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コウの物語  作者: パルス


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28/29

第29話「森へ戻る」



 朝。


 コウはゆっくり目を開ける。


 リースの宿の天井。


 木の匂い。


 昨日よりは少し身体が軽かった。


 隣を見る。


 リリアも既に起きていた。


「どうだ、調子は」


 リリアは小さく頷く。


「もう全然問題ないです」


 顔色も悪くない。


 熱も無さそうだった。


 コウも少し安心する。


「なら行くか」


「はい」


 2人は身支度を整える。


 水筒。


 袋。


 カバン。


 最低限だけ持つ。


 そのまま宿を出た。


 朝のリース村はまだ静かだった。


 煙が少し上がっている。


 パンを焼く匂い。


 木を割る音。


 村が少しずつ起き始めていた。


 コウ達はグレン工房へ向かう。


 工房へ着くと、既に数人集まっていた。


「お、来たか」


 エミルが手を上げる。


 ロイド。


 ガルド。


 みんな準備済みだった。


 その横ではルナが鼻を鳴らしている。


 リリアは自然にそちらへ向かった。


「水替えますね」


 桶を持ち、水を入れ替える。


 飼葉も確認。


 首元も軽く撫でる。


 ルナも落ち着いた様子だった。


 コウはその間に昨日の干し肉を確認する。


 吊るされていたウサギ肉。


 昨日塩処理した分だ。


「……干しながら帰るか」


 コウが呟く。


 そのまま工房裏を見る。


「グレイ」


「ん?」


「悪い、また借りる」


 コウはホセルヨキットを見る。


 昨日使っていた干し肉吊るし用の道具だった。


 グレイは少し嫌そうな顔をした。


「……また使うのか」


「森まで持ってく」


 グレイは小さくため息。


 その視線が自然とエミルへ向く。


(また“作れ”って言われそうだな……)


