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コウの物語  作者: パルス


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25/30

第26話「吊るし売り」



 朝。


 コウが目を開ける。


 窓の外はまだ少し薄暗かった。


 隣では、既にリリアが起きている。


「おはようございます」


「ああ、おはよう」


 コウはゆっくり体を起こした。


 今日はまず確認したい事がある。


 干し肉。


 昨日吊るした塩干し肉と山椒干し肉。


 どこまで乾いているか気になっていた。


 その時。


 コウは荷物の横に置いていた小瓶を見る。


 解熱剤。


 栄養剤。


 残っていた最後の分だった。


 コウはリリアを見る。


「一応今日も飲んどけ」


 リリアは少し驚いた顔をした。


「もう大丈夫です」


「念のためだ」


 コウは短く返す。


 森へ戻れば、また無理をする。


 今のうちに回復出来るなら、その方がいい。


 リリアは小さく頷いた。


「……はい」


 薬を飲み、水を飲む。


 これで薬は空になった。


 軽く身支度を整える。


 荷物を確認する。


 ルク袋。


 水筒。


 ナイフ。


 最低限だけ持つ。


「行くか」


「はい」


 二人は宿を出た。


 朝のリース村はまだ静かだった。


 薄い朝霧。


 湿った土の匂い。


 遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。


 ゆっくり歩きながら、コウは空を見る。


 今日は晴れそうだった。


 乾燥には悪くない。


 グレン工房へ着く。


 既に工房には明かりが付いていた。


 中から木を削る音が聞こえる。


「朝早ぇな」


 グレンがこちらを見る。


「ああ」


「干し肉確認したくてな」


 コウがそう返すと、グレンは少し笑った。


「随分気に入っとるな」


「まぁな」


 弟子も既に起きていた。


 木材を抱えながらこちらを見る。


「おはようございます」


「おう」


 コウは軽く手を上げた。


 そのまま工房裏へ回る。


 吊るされた干し肉が朝風に揺れていた。


 山椒側。


 塩側。


 両方確認する。


 かなり乾いてきている。


 昨日より明らかに水分が抜けていた。


 コウは一つ軽く押す。


「……悪くないな」


 リリアも近付いて確認する。


「かなり乾いてます」


「ああ」


 コウは頷いた。


「午後にはいけそうだな」


 塩側も見る。


 こちらも問題無い。


 まだ完全ではないが、順調だった。


 その時。


 リリアが吊るされた干し肉を見ながら小さく呟く。


「やっぱり葉は欲しいですね」


「ああ」


 コウも同意する。


 本来なら葉で包みたい。


 昨日、リリアから葉の話を聞いた。


 殺菌作用がある葉。


 保存に向く葉。


 森には普通にあるらしい。


 コウは吊るされた干し肉を見る。


 今回は葉が無かった。


 だから吊るしている。


 保存としても、衛生としても、本当は包みたい。


 特に持ち帰り用として売るなら尚更だった。


 リリアは少し考える。


「森戻ったら探したいです」


「頼む」


 コウは素直に頷いた。


 葉は必要だ。


 今後を考えるなら、特に。


 その後。


 コウはルナの方へ向かう。


 ルナは既にこちらへ気付いていた。


 鼻を鳴らす。


「おはよう」


 首筋を軽く撫でる。


 水桶を確認。


 ブラシを掛ける。


 蹄も軽く確認する。


 かなり落ち着いていた。


 リアカーにも慣れてきている。


 その横で、コウはリアカーを見る。


 荷台。


 接続部。


 縄。


 固定。


 色々確認する。


 そして少し考えた後、荷台上部を見る。


「……ここ使うか」


 コウは木材を持ち上げる。


 弟子が首を傾げた。


「何作るんです?」


「吊るす場所増やす」


「……はい?」


 グレンが少し面白そうな顔をする。


 コウは荷台四隅へ簡単な柱を追加していく。


 さらに横へ縄を渡す。


 簡単な構造。


 だがこれで干し肉を吊るせる。


 弟子が困惑した顔になる。


「肉吊るす前提なんですか……?」


 コウは縄を引きながら答えた。


「今回は葉が無いからな」


 葉で包めない。


