第13話「鉄の道具」
朝、目を覚ます。
火はまだ残っていた。
赤く燻る炭を見ながら、コウはゆっくり体を起こす。
「……明日は村か」
小さく呟く。
なら、今日のうちにできることはやっておきたい。
木も乾燥させたい。
拠点も整えたい。
持っていく物も増やしたい。
村へ行く前の日は、やることが多い。
◇
コウは火を起こし直す。
小枝を入れ、息を吹き込む。
火が戻る。
軽く火の様子を見たあと、コウは外へ出た。
まず向かうのは、いつものウサギ罠だった。
◇
朝の空気は冷えている。
森は静かだ。
草をかき分けながら、順番に罠を確認していく。
「……今日は無しか」
今日はゼロ。
最近は続けて取れていたため、少し物足りない。
だが、罠自体に問題はない。
位置を軽く直し、再設置する。
◇
コウはそのまま拠点へ戻った。
火はまだ安定して燃えている。
その横には、乾燥を終えた干し肉。
コウはしゃがみ込み、状態を確認する。
「……悪くないな」
葉で包み、少しでも持ち運びやすくする。
昨日まで残っていた分も合わせる。
全部で45。
明日、村へ持っていく量としては十分だった。
「少しずつ増えてきたな」
◇
最初の頃を思えば、かなり違う。
食う物も、火も、道具も無かった。
だが今は違う。
鍋がある。
塩がある。
鉄の道具がある。
保存食も増えてきている。
◇
コウは荷物を確認した。
今日の探索セット。
ナタ。
鉄ナイフ。
紐。
簡易袋。
カバン。
普通のカバン。
そして背負いカバン。
木槍は背負いカバンへ引っ掛ける。
すぐ抜ける位置だ。
森では何が出るかわからない。
必要なら、すぐ手に取れるようにしておく。
◇
「……よし」
コウは背負いカバンを背負う。
今日は森を回る。
塩になりそうな場所も探す。
コウは拠点を出て、森へ向かった。
◇
森の中を進む。
朝露で湿った草が足に触れる。
鳥の声。
風で揺れる枝。
今日は獲物を追う日ではない。
探すのは、塩だ。
◇
しばらく歩き、木々が少し開けた場所へ出る。
「……ここか」
白っぽい岩肌。
乾いた土。
少し変色している場所。
コウはしゃがみ込み、岩を指で擦る。
白い粉が付いた。
少し舐める。
「……しょっぱい」
◇
完全な塩ではない。
土臭さもある。
苦みもある。
だが、確かに塩気がある。
「含みはある……けど、薄いな」
効率は悪そうだった。
それでも、今は貴重だ。
◇
コウはナタを抜く。
岩の脆そうな部分を少しずつ削る。
ガッ、ガッ、と乾いた音が響く。
「……やっぱり違うな」
鉄が食い込む。
石の道具より、明らかに楽だった。
◇
崩れた白っぽい欠片や土を袋へ入れる。
あとで煮てみる。
使える塩になるか確認するしかない。
◇
「……やっぱ少ないな」
思ったより集まらない。
もっと濃い場所が別にあるかもしれない。
今日は確認できただけでも収穫だった。
◇
袋の口を縛る。
そして立ち上がった。
「次は川だな」
◇
川へ向かう。
木々の間を抜けると、水の音が近づいてきた。
冷たい空気。
湿った土。
コウは斜面を下り、川辺へ出た。
◇
昨日仕掛けた魚罠の場所を見る。
「……あった」
流されてはいない。
少し安心する。
◇
水へ入り、魚罠を引き上げる。
中で水が跳ねた。
「おっ」
魚が2匹。
小さいが十分だ。
「ちゃんとかかるもんだな」
◇
中を確認する。
入口部分が少し歪んでいた。
「……やっぱ傷むか」
流れ。
石。
魚の暴れ。
思ったより負担がかかっていた。
◇
今日は村前日。
明日は回収に来れない。
だから今日は持って帰る。
魚も。
魚罠も。
◇
コウは魚を袋へ入れ、魚罠を背負いカバンへ固定した。
「帰ったら直すか」
◇
帰り道、山菜を摘む。
今日は薬草も必要だった。
見慣れた葉を探す。
根元を見る。
生え方を見る。
「……これで10か」
◇
薬草を普通のカバンへ入れる。
山菜は少し齧る。
苦み。
青臭さ。
だが、慣れてきていた。
◇
拠点へ戻る頃には、日がかなり上がっていた。
背負いカバンを降ろす。
中身を確認する。
魚2匹。
薬草。
白っぽい岩混じりの土。
そして魚罠。
「……悪くないな」
◇
コウは魚を取り出す。
新しいうちに処理したい。
火を強める。
鍋に水を入れる。
山菜を洗う。
野菜も切る。
塩を少し。
山椒も少し。
そして魚。
◇
焼ける匂いが広がる。
「……腹減ったな」
自然と声が漏れる。
◇
魚をひっくり返す。
皮が焼け、脂が少し落ちた。
そこへ野菜と山菜を入れる。
塩気と山椒の匂いが混ざる。
「……いい匂いだな」
◇
コウは干し肉も1つ火で軽く炙った。
硬い。
だが、魚と合う。
◇
簡単な食事。
それでも、かなり満足感があった。
◇
食事を終えると、コウは鍋を軽く洗った。
鍋は1つしかない。
だから、食事と塩作りは同時にはできない。
◇
「……さて、試すか」
白っぽい岩混じりの土を取り出す。
石で細かく砕く。
ガリ、ガリ、と乾いた音。
◇
砕いた欠片を鍋へ入れ、水を加える。
そして火へかけた。
じわじわ温まっていく。
「……これでどうなるかだな」
◇
すぐにはわからない。
その間に別の作業を進める。
◇
コウはナタと鉄ナイフ、それに紐だけ持つ。
木を切る場所は拠点から遠くない。
今日は木を運ぶだけだ。
◇
森へ入り、ちょうどいい太さの木を探す。
細すぎても駄目。
太すぎても運べない。
「……この辺か」
◇
コウはナタを振るう。
ガッ、と音が響く。
何度か打ち込む。
以前の石道具とは感触が違う。
木へしっかり食い込む。
「やっぱ鉄は違うな……」
◇
やがて木が倒れる。
枝を払い、引っ張れる長さへ調整する。
紐を結ぶ。
そしてズルズルと引きずりながら拠点へ戻る。
◇
これを3回。