 そんな顔をしていた。


「壊すなよ」


「壊さん」


 コウは軽く返す。


 ホセルヨキットへ肉を吊るしていく。


 その横ではノイルが一輪車を見ていた。


「本当に森まで持ってくんですか?」


「試す」


 コウは短く返す。


 そしてルク袋から金を出した。


「……12だったな」


 グレイが頷く。


「ああ」


 コウはそのまま12ルク渡した。


 一輪車。


 正式受け取りだった。


 ノイルがかなり興味深そうに見る。


「戻ったら感想聞かせてくださいね!」


 エミルが笑う。


「お前ほんと好きだな」


 一輪車はそのままリアカーへ載せられる。


 準備が終わる。


 ロイドが周囲を見る。


「じゃあ行くか」


 一行は村を出た。


 コウ。


 リリア。


 ロイド。


 エミル。


 ガルド。


 5人。


 リアカーを人力で引いていく。


 村道を抜ける。


 だが森へ近付くにつれ、道は徐々に悪くなっていった。


 木の根。


 石。


 ぬかるみ。


 荷台が時々揺れる。


「うおっ」


 エミルが少し笑う。


「これ、荷物固定ちゃんとしとかねぇと怖ぇな」


 ロイドが後ろを見る。


「森奥用か、その……小さいリアカー」


「一輪車」


 コウが訂正する。


「ああ、一輪車か」


 コウは前を引きながら言う。


「リアカーより小回り利く」


 さらに奥へ入る。


 すると少しずつ、以前通した跡が見え始めた。


 削った枝。


 踏み固めた土。


 無理やり広げた木の間。


 エミルが周囲を見る。


「毎回キツいぞこれ」


 コウは普通に返す。


「2回通した」


 ロイドが止まる。


「……2回もこれ通したのか」


 ガルドも少し引いた顔。


「よく通したなお前……」


 コウは特に気にしていない。


 押し続ける。


 そして。


 木々の間が少し開けた。


「……ここか」


 ロイドが呟く。


 森拠点。


 コウ達の生活場所だった。


 棚。


 鍋。


 灰。


 荷物。


 そこには確かに生活の跡が残っていた。


「……ほんとに住んでたんだな」


 ガルドが周囲を見る。


 エミルも小さく口を開く。


「思ったよりちゃんとしてる」


 ロイドは周囲を確認する。


「……確かに悪くねぇな」


 コウはリアカーを止める。


「だから拠点にした」


 リリアは静かに周囲を見ていた。


 初めて見る森拠点。


 人が生きていた空気が、まだそこに残っていた。


 少しの間、全員が周囲を見ていた。


 風が枝を揺らす。


 川の音も聞こえる。


 エミルが先に動いた。


「……で?」


「今日は何すりゃいい?」


 コウはリアカーへ視線を向ける。


「俺とリリアは拠点整理する」


「荷物下ろして、罠戻して、採取もある」


 その後、一輪車を見る。


「お前らは試してこい」


 エミルの顔が少し上がる。


「いいのか?」


「どうせ慣れた方が早い」


 ロイドも頷いた。


「周辺確認兼ねるか」


「狩りもできるしな」


 ガルドは一輪車を持ち上げる。


「……思ったより軽いな」


「だから森向き」


 エミルはもう少し嬉しそうだった。


「じゃあ行ってくる」


「暗くなる前には戻れよ」


「あいよ」


 3人はそのまま一輪車を押しながら森へ入っていく。


 少しして足音が遠くなった。


 静かになる。


「……さて」


 まずは荷下ろしだった。


 木箱。


 袋。


 鍋。


 布。


 拠点へ戻す物を分けていく。


 棚の横へ鍋を置く。


 厚手の布は簡易ベッド側へ。


 干し草も戻す。


 小壺。


 すり鉢。


 加工用具も棚へ並べていく。


 リアカー側へ残す物も分ける。


 水桶。


 水袋。


 馬用ブラシ。


 蹄掃除道具。


 普段使う物はそのまま積載状態にしておく。


 途中、コウは隅へ寄せてあった石道具を見る。


「……もう使わねぇな」


 そのまま隅へ放り、処分側へまとめた。


 その後、コウは魚罠を持ち上げる。


「先に魚罠戻す」


 2人は川へ向かった。


 流れ。


 石。


 沈み方。


 確認しながら魚罠を沈める。


 紐を固定。


 石で押さえる。


 リリアはその様子を見ていた。


「こうやって使うんですね」


「場所悪いと全然入らん」


 魚罠を置き終える。


 次は動物罠だった。


 枝。


 紐。


 踏み板。


 コウは慣れた手付きで組み直す。


 リリアはその横を見る。


「すごいですね」


「何がだ」


「こういうの全部……コウさん1人でやっていたのですか?」


 コウは肩をすくめた。


「やらねぇと食えねぇからな」


 罠を3つ戻す。


 獣道沿い。


 以前と同じ場所だった。


「これでよし」


 拠点へ戻る。


 途中、コウは荷物を確認する。


 採取袋。


 水筒。


 そしてナタも腰へ差した。


 リリアが少し不思議そうに見る。


「木も切るんですか?」


「竹取ってくる」


 コウは肩を軽く動かす。


「食器、まだ1人分しかねぇし」


「あ……」


 リリアはそこで少し気付いた顔をした。


 コウは葉用カバンをリリアへ渡す。


「あとこれ」


「葉っぱ用だ」


「……分かりました」


 2人は別方向へ歩き始めた。


 コウは薬草。


 山椒。


 それから竹を回収する。


 細めの竹を数本。


 背負える程度。


 薬草10。


 山椒20ほど。


