第17話「準備の日」
朝、目を覚ます。
火はまだ残っていた。
赤く燻る炭を見ながら、コウはゆっくり体を起こす。
「……っ」
肩が重い。
腕も張っている。
昨日の切り株掘りの疲労が、しっかり残っていた。
「……地味に効いてるな」
小さく呟き、外へ出る。
朝の空気は少し冷たい。
空は薄く白み始めていた。
◇
コウは森へ向かう。
まずは罠確認だった。
1つ目。
空。
2つ目。
これも空。
3つ目。
やはり空だった。
「今日は無しか」
少し残念そうに呟く。
だが、毎日うまくいくわけではない。
最近は、その辺も分かってきていた。
◇
拠点へ戻る。
今日は解体作業は無い。
代わりに、昨日吊るした干し肉を確認する。
葉の隙間から触れる。
「……よし」
十分乾いていた。
コウは集めておいた葉を広げ、干し肉を1つずつ包んでいく。
保存用だ。
これで持ち運びもしやすくなる。
包み終えると、小さく息を吐いた。
◇
次は薬草採取だった。
今日は山椒は採らない。
かなり備蓄が増えている。
必要な分だけで十分だった。
コウは慣れた場所を回り、薬草を摘んでいく。
1つ。
また1つ。
最終的に10本ほど回収した。
◇
ついでに山菜も回収する。
今日食べる分だけ。
鍋を手に入れたことで、ようやく安全に食べられるようになった。
それでも保存は出来ない。
だから必要な分だけだった。
「……まあ、こんなもんか」
◇
リアカーを引き、村へ向かう。
今日は色々やることが多い。
診療所。
馬。
買い物。
明日の準備。
気付けば、やることがかなり増えていた。
◇
診療所へ入る。
薬草の匂いが漂っていた。
奥では鍋から湯気が立っている。
コウは奥を見る。
簡易ベッド。
そこに横になっていた奴隷少女が、こちらへ視線を向けた。
昨日より、明らかに顔色が良い。
目もしっかり開いている。
「……」
奴隷少女は小さくこちらを見る。
反応もある。
かなり回復してきているようだった。
コウは近くへ行く。
「俺はコウだ」
奴隷少女はじっとこちらを見る。
「……多分、お前の主人になる」
少しだけ間を置く。
「明日、町へ行く」
「奴隷契約もする予定だ」
奴隷少女は弱々しく、小さく頷いた。
話は理解しているらしい。
ただ、かなり疲れた様子だった。
長く話す余裕はまだない。
コウは続ける。
「歩かせたりはしない」
「リアカーで運ぶ」
「だから、その辺は心配しなくていい」
奴隷少女は少しだけ表情を緩めたように見えた。
◇
医者がこちらへ来る。
「回復は順調だ」
「だが、無理はさせるな」
「ああ」
コウは袋から干し肉を1つ取り出し、渡す。
「今日の分」
医者は受け取り、小さく頷いた。
◇
診療所を出る。
そのままグレンの工房へ向かった。
今日も工房は騒がしかった。
木を削る音。
金槌の音。
積まれた木材。
修理中の荷車。
以前より忙しく見える。
「おう」
グレンが顔を上げる。
「嬢ちゃんどうだった」
「だいぶ良くなってた」
「明日には動けそうか?」
「運ぶだけなら、なんとか」
グレンは頷く。
「なら準備だな」
◇
今日は弟子の方が馬を連れてきた。
「今日は俺が見ます」
まだ若い男だった。
どうやら主に馬の世話を担当しているらしい。
餌。
水。
慣らし。
引き確認。
そういう役割だという。
「馬車とセットで売ることもありますから」
「馬は何頭か常にいるんですよ」
工房の奥を見る。
確かに、他にも数頭の馬がいた。
「1頭増えたくらいなら、まあ大丈夫です」
コウは小さく頷く。
◇
そこから馬の練習が始まった。
歩かせる。
止める。
曲がる。
昨日よりはかなりマシだった。
それでも、まだぎこちない。
「力じゃなくて誘導です」
「急に引っ張ると嫌がるんで」
「……難しいな」
弟子が少し笑う。
「最初はみんなそんなもんです」
◇
練習を終える。
コウはグレンを見る。
「……さすがに2日も預かってもらったし、何か払わせてくれ」
だが、グレンは鼻を鳴らした。
「いらん」
「あの壊れた馬車、かなり助かってる」
「材料取り出来るしな」
そう言いながら、グレンは木材を動かす。
「まあ、代わりってわけじゃねぇが」
コウは地面へしゃがみ込む。
木の棒で土へ図を書き始めた。
「……今度はこれだ」
丸。
荷台。
1本の車輪。
グレンが眉をひそめる。
「なんだこれ」
「一輪車」
「山道用だ」
◇
そこへ、いつの間にかエミルとロイドも来ていた。
「また変なの描いてるな!」
エミルが覗き込む。
ロイドも腕を組む。
「……荷車とは違うな」
コウは頷く。
「平地ならリアカーの方が強い」
「でも山道とか悪路なら、こっちの方が動きやすい」
エミルの目が輝く。
「これ絶対便利だろ!」
「木運ぶのにも使えそうだし!」
ロイドも頷く。
「坂道とか細道向けだな」
グレンは図を見ながら唸る。
「作るなら……16ルクくらいか」
「構造自体はそこまで難しくねぇ」
「半日ありゃ形にはなる」
だが、そのまま工房の奥を見る。
「ただ今、リアカーの依頼増えててな」
「忙しい」
エミルが笑った。
「これ俺も欲しい!」
グレンは呆れたように鼻を鳴らした。
