第19話「フェルドの宿」
高い壁の前には、多くの人が集まっていた。
荷車。
馬車。
徒歩の旅人。
武装した男達。
門前は絶えず人が動いている。
コウはリアカーを引きながら、その列へ並んだ。
馬が小さく鼻を鳴らす。
後ろでは、奴隷少女が静かに横になっていた。
◇
少しずつ列が進む。
近付くにつれ、門の大きさがよく分かった。
村とは全然違う。
石壁。
見張り台。
武装した門番。
コウは自然と周囲を見回していた。
◇
「次」
門番が声を掛ける。
コウはリアカーを引いたまま前へ出た。
門番がコウを見る。
次に馬。
リアカー。
最後に奴隷少女へ視線を向けた。
「初めてか?」
「ああ」
「入町税は1人1ルクだ」
コウは少し眉を動かした。
「……2人分か?」
「そっちも人数扱いだ」
門番は奴隷少女を軽く顎で示す。
◇
コウは少しだけ考え、普通のカバンからルク袋を取り出した。
2ルクを払う。
「通っていいぞ」
◇
だが、コウはすぐには動かなかった。
「……馬と荷車置ける宿はあるか?」
門番は少しだけコウを見る。
「初フェルドか」
「ああ」
「ならドランの宿だな」
門番は通りの奥を指差した。
「厩舎付きだ」
「荷車置き場もある」
「行商人がよく使ってる」
「分かった」
コウは軽く頷き、そのまま門をくぐった。
◇
町の中へ入る。
空気が変わった。
人の声。
鍛冶の音。
焼ける肉の匂い。
石畳を車輪が転がる音。
全てが混ざっている。
コウはゆっくり周囲を見た。
建物の数が違う。
人の多さも違う。
道幅も広い。
それでも、人が多すぎて狭く感じた。
◇
馬車が横を通る。
荷物を抱えた男達が急ぎ足で歩く。
露店からは湯気が立ち上っていた。
奴隷少女も布の隙間から町を見ている。
だが、その表情は少し硬い。
コウは時々後ろを確認しながら進んだ。
◇
しばらく進む。
やがて、大きめの木造建物が見えてきた。
横には厩舎。
その周囲には荷車も並んでいる。
馬の匂いも強い。
「……ここか」
入口上には、
『ドランの宿』
と書かれていた。
◇
コウはリアカーを止める。
すると、中から大柄な男が出てきた。
腕が太い。
髭も濃い。
年齢は四十前後だろうか。
男はコウを見る。
次に馬。
リアカー。
最後に奴隷少女へ視線を向けた。
「泊まりか?」
「ああ」
◇
「馬と荷車込みなら空いてるぞ」
「2人部屋4」
「馬と荷車で2」
「合わせて6だ」
ドランはそこまで言うと、奴隷少女を見た。
「飯はどうする?」
◇
コウは後ろを見る。
奴隷少女は布を握ったまま、小さくこちらを見ていた。
「……食えるか?」
奴隷少女は少し迷う。
だが、小さく首を横へ振った。
「……まだ、あまり……」
声もかなり弱い。
◇
コウは少し考える。
それから木箱へ視線を向けた。
「……残りのパンでいいか?」
奴隷少女は少し驚いたようにコウを見る。
だが、すぐ小さく頷いた。
「……はい」
「まだ、たくさんは食べられないので……」
◇
コウは頷く。
「じゃあ俺の分だけ頼む」
「1ルクだ」
ドランは短く答えた。
◇
その後、コウは奴隷少女を見る。
「……先に部屋いいか」
ドランは奴隷少女の顔色を見る。
少しだけ眉を動かした。
「病人か」
「まあそんなもんだ」
「……ついて来い」
◇
宿の中へ入る。
木の床が軋む。
中は思ったより広かった。
酒の匂い。
煮込みの匂い。
話し声。
木皿の当たる音。
だが、コウはそちらを見る余裕はない。
ドランの後を追った。
◇
二階へ上がる。
廊下を進み、奥の部屋へ入った。
「ここ使え」
中にはベッドが二つ。
小さな机。
水差し。
窓。
村では見ない部屋だった。
◇
コウはリアカーから奴隷少女を支える。
「立てるか」
「……はい」
だが、足元はかなり危うい。
コウは肩を支え、そのままゆっくり部屋へ入れた。
◇
ベッドへ座らせる。
奴隷少女は少しだけ周囲を見た。
それから、ゆっくり息を吐く。
緊張が抜けたようにも見えた。
◇
コウは木箱から柔らかパンを取り出す。
布を解き、奴隷少女へ渡した。
「食える分だけ食え」
奴隷少女は両手で受け取る。
「……ありがとうございます」
◇
コウは水差しから水も入れる。
奴隷少女は少しずつパンを食べ始めた。
一口食べるたび、小さく休む。
かなり疲れているのが分かる。
◇
コウはその様子を見ながら、部屋の荷物を整理し始めた。
普通のカバン。
ルク袋。
薬草。
ナイフ位置。
紐。
明日すぐ動けるよう、少しずつまとめ直していく。
◇
「無理して食うな」
コウが言う。
奴隷少女は小さく頷いた。
「……はい」
◇
しばらくして、奴隷少女の手が止まる。
まだ少し残っていた。
「……もういいのか?」
