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コウの物語  作者: パルス


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第15話「生活の拡張」



 診療所を出る。


 外の空気は少し冷えていた。


 コウは小さく息を吐く。


 奴隷少女はまだ眠ったままだ。


 だが、医者は「今なら間に合う」と言った。


 なら、今は任せるしかない。



 診療所の前では、エミルが待っていた。


「お、出てきたか」


「ああ」


 コウは袋へ手を入れる。


 干し肉を取り出した。


「借りてた分だ」


 エミルへ渡す。


 干し肉8。


 エミルは少し目を丸くした。


「ちゃんと返すんだな」


「借りたままは嫌だ」


「律儀だな」


 エミルは苦笑しながら受け取る。


「ありがたく貰っとく」


 コウは頷いた。


 そこでベルクが口を開く。


「馬、今日はうちで見とくぞ」


「明日取りに来るか?」


 コウは少し考える。


 今日は荷物も多い。


 リアカーもある。


「……頼む」


「任せとけ」


 ベルクは笑った。



 その後、コウはいつもの交換屋へ向かった。


 店主が顔を上げる。


「お、来たか」


「ああ」


 コウは薬草を取り出す。


 店主が状態を確認する。


「今日も悪くねぇな」


「交換したい」


「何にする?」


 コウは少し考える。


「簡易ベッド2」


 店主が目を丸くした。


「寝床か?」


「ああ」


「他は?」


「干し草2。厚手の布2。普通の布1」


 店主が少し笑う。


「一気に生活感出てきたな」


「最近、地面がきつい」


「そりゃ毎日直寝してりゃな」


 店主は品を並べていく。


「干し草2は薬草2でいい」


「残りは干し肉11だ」


「分かった」


 コウは干し肉を取り出す。


 店主が数を確認する。


「よし、成立だ」


 簡易ベッド。


 干し草。


 厚手の布。


 普通の布。


 かなりの量になった。


 コウはそれを見て、小さく息を吐く。


「悪い」


 店主を見る。


「これ、少し預かってくれ」


「リアカー取りに行ってくる」


 店主は荷物を見る。


「お、ついに完成したのか」


「ああ」


「なら預かっといてやるよ」


「助かる」



 コウはそのままグレンの工房へ向かった。


 木を削る音が響いている。


 工房前には木材や車輪が並んでいた。


 コウが近づくと、グレンが気付く。


「お、来たか!」


「ああ」


 グレンは嬉しそうに立ち上がった。


「出来てるぞ!」


 工房横を指差す。


 そこにはリアカーが置かれていた。


 木枠。


 車輪。


 持ち手。


 荷台部分も広く作られている。


 横には棚もあった。


「……早かったな」


「張り切ったからな!」


 グレンは笑う。


 コウはリアカーへ近づく。


 木を押す。


 車輪を見る。


 作りは粗い。


 だが十分使えそうだった。


 持ち手を握る。


 少し引く。


 木の車輪が土を転がった。


「……悪くない」


「だろ?」


 グレンが腕を組む。


「森暮らしなら必須だ」


 棚にも視線を向ける。


 こちらも簡素だが悪くない。


「こっちも使えそうだ」


「地面置きばっかだと湿気るからな」


「分かる」


 コウは短く返した。


 最近は荷物量がかなり増えている。


 置き場も必要だった。


「……助かった」


「また必要なら言え」


「材料ありゃ作る」


「ああ」


 コウは頷く。


 そのままリアカーを引き、交換屋へ戻った。



 店主がリアカーを見るなり笑う。


「お、完成したか」


「ああ」


「ほら、預かってた分だ」


 店の横へ寄せられていた荷物を指差す。


 簡易ベッド2。


 干し草2。


 厚手の布2。


 普通の布1。


 かなりの量だ。


 コウはリアカーを横付けする。


 簡易ベッドを載せる。


 干し草。


 布。


 順番に積み込む。


「……かなり積めるな」


 思わず呟く。


 店主が笑った。


「だから便利なんだよ」


 コウは持ち手を軽く持ち上げる。


 荷物を積んでも、まだ余裕がある。


 背負うのとは全然違った。



 その後、コウは別の店へ向かった。


 次は調理道具だ。


 鍋を手に入れてから食事はかなり変わった。


 だがまだ足りない。


 焼く道具。


 湯を分ける道具。


 水を運ぶ道具。


 欲しい物は増えていた。



 金物を扱う店へ入る。


 鉄の匂いがした。


 棚には鍋や刃物、小さな金具が並んでいる。


 店主がコウを見る。


「何か探してるのか?」


「調理道具」


「ほう?」


 コウは棚を見る。


 そこで目が止まった。


 浅い鉄板。


 持ち手付き。


 縁は低い。


 だが肉を焼くには十分そうだった。


「……これ、焼き用か」


「ああ」


 店主が頷く。


「肉焼くなら便利だぞ」


 コウは持ち上げる。


 少し重い。


 だが悪くない。


 鍋とは違う。


 焼ける。


 それだけで料理の幅はかなり変わる。


「これ欲しい」


「干し肉5だ」


 やはり高い。


 鉄量が違う。


 だが、焼けるようになるのは大きかった。


 コウは頷く。


「分かった」


 次に鍋を見る。


 今使っている物より少し小さい。


「鍋は?」


「普通のなら干し肉2」


 さらに横を見る。


