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コウの物語  作者: パルス


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22/29

第23話「フェルド3日目」



 朝。


 コウはゆっくり目を開ける。


 木の天井。


 宿の匂い。


 森とは違う静かな空気だった。


 窓の外からは、既に町の音が聞こえている。


 荷車。


 人の声。


 馬の鳴き声。


 フェルドは朝から動いていた。


 コウは隣を見る。


 リリアはまだ眠そうだった。


 昨日より顔色は良い。


 熱もかなり下がっている。


 コウは机の上の柔らかパンを見る。


 残っていた最後の一つ。


「……食えるか」


 リリアがゆっくり目を開ける。


「……はい」


 コウは小さく頷き、パンを渡した。


「無理なら残せ」


「後で腹減った時に食え」


 リリアは小さく頷く。


「……はい」


 少しずつ食べ始めた。


 昨日より食べる速度が早い。


 コウはそれを確認する。


 しばらくして、リリアの手が止まった。


「……もう少しなら」


「なら後で食え」


 コウは静かに言う。


 まずは食わせる。


 薬はその後だった。


 リリアは頷く。


 コウは薬包みを取り出す。


「飲め」


 リリアは水と一緒に飲み込んだ。


 少し苦そうに眉を寄せる。


 だが、昨日よりしっかり飲めている。


 コウは小さく息を吐いた。


「俺は午前中、下で馬見てる」


「昼から買い物行く」


 リリアは静かに聞いていた。


「何かあったらドラン頼れ」


「……はい」


 コウは立ち上がる。


 正直、まだ町へ連れ歩ける状態ではない。


 昨日より良くなっている。


 だが、まだ無理だ。


 コウは部屋を出た。


 階段を降りる。


 食堂では既に何人かが飯を食っていた。


 ドランもいる。


「起きたか」


「ああ」


 コウは短く返す。


「今日も泊まる」


「まだリリアの調子悪い」


 ドランは少し眉を上げる。


「……リリアって言うのか」


「ああ」


 ドランは頷いた。


「まぁ昨日よりはマシそうだったな」


 コウは小さく頷く。


「出かけてる間、何かあったら頼む」


「構わん」


 ドランは鼻を鳴らした。


「で、今日は馬だろ」


「ああ」


 コウはそのまま厩舎へ向かう。


 朝の空気は少し冷たい。


 馬は落ち着いていた。


 ドランは水桶を顎で示す。


「まず水だ」


 コウは昨日買った大桶を持ち上げる。


 井戸へ向かい、水を汲む。


 重い。


 だが持てない程ではない。


 馬房へ戻り、水桶を置く。


 馬がすぐ水を飲み始めた。


「水飲む量も見ろ」


「減り悪ぃ時は体調崩してる時ある」


 コウは黙って見る。


 鼻息。


 舌。


 喉。


 全部が大きい。


 次は飼葉だった。


 飼葉袋から枡へ入れる。


 馬はすぐ顔を寄せた。


 噛む音が響く。


「馬は金掛かるぞ」


「ああ」


「だが荷は運ぶ」


「上手く使えりゃデカい」


 コウは小さく頷いた。


 昨日だけでもリアカーにはかなり助けられている。


 その後、ドランは手綱を見せる。