「……少し、お腹いっぱいで……」
コウは頷く。
「じゃあ後で食え」
残りは布へ包み直し、ベッド脇へ置いた。
◇
奴隷少女はかなり眠そうだった。
コウは水差しを手の届く位置へ置く。
それから厚手の布を掛けた。
◇
奴隷少女は布を握る。
だが、すぐには眠らなかった。
初めての町。
初めての宿。
落ち着かないのか、時々周囲を見ている。
◇
コウは特に何も言わず、荷物整理を続けた。
その間、部屋は静かだった。
窓の外からだけ、町のざわめきが聞こえてくる。
◇
やがて。
奴隷少女の呼吸がゆっくり変わる。
コウはそちらを見る。
眠っていた。
布を握ったまま、小さく身体を丸めている。
◇
コウはしばらくその様子を見ていた。
問題は無さそうだった。
それから静かに立ち上がる。
音を立てないよう荷物を部屋の隅へ寄せた。
最後にもう一度奴隷少女を確認する。
起きる様子はない。
◇
コウは静かに扉を開けた。
軋む音が小さく鳴る。
そのまま、そっと廊下へ出る。
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PL(第19話終了時点)
(15日目中盤)
開始
* 干し肉:62
* 柔らかパン:0.5
* 薬草:47
* 山椒:50
* 塩:14
* ルク:20
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支出
* 入町税:2ルク
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食事消費
* 柔らかパン:0.5(奴隷少女)
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終了
* 干し肉:62
* 柔らかパン:0
* 薬草:47
* 山椒:50
* 塩:14
* ルク:18
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BL(第19話終了時点)
武器
* 木槍×1
* 石ナイフ×2
* 鉄ナイフ×2
* 剣×1
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衣類・装備
主人公携帯
* 革靴×1
* 革手袋×1
* 背負いカバン×1
* 肩掛けカバン×1
* 普通のカバン×1
* 水筒×2
* 紐×3
* ルク袋×1
リアカー固定・運搬
* ロープ×2
* 紐×5
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食料
* 干し肉×62
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素材
* 薬草×47
* 山椒×50
* 塩×14
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通貨
* 18ルク
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同行・管理対象
* 馬×1
* 奴隷少女×1
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宿泊
* ドランの宿(宿泊前)
* 馬預かり予定
* リアカー預かり予定
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リアカー設置
* 簡易ベッド×1(設置済)
* 干し草×2
* 厚手の布×2
* 普通の布×1
* 木箱×2(前後固定)
* ロープ×1(簡易ベッド固定用)
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リアカー積載
商材
* 薬草×47
* 山椒×50
荷物
* 背負いカバン×1(干し肉40)
* 肩掛けカバン×1(干し肉22)
* 普通のカバン×1(薬草・18ルク)
* 革手袋×1
* 紐×5
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拠点保管(森拠点)
生活用品
* 簡易ベッド×1
* 棚×1
* 鉄板×1
* 鍋×1
* 古い大鍋×1
* 小鍋×2
* ショベル×1
* ナタ×1
* ツルハシ×1
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本日の変化
* フェルド入町
* ドランの宿へ到着
* 奴隷少女を宿部屋へ移送
* 初宿泊施設利用
* フェルド生活開始