 だから吊るす。


 ただそれだけだった。


 グレンはリアカーを見ながら腕を組む。


「意外と悪くねぇな」


「ああ」


 コウも軽く頷く。


 風通しも悪くない。


 揺れても潰れにくい。


 移動中でも乾燥出来るかもしれない。


「おーい!」


 聞き慣れた声が飛んできた。


 振り返る。


 ロイド。


 エミル。


 二人だった。


 エミルはリアカーを見るなり足を止める。


「なんだこれ」


 視線はすぐ荷台上へ向いていた。


 追加された柱。


 横縄。


 吊るせる構造。


 ロイドも少し目を細める。


「……干し肉吊るすのか?」


 コウは軽く頷いた。


「ああ」


 エミルはリアカー横まで来る。


「これ、吊るしながら移動するんか?」


「乾かしながら運ぶのか?」


 ロイドも続ける。


 コウはそこで少し考える。


 最初からそのつもりだったわけではない。


 今回は葉が無かった。


 だから吊るす。


 ただそれだけだった。


 だが。


 移動中でも乾かせる。


 売りながら移動も出来るかもしれない。


 そう考えると、悪くない。


「……そういうやり方も出来るかもな」


 コウはリアカーを見る。


 風通し。


 揺れ。


 荷台の広さ。


 思ったより使えるかもしれない。


 エミルはニヤニヤしていた。


「結構運べそうじゃね?」


「まぁな」


 ロイドも荷台を見る。


「リアカーあるしな」


「思ったより積めそうだ」


 コウは少し考える。


「……でも運ぶなら量作れんとな」


 今の量では少ない。


 売るなら、継続して作れなければ意味が無い。


 保存も必要。


 量も必要。


 そこでコウは塩袋を見る。


「……これ、やるなら塩かなり必要になるな」


 ロイドが反応する。


「どれくらい必要なんだ?」


 コウは少し考えた。


「……とりあえず40くらいか」


 二人の動きが少し止まる。


「いや」


 ロイドがすぐ返す。


「村じゃそんな量ねぇぞ」


「まぁだよな」


 コウも苦笑する。


 塩は貴重だ。


 村で大量確保するのは難しい。


「じゃあ町行かなきゃな」


 エミルが軽く言う。


 コウは嫌そうな顔をした。


「……町往復はしんどいぞ」


 フェルドまでの距離は短くない。


 するとグレンが鼻を鳴らした。


「でも行きで売って帰りで塩積めばええ」


「往復で利益出るぞ」


 エミルがすぐ食い付く。


「それ普通にありじゃね!?」


 かなり乗り気だった。


 だがコウは首を振る。


「まず森だ」


 言葉を切る。


「森道確認」


「罠復旧」


「保存場所」


「まずそっち先だ」


 ロイドも頷く。


「まぁまず生活安定だな」


「今はまだ試験段階だ」


 グレンは半分面白がっている顔だった。


「まぁでも面白いのは確かだな」


 その横で、弟子が困惑した顔をしている。


「木工の話だったはずなんですけど……」


 エミルが吹き出した。


「今更だろ」


 コウは再び干し肉を確認する。


 山椒側。


 塩側。


 かなり乾いてきている。


「午後には売れそうだな」


「あ、なら」


 コウは思い出したように口を開く。


「完成待つ間に、残ってる5個先に売るか」


 先に売れる。


 村反応も見れる。


 乾燥待ち時間も潰せる。


「午後には次も出来そうだしな」


 エミルが笑う。


「じゃあ広場行くか」


 リアカーを引きながら広場へ向かう。


 コウ。


 リリア。


 ロイド。


 エミル。


 グレン。


 そして弟子。


 妙に人数が多かった。


 弟子は途中から完全に流されている顔をしている。


「俺、本当に何しに来たんだろ……」


 エミルが笑う。


「見学だ見学」


「絶対違いますよね?」


 そんなやり取りをしながら広場へ到着する。


 リアカーを止めた瞬間。


 周囲の視線が集まった。


「なんだあれ」


「吊るしてるぞ」


「干し肉か?」


 村人たちの目線は、まずリアカー上へ向いていた。


 荷台上部。


 追加された柱。


 そこへ吊るされた干し肉。


 かなり目立つ。


 コウは木箱を二つ取り出す。


 そのまま並べる。


 即席の販売台。


 完成済みの山椒干し肉を五つ置いた。


 リアカー上には、まだ乾燥中の干し肉が揺れている。


 その光景に、村人たちが少しずつ集まり始めた。