かなり疲れる。
「……リアカー欲しくなるな、これ」
◇
持ってきた木を組む。
地面から少し浮かせる。
乾燥用の台だった。
◇
さらに残った木を切る。
薪にしやすい長さ。
火へ入れやすい長さ。
◇
ガッ、ガッ、と木を切る音が響く。
「……ほんと便利だな」
◇
切った木を並べる。
まだ生木だ。
すぐには使えない。
だが、乾かしておけば薪になる。
◇
「……少しずつ、だな」
◇
コウは火の方へ戻った。
鍋を覗き込む。
白っぽい濁り。
底には細かい砂や土。
◇
少し水を指につける。
木を運んだせいで汗をかいていた。
「……少し塩分取るか」
そのまま舐める。
◇
「……しょっぱいな」
塩気はある。
間違いない。
だが薄い。
土臭さも残る。
苦みもある。
◇
「……駄目ではないけど」
使えなくはない。
ただ、かなり微妙だった。
これを料理へ使う気にはならない。
◇
「今回は試しだな」
もっと濃い場所を探さないと駄目そうだった。
コウはそう判断する。
◇
鍋を火から下ろす。
そして中身を廃棄し、水で軽く洗った。
◇
次に、回収してきた魚罠を取り出した。
地面へ置き、形を確認する。
「……やっぱ歪んでるな」
◇
入口部分が少し潰れている。
編み込みも一部緩い。
コウは鉄ナイフを使い、紐を調整していく。
締め直す。
編み直す。
少し形を整える。
◇
「返し、もう少し狭くするか……?」
逃げづらくしたい。
だが狭すぎると入りにくい。
難しい。
◇
魚の骨も横へ置く。
細い。
軽い。
「……何かに使えそうなんだけどな」
今はまだ思いつかない。
◇
火が揺れる。
周囲は少し暗くなり始めていた。
◇
コウは拠点を見回す。
乾燥中の木。
鍋。
魚罠。
保存食。
鉄のナタ。
◇
最初の頃より、明らかに物が増えている。
暮らしになってきていた。
◇
コウは火の前へ座り込む。
小枝を1本入れる。
炎が少し強くなった。
◇
「……明日は村だな」
その言葉を最後に、コウは静かに火を見つめた。
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PL(第13話終了時点)
開始
* 干し肉:11
* 乾燥中干し肉5匹分
* 乾燥中干し肉2匹分
* 薬草:19
* 山椒:52
* 野菜:1
* 塩:18
* 紐:3
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完成
* 乾燥中干し肉5匹分 → 干し肉25
* 乾燥中干し肉2匹分 → 干し肉10
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採取
* 魚:2
* 薬草:10
* 山菜:少量
* 白塩岩試料:少量
* 木材用丸太:3
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加工
* 干し肉を葉で包装・整理
* 木材乾燥棚:1作成
* 薪材(乾燥前):作成
* 魚罠:修理・調整
* 塩抽出試行
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消費
* 魚:2
* 干し肉:1
* 野菜:1
* 山椒:1
* 塩:1
* 山菜:食用消費
* 白塩岩抽出物:試食後廃棄
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終了
* 干し肉:45
* 薬草:29
* 山椒:51
* 野菜:0
* 塩:17
* 紐:3
* 魚罠:2
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BL(第13話終了時点)
武器
* 木槍:1
* 石ナイフ:2
* 鉄ナイフ:2
* ナタ:1
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作業用品
* 石斧:1
* ショベル:1
* ツルハシ:1
* 大鍋:1
* 網:1
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衣類・装備
* 革靴:1
* 背負いカバン:1
* カバン:1
* 普通のカバン:1
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食料
* 干し肉:45
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素材
* 薬草:29
* 山椒:51
* 塩:17
* 山菜少量
* 竹複数
* 植物繊維少量
* ツル類
* 紐:3
* 薪材(乾燥前):複数
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運搬用品
* 簡易袋:6
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建築・固定構造物
* 簡易拠点:1
* 石組み簡易かまど:2
* 干し肉ラック:1
* 薬草乾燥場所:1
* 簡易魚囲い:1
* 動物避け用焚火:複数
* 木材乾燥棚:1
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可搬設備・大型用品
* リアカー(制作中)
* 棚(受取待ち):1
* 竹製簡易棚:1
* 竹製薬草乾燥台:1
* 竹製魚罠:2(回収・調整中)
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負債
* エミル立替分:干し肉8相当