「お前、絶対面白がってるだけだろ」
◇
コウは立ち上がる。
「町から戻る頃までに出来てたら助かる」
「ああ、分かった」
そして今日は、改造されたリアカーも受け取った。
明日の出発準備がある。
今日は持って帰る必要があった。
馬は引き続き預ける。
◇
その後、コウは村を回った。
まずは薬草の換金だった。
「薬草、また持ってきたのか」
「ああ。20ある」
袋から取り出して見せる。
村人は慣れた手付きで確認していく。
「質は悪くねぇな」
「最近かなり持ってくるようになったじゃねぇか」
「まあ、必要になってきたからな」
村人は苦笑する。
「薬草採りの才能あるんじゃねぇか?」
「森慣れしてる奴でも、そんな安定して採れねぇぞ」
「……そうか?」
コウにはまだ実感が無かった。
だが、最初の頃より見つける速度がかなり上がっているのは確かだった。
「20で20ルクだ」
「ああ」
村人が硬貨を数える。
ちゃり、ちゃり、と小さく音が鳴った。
だが、途中で村人が手を止めた。
「……お前、金入れるもん持ってねぇのか?」
コウは少し考える。
「……無いな」
村人は呆れたように笑った。
「しょうがねぇな」
そう言って、小さな袋を1つ投げて寄越す。
「……助かる」
コウはそこへ20ルクを入れる。
袋の中で硬貨が鳴った。
薬草を直接ルクへ換えるのは、これが初めてだった。
そのまま財布代わりにすることにした。
◇
次はパン屋だった。
店へ近づくと、バルドがこちらを見る。
「お、また来たか」
「ああ。柔らかパン2欲しい」
「干し肉1だな」
コウは干し肉1を渡す。
バルドは受け取ると、柔らかパン2を棚から取り出した。
「嬢ちゃん用か?」
「ああ」
「そりゃ柔らかい方が食いやすいだろうな」
コウは頷き、パンを受け取る。
◇
次は雑貨を扱っている村人のところだった。
「ロープ欲しい」
「何本だ?」
「3」
男は少し驚いた顔をする。
「結構使うな」
「馬とリアカー用だ」
「あー……なるほどな」
納得したように頷く。
「ロープ3で干し肉3だ」
「ああ」
コウは干し肉3を渡す。
代わりに丸められたロープ3を受け取った。
「紐も5欲しい」
「そっちは干し肉1だな」
追加で干し肉1を渡す。
男は笑った。
「最近ほんと色々揃え始めたな」
「前はもっとギリギリだったろ」
「……まあな」
コウも否定はしなかった。
◇
次は靴だった。
並べられていた簡素な革靴を見る。
「その靴か?」
「ああ」
「干し肉2だ」
コウは少し考える。
サイズは分からない。
だが、奴隷少女はかなり小柄だった。
「……多分これでいいか」
干し肉2を渡す。
店主が靴を渡してくる。
「女用にしちゃ丈夫な方だ」
「町行くなら、そのくらいの方がいい」
「ああ」
◇
最後は木箱だった。
「木箱2欲しい」
「2なら干し肉2だな」
さらに革手袋も見る。
「それも買うのか?」
「ああ」
「革手袋1で干し肉2」
コウは干し肉を渡す。
店主は少し感心したように言った。
「馬持って、荷車持って、木箱まで買い始めるとはな」
「完全に旅人か運び屋みてぇだ」
コウは苦笑する。
「自分でも、ちょっとそう思う」
⸻
PL(第17話終了時点)
(14日目)
開始
* 干し肉:69
* 干し肉(乾燥中):5
* 柔らかパン:0
* 薬草:57
* 山椒:50
* 塩:14
* ルク:0
⸻
採取
* 薬草 +10
* 山菜(当日分)
* 魚1
⸻
加工・保存
* 干し肉(乾燥中)5 → 干し肉5
⸻
換金
* 薬草20 → 20ルク
⸻
支出
干し肉
* 診療所:1
* 柔らかパン2交換:1
* ロープ3:3
* 紐5:1
* 革靴1:2
* 木箱2:2
* 革手袋1:2
* 食事:1
合計:
* 干し肉:12
⸻
食事消費
* 柔らかパン1
* 魚1
⸻
終了
* 干し肉:62
* 干し肉(乾燥中):0
* 柔らかパン:1
* 薬草:47
* 山椒:50
* 塩:14
* ルク:20
* 魚:0
⸻
BL(第17話終了時点)
武器
* 木槍×1
* 石ナイフ×2
* 鉄ナイフ×2
* 剣×1
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衣類・装備
* 革靴×1
* 革手袋×1
* 背負いカバン×1
* 肩掛けカバン×1
* 普通のカバン×1
* 水筒×2
* 紐×8
* ロープ×2
* ルク袋×1
⸻
生活用品
* 簡易ベッド×2
* 干し草×2
* 厚手の布×2
* 普通の布×1
* 棚×1
* 木箱×2
* リアカー×1
* 鉄板×1
* 鍋×1
* 古い大鍋×1
* 小鍋×2
* ショベル×1
* ツルハシ×1
* ナタ×1
⸻
食料
* 干し肉×62
* 柔らかパン×1
⸻
素材
* 薬草×47
* 山椒×50
* 塩×14
⸻
通貨
* 20ルク
⸻
設置・停止中
* 罠(解除中)
* 魚罠×2(未設置)
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預け
* 馬×1(グレン工房預かり)
* 奴隷少女×1(診療所療養中)




