第14話「新たなる仲間」
朝、目を覚ます。
火はまだ残っていた。
赤く燻る炭を見ながら、コウはゆっくり体を起こす。
「……今日は村に行く日だな」
小さく呟く。
ロイドたちとの取引の日でもある。
まずは干し肉を確認する。
昨日まで乾燥させていた分。
最後の10個も、しっかり仕上がっていた。
指で軽く押す。
問題ない。
「これで55か」
コウは保存用に集めていた大きな葉を引き寄せる。
乾いた葉だ。
干し肉をまとめるにはちょうどいい。
葉で包む。
紐で軽く縛る。
かなりの量になった。
「……重いな」
背負いカバンを引き寄せる。
新しい干し肉を下へ。
古い干し肉を上へ。
後から古い物を先に取り出せるよう、順番に詰めていく。
だが、途中で入らなくなる。
「40が限界か」
残った15個は肩掛けカバンへ移した。
次に薬草を確認する。
採取していた薬草は31。
今回は全部持っていく。
袋へ薬草31を詰める。
その袋を、干し肉15個を入れた肩掛けカバンへ一緒に収めた。
これでいい。
交換用の物資はまとめて持てる。
逆に、山椒と塩は置いていく。
今日は使わない。
ナタを腰へ差す。
小型ナイフも確認。
紐。
袋。
忘れ物はない。
荷を背負う。
背負いカバンが軋む。
干し肉40。
かなり重い。
肩掛けカバンには、干し肉15と薬草31を入れてある。
肩へ重みが食い込んだ。
「……まあ、今日は交換日だしな」
小さく呟く。
外へ出る。
朝の空気は冷えていた。
だが空は澄んでいる。
コウは拠点を振り返った。
「……行くか」
コウは森へ踏み出した。
◇
草を踏み分ける。
朝露が靴を濡らした。
背負いカバンが重い。
だが、不思議と嫌な重さではなかった。
ここまで積み上げた成果だ。
干し肉55。
薬草31。
少し前までなら考えられない量だった。
森を進む。
ナタで枝を払う。
鉄の刃は軽かった。
細い枝なら抵抗もなく切れる。
「……やっぱ違うな」
石とは比べ物にならない。
歩く速度も違う。
作業量も変わる。
鉄道具。
それだけで生活が変わる。
◇
しばらく進む。
森は静かだった。
鳥の声。
風で揺れる葉。
いつもの森。
だがその中に、違う音が混じった。
馬の鳴き声。
荒れている。
コウは足を止めた。
「……なんだ?」
耳を澄ます。
また聞こえる。
短く、荒い鳴き声。
普通ではない。
コウはゆっくり視線を向けた。
音は少し先。
森の奥。
ナタを握る。
足音を殺しながら近づいていく。
◇
枝の隙間から見えた。
横倒しの馬車。
散乱した荷。
倒れている人間。
そして。
狼がいた。
狼は3匹。
馬車の周囲を回っていた。
馬は横倒しの馬車に繋がれたまま暴れている。
鼻息が荒い。
荷は散乱していた。
木箱。
袋。
割れた樽。
そして地面には、人が倒れている。
そのうち1人へ、狼が近づいていた。
「……まずいな」
石を拾う。
重さを確かめる。
狙いをつけた。
振りかぶる。
投げる。
石が狼の横へ落ちた。
音に反応し、1匹がこちらを見る。
低く唸った。
「来るか」
狼が駆ける。
コウはナタを握り直した。
踏み込む。
狼が飛びかかってくる。
横へ避ける。
すれ違いざまに、ナタを振るった。
鉄の刃が食い込む。
狼が地面へ転がった。
だが、まだ動いている。
コウは距離を取る。
残り2匹が様子を見ていた。
唸り声。
緊張が走る。
その時だった。
「――下がれ!」
声が飛ぶ。
直後。
矢が狼の足元へ突き刺さった。
狼たちが一瞬怯む。
森の奥から人影が飛び出した。
ロイド。
ベルク。
エミル。
3人だった。
ベルクが前へ出る。
「コウ! 無事か!」
「問題ない!」
ロイドが弓を構える。
エミルも槍を構えた。
数で不利と判断したのか。
狼たちはゆっくり後退する。
唸りながら距離を取る。
そして。
森の奥へ消えた。
静けさが戻る。
コウは小さく息を吐いた。
「……助かった」
ロイドはすぐ周囲を確認する。
「エミル、周囲警戒!」
「ベルク、馬を抑えろ!」
「分かった!」
「任せろ!」
エミルが森へ視線を向ける。
槍を構えたまま周囲を警戒する。
ベルクは暴れる馬へ近づいた。
「おい、落ち着け!」
手綱を掴む。
馬をなだめる。
ロイドはそのまま馬車へ向かった。
横倒しの荷をどかす。
中を確認する。
そして、顔色が変わった。
「……これはまずいな」
コウも中を見る。
少女が倒れていた。
痩せている。
腕には鉄輪。
目を閉じたまま動かない。
だが、呼吸はある。
「生きてる」
ロイドは即座に判断した。
「診療所だ」
迷いはない。
ロイドが奴隷少女を担ぎ上げる。
「コウ、動けるか」
「問題ない」
「なら運ぶぞ」
コウは頷く。
「分かった」
そのまま走り出した。
去り際。
ロイドが振り返らず叫ぶ。
「ベルク! エミル!」
「後で診療所へ来い!」
「了解!」
「任せろ!」
返事を背に。
コウとロイドは村へ向かって走った。
◇
村へ着く頃には、コウの息も少し荒くなっていた。
だが、ロイドは止まらない。
そのまま診療所へ飛び込む。
「先生!」
中から医者が出てくる。
奴隷少女を見るなり表情が変わった。