 十分だった。


 拠点へ戻ると、リリアも戻ってきていた。


 カバンには大量のクルム葉。


「かなりありました」


「あと、薬用の葉も見つかりました」


「頭痛に効く葉と、腹痛用の葉、それと解熱用の葉です」


「必要になったら、また取りに行けます」


 コウは頷く。


「じゃあ今後、薬草関係はリリアに任せる」


 リリアが少し目を丸くする。


「……私に、ですか?」


「ああ」


「今までの薬草も乾かしてくれ」


「クルム葉も切らさないようにしたい」


「干し肉包む時にも使う」


「分かりました」


 コウはそのまま山椒と唐辛子をすり潰していく。


 山椒粉。


 唐辛子粉。


 小壺へ入れて棚へ置く。


 その横で、リリアはクルム葉を洗っていた。


 汚れを落とす。


 傷んだ部分を分ける。


 乾燥場所へ並べていく。


 薬草も袋へ分けながら整理していた。


 加工を終えた後、コウは竹へ手を伸ばす。


「今度は食器ですか?」


「ああ」


 竹を割る。


 削る。


 椀。


 皿。


 簡単なコップ代わり。


 最低限だが、これで2人分だった。


 その後、コウは吊るしてあった干し肉を見る。


「……これ、もう包めそうだな」


 朝持ってきた分だ。


 かなり乾いている。


「山椒のやつも頼む」


「見分けつくようにしてくれ」


「分かりました」


 リリアはクルム葉を使い、包み方を少し変えていく。


 普通の干し肉。


 山椒入り。


 分かるように包み直していった。


 しばらくして。


 遠くから声が聞こえてくる。


「おーい!」


 エミルの声だった。


 3人が戻ってくる。


 そして。


 一輪車の上にはウサギが2匹乗っていた。


「これめっちゃ楽だぞ」


 エミルがかなり機嫌良さそうだった。


「森で荷物運ぶのめちゃくちゃ楽だわ!」


 ロイドも頷く。


「小回り利くのがいいな」


 ガルドも笑う。


「狩りと相性いい」


 コウは少し笑った。


「だから作らせた」


 コウはリリアが包んだ干し肉を見る。


「……山椒のやつ2個でいいなら交換するぞ」


 エミルが笑う。


「ああ、いつもの換算な」


「それでいいわ」


 ロイドも頷く。


「帰り荷物軽い方が楽だしな」


 コウは一応リリアを見る。


「……山椒はこっちでいいか?」


「はい」


「じゃあそれで」


 ガルドがウサギを渡す。


「ただ血抜きまだだぞ」


「ああ、こっちでやる」


 交換成立だった。


 リリアはそのまま下処理を始める。


 血抜き。


 皮剥ぎ。


 解体。


 コウも横で塩を取り出す。


「……10使う」


「はい」


 塩を擦り込む。


 吊るす。


 2匹分。


 合計10個。


 まだ加工中だった。


 ロイドが口を開く。


「明日、早めに来いよ」


「ああ」


 エミルも続ける。


「荷物少なめで来いよ」


「リアカーに乗せるから」


 ロイドも頷く。


「木材積むんだろ?」


「ああ」


 ガルドも笑う。


「もう普通に輸送隊だなこれ」


 3人はそのまま帰っていった。


 静かになる。


 作業が終わる頃には、日も少し傾き始めていた。


 コウは網を持ち上げる。


「……網やるか」


「今からですか?」


「まだ日ある」


 2人はそのまま川へ向かった。


 コウが追い込み。


 リリアが待ち受け。


 役割分担はかなり噛み合っていた。


「取れました!」


 魚が網の中で暴れる。


 1匹。


 2匹。


 3匹。


 思った以上に入っていた。


 その後も繰り返す。


「……2人だとめっちゃ取れるな」


「待つだけでもいいなら、私にもできます」


「ああ、かなり助かる」


 気付けば魚は10匹になっていた。


「……取りすぎたな」


 コウは周囲を見る。


 追い込み場所。


 元々石が積み重なっている。


「ここ塞ぐ」


 石を動かす。


 隙間を埋める。


 流れは残す。


 だが魚は抜けにくい。


 簡易的な生簀だった。


 10匹を放り込む。


「……これなら何とかなるか」


 その後、2人は下流側へ向かった。


 先ほど仕掛けた魚罠。


 紐を辿る。


 そして引き上げた。


「入ってるな」


 するとリリアも横を見る。


「こっちも入ってます」


 魚は2匹。


「今日は流れいいからな」


「今日食う分はこっちでいい」


 魚2匹を持ち、魚罠も回収して拠点へ戻る。


 空はもう赤くなっていた。


 コウは先に火を起こす。


 その火を分ける。


 焚き火側。


 そして鉄板側のかまにも火を入れていく。


 リリアは魚を捌いていた。


 内臓を抜く。


 軽く水で洗う。


 コウは魚へ塩を振る。


 魚1匹に塩1。


 それを2匹分。


 串へ刺す。


「魚はこっちでやる」


「はい」


 リリアは鉄板を確認する。


 昨日完成した塩干し肉。


 今日は試し食いだった。


 山椒粉1。


 唐辛子粉1。


 コウの分。


 リリアの分。


 それぞれ使う。


 合計で山椒粉2。


 唐辛子粉2。


 リリアは塩干し肉を鉄板へ置く。


 じわっと音が鳴る。


 山椒の香り。


 唐辛子の刺激。


「……いい匂いです」


 コウは魚を返しながら頷く。


「粉にした方が広がるな」


 炙ったことで香りも強くなっていた。


「……干し肉、そのままでもいいけど」


「焼いて食うのも良さそうだな」