「これ乾かしてるのか?」


「移動中もやるのか?」


「腐らねぇのか?」


 質問が飛んでくる。


 コウは少し周囲を見る。


「……この売り方、客寄せになるな」


 コウが小さく呟く。


 グレンが聞き返す。


「お前、いつもこんな感じでやっとるのか?」


「いや、今回初めてだ」


 コウは素直に答える。


「そもそも吊るすのも初めてやった」


「葉が無かったからな」


 グレンは少し感心した顔になる。


「でも結果的に目立っとるな」


 エミルはニヤニヤしていた。


「なんか店っぽくなったな」


 弟子はまだ混乱している。


「木工……ですよね?」


 ロイドが吹き出す。


「もう諦めろ」


 弟子は本気で困った顔になった。


 コウは木箱の上へ視線を向ける。


「売るのはこっちな」


 ようやく販売開始だった。


 村人の一人が近付いてくる。


「これ前の山椒のやつか?」


「ああ」


 コウは頷く。


「今回は5個だけだ」


 男は干し肉を見た後、そのまま2ルクを出した。


「じゃあ一つくれ」


 コウは干し肉を渡す。


 販売成立。


 エミルが少し嬉しそうに笑った。


「お、もう売れた」


「まぁ前食った奴もいるからな」


 ロイドも頷く。


 保存食としてかなり便利なのは分かっている。


 しかも味も珍しい。


 山仕事する人間には普通にありがたい。


 その横では、別の村人が吊るされた干し肉を見上げていた。


「そっちはまだなのか?」


「乾燥中だ」


 コウが答える。


「塩の方か?」


「ああ」


 村人たちは少しざわつく。


 塩。


 その単語だけで反応が変わる。


 すると別の男が木箱の前へ来た。


「……悪い、今ルク無いんだが」


 コウは男を見る。


「何かあるなら交換でもいいぞ」


 男は少し考える。


「硬パンならある」


「持って来れるならいい」


 男はすぐ走っていった。


 エミルが笑う。


「普通に回ってんな」


「思ったよりな」


 ロイドも少し驚いていた。


 村人たちは、


 売り物だけでなく、


 リアカー上の吊るし干し肉まで見ている。


「これ運びながら乾かすのか?」


「そういう事も出来るかもしれんな」


 コウはリアカーを見る。


「……町でもいけるかもしれんな」


 エミルがすぐ反応した。


「だろ?」


「かなり目立つぞこれ」


 グレンもリアカーを見る。


「増やすなら、もう少し上も使えるな」


 コウは軽く頷く。


「今は二本だけだけどな」


「三本、四本くらいに増やしてもいいかもしれん」


 弟子が呆然としている。


「本当に増やす気なんですね……」


 その時。


 さっきの男が戻ってきた。


 手には硬パン。


「これでどうだ?」


 コウは軽く確認する。


「いいぞ」


 干し肉を一つ渡す。


 交換成立。


 ロイドが少し感心した顔になる。


「思ったより回るな」


「ああ」


 コウも認める。


 保存食。


 しかも持ち歩ける。


 思った以上に需要がある。


 別の村人が木箱の前へ来る。


「一つくれ」


 男はそのまま2ルクを置いた。


 コウは干し肉を一つ渡す。


 現金販売成立。


 これで残り二つ。


 エミルは周囲を見ながら笑う。


「普通に店になってんな」


「まぁな」


 その時。


 別の男がこちらへ戻ってくる。


 手にはウサギ。


「持ってきたぞ」


 コウは少し驚いた。


 本当に持ってきたらしい。


 ロイドも横から見る。


「結構いいウサギだな」


「ああ」


 コウは頷く。


「じゃあ交換でいい」


 木箱の上の干し肉を一つ取る。


 男へ渡す。


 交換成立。


 これで残り一つ。


 村人たちも少しざわつき始める。


「もう一個だけか」


「午後待つか……」


「塩の方気になるな」


 吊るされた塩干し肉を見る視線も増えていた。


 エミルは吊るされた塩干し肉を見上げる。


「塩の方、かなり気になるな」


「まだ乾燥中だ」


 コウはそう返す。


 ただ、かなり乾いてきている。


 午後には十分いけそうだった。


 ロイドも吊るされた肉を見る。


「でも塩使うなら、やっぱ持ちは良くなりそうだな」


「ああ」


 コウは頷く。


「山椒より肉の味も残りそうだ」


 山椒は風味が強い。


 あれはあれで良い。


 だが塩は違う。


 肉そのものを活かす方向だ。


 エミルは腕を組む。