「引っ張るんじゃねぇ」


「合図だ」


 コウは実際に持ってみる。


 革の感触。


 思ったより重い。


 最初は上手くいかなかった。


「硬ぇ」


「もっと軽くやれ」


 ドランに言われ、少し力を抜く。


 今度は馬がゆっくり顔を向けた。


 大きな目がこちらを見る。


 思った以上に圧がある。


「最初はそんなもんだ」


 ドランは笑った。


 鐘の音が町へ響く。


 昼前だった。


「そろそろ店も開き揃う頃だな」


 コウは頷く。


 今日は買う物が多い。


 そのままリアカーを引き、フェルドの通りへ出た。


 町は既に騒がしい。


 人。


 荷車。


 呼び込み。


 森とは違う音が流れている。


 やがて香辛料の匂いが鼻へ入った。


 刺激のある匂い。


 赤い乾燥実。


 細い葉。


 様々な香辛料が並んでいる。


「見るだけかい」


「唐辛子欲しい」


 店番の女が笑う。


「どれくらい」


「5」


「唐辛子5で銅20だ」


 コウは少し眉を動かした。


「……ルクだと」


「2ルク」


「ああ」


 フェルドでは銅も使われているらしい。


 コウは山椒袋を取り出した。


「山椒20売りたい」


 女は匂いを確認する。


「乾燥悪くないね」


「20なら12ルク」


「ああ」


「唐辛子差し引いて10ルクだ」


 ルク袋が少し重くなる。


 次は塩屋だった。


 白い袋が大量に積まれている。


「塩20」


 店番の男が少し眉を上げた。


「結構買うな」


「ああ」


 塩は高い。


 だが必要だった。


 保存には必要不可欠。


「20で20ルク」


 コウはルクを支払う。


 重い塩袋をリアカーへ積み込んだ。


 次は陶器屋。


 壺。


 皿。


 水差し。


 土の匂いがする。


「小壺はいくらだ」


「一つ2ルク」


「すり鉢は」


「こっちも一つ2ルク」


「小壺3」


「すり鉢3」


「合わせて12ルクだ」


 布で包まれた陶器を木箱へ積む。


 割れ物は気を使う。


 その後、鍛冶屋へ向かった。


 熱気。


 鉄の匂い。


 火花。


 鉄を打つ音。


 店先には鍋や斧が並んでいる。


「小鍋3」


「中鍋6」


「大鍋10」


 コウは中鍋を見る。


 森拠点の古い大鍋は陶器製で重い。


 小鍋は既に二つある。


 中鍋くらいが丁度良かった。


「中鍋」


 次は斧。


 片手斧を持ち上げる。


 重い。


 だが扱えそうだった。


「木倒すなら両手の方がいいぞ」


 店番が大きい斧を示す。


「両手は20ルク」


 コウは少し見る。


 だが今は大き過ぎる気がした。


「……こっちでいい」


「片手は16ルク」


 コウは頷く。


「ああ」


 鍋と斧を受け取り、リアカーへ積み込む。


 その時だった。


 通りの先に、大きな建物が見えた。


 石造り。


 広い入口。


 武装した人間が出入りしている。


 入口脇には紙が大量に貼られていた。


(……ギルドか)


 何となく分かった。


 異世界。


 冒険者。


 ギルド。


 いかにもこちらの世界にありそうだった。


 コウは少しだけ口元を動かす。


(どうやら俺は、王道勇者ではなかったらしい)


