐く。
「……ようやく帰れる」
リリアも少し安心した顔になる。
「長かったですね」
「ああ」
今日はかなり長い1日だった。
木材運搬。
フェルド販売。
掛け掛け。
追加仕入れ。
加工中販売。
色々起き過ぎた。
夕方の風が吹く。
山椒の匂いが、
静かな街道へゆっくり流れていった。
リアカーはゆっくり、
夜のリースへ近付いていく。
第32話 PL
通常収支
項目増減
開始70ルク
加工中山椒干し肉販売+7
終了77ルク
食料・素材変動
項目増減
塩干し肉-2
山椒干し肉(加工中)-2
山椒-5(追加粉化)
山椒粉+10(追加粉化)
山椒粉-2(販売使用)
唐辛子粉-1
クルム葉数枚使用
飼葉-1食分
販売内訳
加工中山椒干し肉
* 山椒掛け×1
* 唐辛子掛け×1
塩干し肉
* 普通×2
運用・発見
内容状況
加工中販売発生
柔らかい肉人気確認
その場食い需要確認
包装簡略化案発生
塩無し干し肉案再浮上
吊るし販売効果継続確認
第32話終了時 BL
武器
主人公携帯
* 鉄ナイフ×1
* 剣×1
* 木槍×1
リリア携帯(外出時)
* 鉄ナイフ×1
森拠点保管
* ナタ×1
* 斧×1
衣類・装備
主人公携帯
* 革靴×1
* 革手袋×1
* 背負いカバン×1
* 肩掛けカバン×1
* 水筒×1
* ルク袋×1
主人公管理袋類(携帯中)
* 薬草袋×1
* 山椒袋×1
* 唐辛子袋×1
* 予備袋×1
リリア用(必要時持ち出し)
* 葉用カバン×1
* 採取袋×1
* 水筒×1
* 革靴×1
馬用品・運搬
現在使用中
* リアカー×1
* ルナ×1
吊るし構成
* 吊るし台×2組(柱4・縄2)
追加資材
* 縄×4(増設用)
馬用品(リアカー常備)
* ロープ×1
* 縄×3
* 水袋(小)×2
* 水桶(大)×2
* ブラシ×1
* 蹄掃除具×1
* 飼葉枡×1
* 飼葉袋(4食分借用中)
森拠点保管
* 一輪車×1
* ロープ×2
* 紐×3(罠用)
食料
完成品
* 山椒干し肉×0
* 塩干し肉×1
* 固形パン×1
加工中
* 山椒干し肉(加工中)×13
簡易生簀
* 魚×10
素材・薬品
携帯中
* 薬草×37
* 山椒×10
* 唐辛子×5
* クルム葉 多数
粉類
* 山椒粉×18
* 唐辛子粉×21
塩保管
* 塩壺A×1(塩7)
* 塩壺B×1
* 中壺×1
* 塩袋(大量保管)
小壺類
* 山椒壺×1
* 唐辛子壺×1
* 小壺×1
すり鉢
* 山椒用×1
* 唐辛子用×1
* 小型すり鉢×2
容器・収納
リアカー積載
* 木箱(大)×1
* 木箱(小)×1
森拠点保管
* 木箱(大)×1
* 木箱(小)×1
布・寝具
リアカー常備
* 普通の布×1
森拠点保管
* 厚手の布×2
* 干し草×2
* 簡易ベッド×2
* 棚×1
* 鉄板×1
* 中鍋×1
* 古い大鍋×1
* 小鍋×2
* ショベル×1
* ツルハシ×1
* 竹食器2人分
設置・稼働
* 動物罠×3(設置中)
* 簡易生簀×1(稼働中)
* 魚罠×2(引き上げ中)
通貨
* 77ルク
同行・管理対象
* リリア×1
* ルナ×1
* ノイル×1(同行中)
依頼管理金
小麦購入依頼
* 返却予定金6ルク
木材売却依頼
* 返却予定24ルク




