第31話「掛け掛け」
男が去っていく。
葉包みから、
山椒の匂いが少し漂っていた。
しばらく静かになる。
そして。
ノイルがぽつりと呟く。
「……本当に売れましたね」
「ああ」
コウも少しだけ笑う。
まだ1個。
まだ街道。
だが。
確かに今、
初めて“売れた”。
リリアも少し驚いた顔をしている。
「街道でも売れるんですね」
「俺もそこは予想外だった」
コウは肩掛けカバンを閉じる。
売れたのはたった1個。
だが。
手応えはかなりあった。
「行くか」
「はい」
ルナが再び歩き始める。
リアカーもゆっくり動き出した。
車輪の音。
木材の擦れる音。
吊るせる君で揺れる加工中の山椒干し肉。
夕方へ近付き始めた街道を、
3人はフェルドへ向かって進んでいく。
やがて。
フェルド南門が見えてきた。
人。
荷車。
商人。
朝よりさらに人が多い。
リアカーが門前へ近付くと、
門衛がこちらを見る。
そして。
吊るせる君を見る。
「……何だそれ」
「俺もそう思う」
コウは苦笑した。
門衛は干し肉を見る。
「売り物か?」
「ああ」
「吊って売るのか?」
「今の所は」
門衛は少し笑った。
「目立つな」
「かなり見られる」
リリアも苦笑する。
フェルドへ入る。
街の熱気が一気に流れ込んできた。
人の声。
鍛冶音。
荷車。
獣臭。
香辛料。
色んな匂いが混ざっている。
コウたちはまず、
南側建築屋へ向かった。
木材20本。
まずはこれを片付ける。
建築屋では、
職人風の男が木材を確認し始めた。
真っ直ぐさ。
節。
太さ。
長さ。
かなり細かく見ている。
しばらく確認した後、
男は頷いた。
「悪くねぇな」
ロープが外され、
木材が順番に降ろされていく。
コウはその様子を見ながら聞いた。
「もっと太い方がいいのか?」
「太い方が加工しやすい時は多い」
「長い方がいい訳じゃない?」
「長過ぎると逆に面倒だ」
男は木材を軽く叩く。
「運びも加工もな」
コウは少し考える。
「今回くらいなら?」
「まだ丁度いい方だ」
かなり参考になった。
村へ戻ったら伝えるつもりだった。
木材確認終了。
買い取り成立。
リアカーが一気に軽くなる。
ノイルも荷台を見て頷いた。
「かなり違いますね」
「ああ。帰りは楽そうだ」
その後。
コウたちは南通りへ向かう。
ガルド指定の穀物屋確認。
小麦価格。
在庫量。
品質。
一通り確認する。
だが、
購入はまだ後回し。
先に販売だった。
コウは人通りを見る。
通行量。
匂いの流れ。
日陰。
少し考えた後、
リアカーを止めた。
「ここにするか」
吊るせる君が風で少し揺れる。
かなり目立っていた。
案の定。
すぐに人が寄ってくる。
「何だその肉」
「吊ってるぞ」
「匂いするな」
コウは順番に説明していく。
山椒干し肉。
塩干し肉。
保存性。
後掛け。
すると。
最初に塩干し肉が売れた。
「塩使ってるなら持つだろ」
完全に保存食目的だった。
さらに。
「もっと辛く出来ねぇのか?」
そこで初めて、
唐辛子後掛けが発生する。
コウは試しに掛けた。
客は少し驚いた顔になる。
「お、いいなこれ」
さらに別客。
「山椒も掛けられるのか?」
今度は山椒後掛け。
リリアが少し驚く。
「掛ける方が人気なんですね」
「俺も驚いてる」
そこから、
流れが変わり始めた。
売れる。
削る。
匂い出る。
また客来る。
かなり忙しい。
唐辛子粉も減っていく。
コウはノイルを見る。