 小鍋。


 片手で持てる程度。


「こっちは?」


「小鍋は1つ干し肉1」


「2つ欲しい」


「毎度あり」


 店主が笑う。


 最後に、水筒を見る。


 木と革で作られた簡素な物だった。


「水筒は?」


「2つで干し肉1だ」


 コウは少し考える。


 だがすぐ頷く。


「2つ」


 店主が品を並べていく。


 鉄板1。


 鍋1。


 小鍋2。


 水筒2。


「合計、干し肉10だ」


 コウは袋を開く。


 干し肉を取り出す。


 店主が数える。


「ちょうどだな」


「ああ」



 交換した道具をリアカーへ積む。


 鉄板。


 鍋。


 小鍋。


 水筒。


 荷台はかなり埋まってきた。


「……増えたな」


 思わず呟く。


 簡易ベッド。


 棚。


 布。


 鍋。


 鉄板。


 少し前までの拠点には無かった物ばかりだ。



 コウはリアカーを引き、村を後にする。


 木の車輪が地面を転がる。


 荷物は重い。


 だが背負うより遥かに楽だった。


 森へ入る。


 草を踏み分ける。


 時折、木の根へ車輪が引っかかる。


「っと……」


 持ち手を少し持ち上げる。


 まだ慣れていない。


 だが運べる量が全然違う。


「……これは必要だな」


 素直にそう思った。



 しばらく進んだところで、コウはふと思い出す。


「……罠」


 朝確認した罠。


 そのままだった。


 リアカーを木へ寄せる。


 草を分け、罠へ向かう。


 ウサギが1匹かかっていた。


「……そのままだったか」


 状態を確認する。


 問題ない。


 ウサギを回収する。


 今日はかなりの量になりそうだった。



 やがて拠点へ戻る。


 見慣れた穴倉。


 焚き火跡。


 積み石。


 そこへリアカーを止める。


 荷台を見る。


 かなり物が増えていた。


「……まずは処理か」


 ウサギを下ろす。


 今日は6匹。


 数が多い。


 だが、やることは変わらない。



 ナイフを入れる。


 皮を剥ぐ。


 肉を分ける。


 慣れた作業だった。


 処理した肉を並べる。


 山椒を振る。


 紐へ掛ける。


 風の通る位置へ並べていく。


 干し肉30。


 ただし、まだ完成ではない。


 乾燥中だ。


「……結構増えたな」


 思わず呟く。


 以前なら、

 ここまで一度に加工することも無かった。


 だが今は違う。


 保存前提で動いている。


 生活のやり方そのものが変わっていた。



 次に袋を持つ。


 周囲へ出る。


 薬草を採る。


 山椒を採る。


 山菜も今日使う分だけ集める。


 必要以上には取らない。


 薬草10。


 山椒30。


 そして今日食べる分の山菜。


 それだけ確保して戻る。



 火を起こす。


 鉄板を置く。


 干し肉2を軽く炙る。


 ジュッ、と音がした。


「……おお」


 思わず声が漏れる。


 焼ける音。


 脂の匂い。


 そこへ鍋も使う。


 山菜を入れる。


 塩を入れる。


 湯気が立つ。


 以前とは違う。


 かなりまともな食事だった。


 コウは火の前へ座る。


 炙った干し肉を口へ運ぶ。


「……うまいな」


 小さく呟く。


 鍋だけの頃とは違う。


 焼けるだけで、かなり変わる。



 食事を終えた後、コウは火へ薪を足す。


 炎が少し強くなる。


 乾燥中の干し肉を確認する。


 問題ない。


 風も通っている。


 これだけ数が増えると、

 火を絶やす訳にもいかなかった。


「……薪もいるな」


 小さく呟く。


 最近は、

 食料だけでは回らなくなってきている。



 コウは今日持ち帰った荷物を見る。


 簡易ベッド。


 干し草。


 厚手の布。


 普通の布。


 棚。


 鍋。


 小鍋。


 鉄板。


 水筒。


 かなり増えた。


「……増えたな」


 小さく呟く。


 だが今日はもう組まない。


 明日また村へ行く。


 診療所。


 奴隷少女の様子も見なければならない。


 それに、多分そのまま町へ行く流れになる。


 今日はもう動かない方がいい。


 コウは荷物を雨の当たりにくい場所へ寄せる。


 棚だけは簡単に立てた。


 鍋や小鍋を置く。


 地面へ直置きするより遥かにマシだった。



 火を見ながら、小さく息を吐く。


「……明日だな」


 明日もまた村へ行く。


 やることは増えていた。


 だが不思議と嫌ではない。


 コウは火の横へ座る。


 しばらく火を眺める。


 それから、ゆっくり横になった。


 今日はいつも通りだ。


 火の熱を感じながら、

 コウは静かに目を閉じた。



BL(第15話終了時点)


武器


* 木槍:1

* 石ナイフ:2

* 鉄ナイフ:2

* ナタ:1

* 剣:1



衣類・装備


* 革靴:1

* 背負いカバン:1

* カバン:1

* 普通のカバン:1

* 水筒2



生活用品


* 簡易ベッド2

* 干し草2

* 厚手の布2

* 普通の布1

* 棚1

* リアカー1

* 鉄板1

* 鍋2

* 小鍋2



携帯食料


* 干し肉17

* 干し肉(乾燥中)30



携帯素材


* 薬草37



拠点保管


* 山椒32

* 塩16



預け


* 馬1(ベルク預かり)

* 奴隷少女1(診療所預かり)


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