「こっちへ運べ!」
ロイドとコウは奥へ入る。
簡素な寝台へ奴隷少女を寝かせた。
医者はすぐ状態を確認する。
呼吸。
脈。
瞼を開く。
腕の痩せ方。
傷。
鉄輪。
そして、小さく息を吐いた。
「……生きてるな」
ロイドが聞く。
「助かるか」
医者は即答しなかった。
「衰弱が酷い」
「だが、今ならまだ間に合う」
すぐ薬を取りに動く。
水を準備する。
コウは少しだけ奴隷少女を見る。
痩せている。
まともに食べていたようには見えなかった。
そこでコウは肩掛けカバンを開く。
袋から薬草を2つ取り出した。
「使ってくれ」
医者は一瞬だけ視線を向ける。
すぐ受け取った。
「ああ、助かる」
そのまま処置へ戻る。
◇
少しして。
扉が開く。
ベルクとエミルが入ってきた。
ベルクが先に口を開く。
「馬は落ち着いた」
「荷もまとめた」
エミルが続ける。
「現場は押さえた」
「狼も戻ってきてない」
ロイドが頷く。
「ご苦労」
そこでベルクがコウを見る。
「あと、馬はうちで預かってる」
「後で取りに来い」
コウは頷いた。
「分かった」
エミルが続ける。
「横転した馬車は固定しといた」
「荷もまとめてある」
「回収はできる状態だ」
ロイドが腕を組む。
「奴隷商人は死んでた」
短く告げた。
「奴隷と馬は、持ち主無し扱いになる」
コウは黙って聞く。
ロイドは続けた。
「現場を押さえたのはお前だ」
「優先権はコウにある」
コウは奴隷少女を見る。
寝台で眠ったまま動かない。
鉄輪だけがやけに目についた。
(物じゃない)
(でも、放っとけばまた売られるだけか)
少し考える。
そして顔を上げた。
「……俺が見る」
ロイドは静かに頷く。
「分かった」
そこでベルクが腰の剣を外した。
コウへ差し出す。
「現場に落ちてた」
「お前の取り分でいいだろ」
コウは受け取る。
重さを確かめる。
鉄だ。
「……悪くない」
ベルクは頷く。
「だろ」
エミルがそこで口を開く。
「馬車はどうする」
コウは少し考える。
だが答えは早かった。
「俺はいらない」
「グレンに回していい」
ベルクが少し驚く。
「ただでいいのか」
「問題ない」
「使う予定がない」
ロイドが頷く。
「分かった」
「伝えとく」
そこでロイドがふと思い出したように口を開く。
「そういや、リアカーと棚、出来てるらしいぞ」
コウは少しだけ目を細めた。
「……早いな」
ロイドは肩をすくめる。
「グレン、張り切ってたからな」
◇
その後。
ロイドが袋を持ち上げた。
「約束の取引だ」
「今日は5匹用意できた」
ウサギ5匹。
血抜き済みだ。
コウは背負いカバンへ手を入れる。
干し肉を取り出す。
「干し肉6で頼む」
差し出す。
ロイドが眉を寄せた。
「1つ多いぞ」
コウは短く答える。
「世話になった」
ロイドは少しだけ笑う。
「……成立だ」
干し肉を受け取る。
代わりにウサギ5匹を渡した。
取引は終わった。
そこでコウは再び医者を見る。
干し肉を1つ取り出した。
「診察料だ」
「とりあえず今日1日、頼む」
医者は受け取る。
「ああ」
そして薬を調合しながら口を開いた。
「今は眠ってる」
コウは振り返る。
「衰弱が酷いからな」
「まずは寝かせるしかない」
薬草を潰す。
水へ混ぜる。
「お前が今やれることは、もう無い」
コウは黙って聞く。
医者は続けた。
「今日は村へ来たんだろ」
「なら、取引でもしてこい」
「必要な物もあるはずだ」
コウは小さく息を吐く。
確かにその通りだった。
ここにいても、自分にできることは少ない。
「……頼む」
医者は短く返した。
「ああ」
コウは小さく頷く。
そして診療所を後にした。
⸻
PL(第14話終了時点)
開始
* 干し肉:55
* 薬草:31
* 山椒:32
* 塩:17
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支出
干し肉
* ロイド取引:6
* 診察料:1
合計:
* 干し肉:7
薬草
* 治療用:2
合計:
* 薬草:2
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取得
* ウサギ5
* 剣1
⸻
終了
* 干し肉:48
* 薬草:29
* 山椒:32
* 塩:17
* ウサギ5
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BL(第14話終了時点)
武器
* 木槍:1
* 石ナイフ:2
* 鉄ナイフ:2
* ナタ:1
* 剣:1
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衣類・装備
* 革靴:1
* 背負いカバン:1
* カバン:1
* 普通のカバン:1
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携帯食料
* 干し肉48
* ウサギ5
⸻
携帯素材
* 薬草29
⸻
拠点保管
* 山椒32
* 塩17
⸻
預け
* 馬1(ベルク預かり)
* 奴隷少女1(診療所預かり)