「悪い。唐辛子買ってきてくれ」
「分かりました」
ノイルはすぐ走っていった。
その間も客は来る。
「もっと掛けろ」
「辛くしろ」
「山椒多め」
さらに。
「掛け掛け出来るか?」
コウが止まる。
「……掛け掛け?」
「山椒掛けた後さらに掛けるやつ」
「訳分かんなくなってきたな……」
リリアも苦笑する。
だが。
売れる。
かなり売れる。
ノイルも戻ってきた。
ノイルは小袋を差し出す。
「唐辛子5と縄4本です」
中には丸められた縄が入っていた。
コウは軽く引っ張って確認する。
「……悪くないな」
「工房で使ってるより少し細いですけど、吊るせる君用なら十分かと」
「ああ。増やすなら丁度いいか」
リリアも縄を見る。
「また増えるんですね」
「多分必要になる」
その間にも客は止まらない。
「唐辛子掛け掛け掛けで」
「……本当に食うのか?」
「酒に合いそうだ」
周囲が笑う。
さらに。
「通は山椒掛け掛けだな」
「いや、唐辛子掛けの方が好きだ」
「そのままは初心者だ」
好き勝手言い始める。
その横で、
別の男が呆れた顔をした。
「お前も今日初めて食っただろうが」
一瞬静かになる。
そして周囲が吹き出した。
「確かに」
「もう通ぶってやがる」
「早ぇよ」
完全に変な空気だった。
気付けば。
山椒干し肉は全部売れていた。
リリアが数を確認する。
「山椒干し肉5。
塩干し肉8です」
「かなり売れたな……」
「加工中はまだ残ってます」
「流石にそっちはまだ売らん」
コウは苦笑した。
さらに。
塩干し肉も帰り分を少し残すだけになっている。
片付け途中でも客が来る。
「掛け掛けってどれだ?」
「辛いやつまだあるか?」
名前まで定着し始めていた。
コウは疲れた顔になる。
「……何でこうなった」
その後。
コウたちは南通りの穀物屋へ戻る。
まずはノイルへの精算だった。
「唐辛子幾らだった?」
「5個で2ルクです。縄4本で4ルク」
「合わせて6か」
コウは6ルクを渡す。
その後。
小麦20ルク分購入。
さらに塩60ルク分。
かなりの量だった。
リリアも少し驚いている。
「そんなに買うんですか?」
「今日だけでかなり減ったからな」
さらに。
「唐辛子もう5追加でくれ」
塩袋をまとめていた店主が顔を上げる。
「まだ買うのか?」
「減り方がおかしい」
コウは苦笑した。
店主は少し笑いながら追加分を袋へ入れる。
さらに。
中壺1つ。
小型すり鉢2つ。
追加購入。
「今日だけで削り過ぎた……」
コウは右腕を回した。
ノイルが少し笑う。
「本当に粉屋みたいですね」
「俺もそんな気がしてきた」
買い物を終えた後。
リアカー積み直し。
小麦。
塩。
壺。
すり鉢。
縄。
帰り荷として固定していく。
日はかなり傾いていた。
コウは空を見る。
「そろそろ戻るか」
リアカーがゆっくり動き始める。
フェルド南門。
夕方の風。
門衛がこちらを見る。
「減ってるな」
「ああ。結構売れた」
「掛け掛けって何だ?」
コウが止まる。
「……もうそこまで行ってるのか」
ノイルが吹き出した。
「広まるの早いですね」
コウは苦笑する。
こうして。
初めてのフェルド販売を終えたリアカーは、
夕暮れの街道へ出ていった。
第31話「掛け掛け」終わり
第31話 PL(最終版)
通常収支
項目増減
開始87ルク
山椒干し肉販売+15
塩干し肉販売+28
後掛け料金+5
木材売却手数料+6
小麦購入手数料+4