「温かい方が香り出ますね」


 魚が焼き上がる。


 皮が少し焦げる。


 塩の匂いが立つ。


 コウは串を火から外した。


「よし」


「こっちも大丈夫そうです」


 魚。


 塩干し肉。


 簡単な夕食だった。


 だが以前よりかなりまともだった。


 2人は焚き火の前へ座る。


 コウは先に塩干し肉を食べる。


 炙ったことで脂が少し柔らかくなっていた。


 そこへ山椒の香り。


 後から唐辛子。


「……この味ならいけるな」


 リリアも食べる。


「とても美味しいです」


 そして少し困った顔。


「ただ、ちょっと唐辛子は辛いです」


 コウは少し笑った。


「まあ、あれは好み分かれるか」


 2人はそれぞれ塩干し肉を2個ずつ食べる。


 今度は魚だった。


「魚も美味しいですね」


「ああ」


「取れるならかなり助かる」


 だが同時に、昼の光景も思い出す。


 魚10匹。


 生簀。


 大量の保存候補。


「……塩全然足りねぇな」


 リリアも苦笑する。


「思ったよりいっぱい取れましたから」


「2人だと効率おかしい」


「1人の時と全然違う」


 火がぱちりと鳴る。


 以前は1人だった。


 だが今は違う。


 向かい側にリリアがいる。


 干し肉を焼く匂い。


 魚の匂い。


 薬草を乾かしている匂い。


 生活の匂いが増えていた。


 コウは火を見ながら小さく呟く。


「……40でも足りねぇかもな」


「塩ですか?」


「ああ」


「80いるかもしれん」


 以前なら考えなかった量だった。


 だが今は違う。


 取れる量が増えている。


 加工量も増えている。


 保存できれば、かなり変わる。


(……早く塩見つけてぇな)


 自分達で確保できれば。


 それだけで生活はかなり変わるはずだった。


 森の夜がゆっくり深くなっていく。


 火だけが静かに揺れていた。


BL(第29話終了時点・確定版)


武器


主人公携帯


* 鉄ナイフ×1


リリア携帯(外出時)


* 鉄ナイフ×1


森拠点保管


* 木槍×1

* 剣×1

* ナタ×1


処分済


* 石ナイフ×2

* 石斧×1



衣類・装備


主人公携帯


* 革靴×1

* 革手袋×1

* 背負いカバン×1

* 肩掛けカバン×1

* 水筒×1

* ルク袋×1


主人公管理袋類


* 薬草袋×1

* 山椒袋×1

* 唐辛子袋×1

* 予備袋×1


※ 基本は森拠点保管

※ 採取・運搬時のみ持ち出し


リリア用(必要時持ち出し)


* 葉用カバン×1

* 採取袋×1

* リリア専用

* 水筒×1

* 革靴×1



馬用品・運搬


現在使用中


* リアカー×1

* 一輪車×1


借用中(グレン工房)


* ホセルヨキット×1

* 干し肉乾燥・吊るし販売用


グレン工房預かり


* ルナ×1


馬用品(リアカー常備)


* ロープ×1

* 縄×5

* 固定用×2

* 予備×3

* 水袋(小)×2(馬用)

* 水桶(大)×2

* ブラシ×1

* 蹄掃除具×1

* 飼葉枡×1


森拠点保管


* ロープ×2

* 紐×3(罠用)

* 魚罠×2



食料


完成品


* 山椒干し肉×6

* 塩干し肉×1

* 固形パン×1


加工中


* 塩干し肉(加工中)×10


簡易生簀


* 魚×10



素材・薬品


森拠点袋保管


* 薬草×37

* 山椒×18

* 唐辛子×3

* クルム葉 多数


粉類(森拠点保管)


* 山椒粉×4

* 唐辛子粉×4



* 塩壺A×1(塩7)

* 塩壺B×1(空)



容器・収納


リアカー積載


木箱(大)×1


収納内容:


* ロープ

* 縄

* 布

* 馬用品


木箱(小)×1


用途:


* 売却用商品収納


森拠点保管


木箱(大)×1


木箱(小)×1


小壺×5


* 基本拠点保管

* 商売時持ち出し予定あり


すり鉢×5


* 全数拠点保管



布・寝具


リアカー常備


* 普通の布×1


森拠点保管


* 厚手の布×2

* 干し草×2

* 簡易ベッド×2

* 棚×1

* 鉄板×1

* 中鍋×1

* 古い大鍋×1(陶器製)

* 小鍋×2

* ショベル×1

* ツルハシ×1

* 竹食器2人分



設置・稼働


森設置中


* 動物罠×3

* 簡易生簀×1



通貨


* 84ルク



同行・管理対象


* リリア×1

* ルナ×1



新規依頼・予定


* 小麦購入依頼ガルド

* 2袋予定

* 上限25ルク

* 中木材20本売却依頼

* 売値予定30ルク

* 試験輸送予定

* 一輪車森道試験成功

* 塩大量購入検討

* 魚保存運用開始



PL(第29話収支表)


項目増減

開始96ルク

一輪車購入-12

終了84ルク


食料・素材変動


項目増減

山椒干し肉-2(交換)

塩干し肉(完成品)-4(食事)

塩干し肉(加工中)+10

塩-12

山椒+20

山椒-3(粉化)

山椒粉+6

山椒粉-2(試食)

唐辛子-2(粉化)

唐辛子粉+6

唐辛子粉-2(試食)

薬草+10

魚+12

魚-2(食事)


加工・状況


内容状況

ウサギ2匹塩干し肉10加工中

魚10匹簡易生簀保管

山椒・唐辛子粉運用開始

竹食器2人分完成

クルム葉洗浄・乾燥開始


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