「しかも町だと三ルクなんだろ?」


「まぁな」


 コウは軽く答える。


「向こうじゃその値段で売った」


 村人たちも少しざわつく。


「三ルクか……」


「結構するな」


 だが同時に、


「塩だしな」


「町ならまぁ……」


という空気もある。


 塩自体が高い。


 保存食としても価値は分かる。


 エミルは完全に商売の顔になっていた。


「これ、普通に回りそうだなぁ」


 ロイドは呆れ半分で笑う。


「お前楽しそうだな」


「そりゃ面白いだろ」


 エミルはリアカーを見る。


 吊るし肉。


 木箱販売。


 人だかり。


「なんか今までと全然違うもんな」


 コウも周囲を見る。


 人が止まる。


 見ていく。


 話しかけてくる。


 今までは違った。


 自分から交換を持ちかけていた。


 自分から声を掛けていた。


 だが今回は、


 向こうから人が来る。


 コウは小さく呟く。


「……これ、自分から動かなくていいのか」


 ロイドが少し笑う。


「店ってそういうもんだろ」


 コウはリアカーを見る。


 荷台。


 柱。


 縄。


 吊るされた干し肉。


 思った以上に形になっていた。



BL(第26話途中時点/広場販売中)


武器


主人公携帯


* 鉄ナイフ×1


リリア携帯(外出時)


* 鉄ナイフ×1


森拠点保管予定


* 木槍×1

* 剣×1

* 石ナイフ×2(処分予定)

* 石斧×1(処分予定)



衣類・装備


主人公携帯


* 革靴×1

* 革手袋×1

* 背負いカバン×1

* 肩掛けカバン×1

* 普通のカバン×1

* 水筒×1

* ルク袋×1


リリア携帯(外出時)


* 革靴×1

* 水筒×1



馬用品・運搬


現在使用中


* リアカー×1(吊るし用簡易柱追加)


グレン工房預かり


* 馬×1


グレン工房(予約中)


* 一輪車×1(完成済・未払い・受取前)


馬用品


* ロープ×1

* 縄×5

* 固定用×2

* 予備×3

* 水袋(小)×2(馬用)

* 水桶(大)×2

* ブラシ×1

* 蹄掃除具×1

* 飼葉枡×1



森拠点保管予定


* ロープ×2

* 紐×3(罠用)



食料


販売用残り


* 山椒干し肉×1


加工中


* 山椒干し肉×20(リアカー吊るし中)

* 塩干し肉×10(リアカー吊るし中)


新規入手


* 硬パン×1

* ウサギ×1



素材・薬品


主人公携帯


* 解熱剤×0

* 栄養剤×0


リアカー積載


* 薬草×27

* 山椒×1

* 唐辛子×5

* 塩×24



容器・収納


主人公携帯


* 干し肉袋×5

* 薬草袋×1

* 山椒袋×1

* 塩袋×1



リアカー積載


木箱(大)×2


収納内容:


* ロープ

* 縄

* 布

* 馬用品


木箱(小)×2


用途:


* 売却用商品収納


小壺×5


使用中


* 塩壺A×1

* 塩壺B×1

* 山椒粉壺×1

* 唐辛子粉壺×1


予備


* 小壺×1


すり鉢×5


使用中


* 山椒用すり鉢×1

* 唐辛子用すり鉢×1

* 薬用すり鉢×1


予備


* すり鉢×2



布・寝具


リアカー積載


* 普通の布×1

* 厚手の布×2

* 干し草×2

* 簡易ベッド×1

* 中鍋×1



森拠点保管


* 簡易ベッド×1

* 棚×1

* 鉄板×1

* 古い大鍋×1(陶器製)

* 小鍋×2

* ショベル×1

* ナタ×1

* ツルハシ×1



通貨


* 54ルク



同行・管理対象


* リリア×1



現在状況


* リース村広場販売中

* リアカーへ吊るし用簡易柱追加

* 山椒干し肉・塩干し肉はリアカー吊るし中

* 山椒干し肉は残り1

* 村人側で塩干し肉への関心上昇中

* 吊るし販売方式へ周囲の関心上昇中



PL(第26話途中時点)


項目増減

開始50ルク

山椒干し肉販売+4

終了54ルク



食料・素材変動


項目増減

山椒干し肉-4

硬パン+1

ウサギ+1

解熱剤-1

栄養剤-1



加工・状況


内容状況

山椒干し肉残り1

山椒干し肉(加工中)リアカー吊るし中

塩干し肉(加工中)リアカー吊るし中

リアカー吊るし販売仕様へ簡易改造


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