唐辛子10購入-4
縄4本購入-4
塩購入-60
中壺購入-3
小型すり鉢2購入-4
終了70ルク
依頼管理収支
小麦購入依頼
項目増減
預かり金+30
小麦購入-20
手数料回収-4
返却予定金6ルク
木材売却依頼
項目状況
中木材20本売却完了(依頼品管理)
売却額30ルク
手数料確保6ルク
返却予定24ルク
食料・素材変動
項目増減
山椒干し肉-5(完売)
塩干し肉-8(販売)
唐辛子+10(購入)
唐辛子-5(粉化)
唐辛子粉+9
山椒-3(追加粉化)
山椒粉+6
小麦+20ルク分購入(依頼品管理)
塩+60購入
販売内訳
山椒干し肉
* 普通×1
* 山椒掛け×2
* 唐辛子掛け×1
* 両方掛け×1
塩干し肉
* 普通×5
* 山椒掛け×2
* 唐辛子掛け×1
加工・運用
内容状況
後掛け販売開始
掛け掛け発生
唐辛子追加粉化実施
山椒追加粉化実施
吊るせる君客寄せ効果確認
木材20本売却完了
木材情報太め・加工しやすい長さ需要確認
小麦依頼購入完了
塩大量仕入れ実施
第31話終了時 BL(資産表)
武器
主人公携帯
* 鉄ナイフ×1
* 剣×1
* 木槍×1
リリア携帯(外出時)
* 鉄ナイフ×1
森拠点保管
* ナタ×1
* 斧×1
衣類・装備
主人公携帯
* 革靴×1
* 革手袋×1
* 背負いカバン×1
* 肩掛けカバン×1
* 水筒×1
* ルク袋×1
主人公管理袋類(携帯中)
* 薬草袋×1
* 山椒袋×1
* 唐辛子袋×1
* 予備袋×1
リリア用(必要時持ち出し)
* 葉用カバン×1
* 採取袋×1
* 水筒×1
* 革靴×1
馬用品・運搬
現在使用中
* リアカー×1
* ルナ×1
吊るせる君構成
* 柱×4
* 縄×2
* 吊るせる君×2組
追加資材
* 縄×4(増設用)
馬用品(リアカー常備)
* ロープ×1
* 縄×3
* 水袋(小)×2
* 水桶(大)×2
* ブラシ×1
* 蹄掃除具×1
* 飼葉枡×1
* 飼葉袋(5食分借用中)
森拠点保管
* 一輪車×1
* ロープ×2
* 紐×3(罠用)
食料
完成品
* 山椒干し肉×0
* 塩干し肉×3
* 固形パン×1
加工中
* 山椒干し肉(加工中)×15
簡易生簀
* 魚×10
素材・薬品
携帯中
* 薬草×37
* 山椒×15
* 唐辛子×5
* クルム葉 多数
粉類
* 山椒粉×10
* 唐辛子粉×22
塩保管
* 塩壺A×1(塩7)
* 塩壺B×1
* 中壺×1(新規)
* 塩袋(大量保管)
小壺類
* 山椒壺×1
* 唐辛子壺×1
* 小壺×1
すり鉢
* 山椒用×1
* 唐辛子用×1
* 小型すり鉢×2(新規)
容器・収納
リアカー積載
* 木箱(大)×1
* 木箱(小)×1
森拠点保管
* 木箱(大)×1
* 木箱(小)×1
布・寝具
リアカー常備
* 普通の布×1
森拠点保管
* 厚手の布×2
* 干し草×2
* 簡易ベッド×2
* 棚×1
* 鉄板×1
* 中鍋×1
* 古い大鍋×1
* 小鍋×2
* ショベル×1
* ツルハシ×1
* 竹食器2人分
設置・稼働
* 動物罠×3(設置中)
* 簡易生簀×1(稼働中)
* 魚罠×2(引き上げ中)
通貨
* 70ルク
同行・管理対象
* リリア×1
* ルナ×1
* ノイル×1(同行中)
依頼管理金
小麦購入依頼
* 返却予定金6ルク
木材売却依頼
* 返却予定24ルク