 今の自分は、


 魔王討伐でも、


 伝説の剣でもなく、


 塩と鍋を買い集めている。


 だが、不思議と悪くは無かった。


 その後、木工屋で小箱を二つ購入する。


「小箱なら2ルク」


「小2」


「4ルク」


 これで細かい荷物を分けられる。


 リアカーの荷台はかなり埋まっていた。


 コウは宿へ戻る。


 ドランが荷を見る。


「ちゃんと生活道具選んでやがる」


「無駄買いじゃねぇな」


「ああ」


 コウは干し肉を二本渡す。


「今日もこれで頼む」


 ドランは受け取る。


「飯は1ルク出す」


 ルクを一枚置いた。


 それからコウは少し間を置いて口を開く。


「あと、何かやらせてくれ」


「馬の事教わった」


「その分くらいは働く」


 ドランは笑った。


「律儀な奴だな」


「なら薪割りやってけ」


 宿裏へ向かう。


 ナタを借りる。


 革手袋をはめ、薪を割った。


 乾いた音が響く。


 最初より少しずつ慣れてくる。


「悪くねぇ」


 ドランが頷く。


「リリア、今日はちゃんと食ってたぞ」


 コウは小さく返した。


「そうか」


 夕方。


 コウは部屋へ戻る。


 リリアは起きていた。


 そして、朝残していた柔らかパンも無くなっていた。


「……食ったのか」


「……はい」


 昨日より食べられている。


 それだけで十分だった。


 夜。


 食堂では煮込みが出る。


「今日は野菜多めだ」


 リリアも少しずつ食べていた。


 コウが小さく口を開く。


「……今日はリリアの分、払ってないけど」


 ドランは笑った。


「あいつ、まだ全然食ってねぇだろ」


「今の量なら一緒で構わん」


 リリアは小さく頭を下げた。


「……ありがとうございます」


 食事を終え、二階へ戻る。


 部屋へ入ると、コウは薬包みを取り出した。


「……先に飲め」


 リリアは頷き、水と一緒に飲み込む。


 苦そうに少し眉を寄せた。


 だが、昨日よりしっかり飲めている。


「……ありがとうございます」


「治せ」


 リリアは少しだけ口元を緩めた。


「……はい」


 ランタンの光が部屋を照らす。


 隅には今日買った荷物。


 塩。


 鍋。


 陶器。


 木箱。


 斧。


 生活の道具だった。


 森で一人だった頃とは違う。


 保存を考え、


 道具を揃え、


 馬を覚え、


 人と関わる。


 やる事は増えた。


 だが、不思議と悪くなかった。


 コウはランタンの火を少し落とす。


「寝ろ」


「……はい」


 窓の外では、フェルドの夜がまだ続いていた。



BL(第23話終了時点/フェルド2日目終了)


武器


* 木槍×1

* 石ナイフ×2

* 鉄ナイフ×2

* 剣×1

* 片手斧×1



衣類・装備


主人公携帯


* 革靴×1

* 革手袋×1

* 背負いカバン×1

* 肩掛けカバン×1

* 普通のカバン×1

* 水筒×2

* 紐×3

* ルク袋×1



馬用品・運搬


* リアカー×1

* 馬×1

* ロープ×2

* 縄×5

* 水袋(小)×2

* ブラシ×1

* 蹄掃除具×1

* 飼葉枡×1

* 満タン飼葉袋×2

* 水桶(大)×2



食料


* 干し肉×11

* 柔らかパン×0



素材・薬品


* 薬草×37

* 山椒×21

* 唐辛子×5

* 塩×34

* 解熱剤×0

* 栄養剤×0



陶器・生活用品


* 中鍋×1

* 小壺×3

* すり鉢×3

* 木箱(小)×2



通貨


* 39ルク



同行・管理対象


* リリア×1



宿泊


* ドランの宿(宿泊中)

* 馬預かり中

* リアカー預かり中



リアカー設置・積載


設置


* 簡易ベッド×1

* 干し草×2

* 厚手の布×2

* 普通の布×1

* 木箱(大)×2

* ロープ×1(固定用)


積載


* 水桶(大)×2

* 満タン飼葉袋×2

* 薬草×37

* 山椒×21

* 塩×34

* 中鍋×1

* 小壺×3

* すり鉢×3

* 木箱(小)×2



拠点保管(森拠点)


* 簡易ベッド×1

* 棚×1

* 鉄板×1

* 鍋×1

* 古い大鍋×1(陶器製)

* 小鍋×2

* ショベル×1

* ナタ×1

* ツルハシ×1



PL(第23話終了時点)


項目増減

開始88ルク

山椒20売却+12

唐辛子5購入-2

塩20購入-20

小壺3購入-6

すり鉢3購入-6

中鍋1購入-6

片手斧1購入-16

木箱(小)2購入-4

宿代(干し肉2)干し肉-2

食事代-1

解熱剤2回分使用消費

栄養剤2回分使用消費

柔らかパン2消費消費

終了39ルク


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