第2話 三軍スタート
翌日、入部届を出した俺は、放課後すぐにグラウンドへ向かった。
一年の新入部員が集められていた。
経験者っぽいやつも何人かいる。その中に混ざると、やっぱり俺だけちょっと浮いていた。
「名前」
「結城蓮です」
「経験は?」
「ありません」
コーチはうなずいた。
「未経験か。じゃあ三軍だな」
やっぱりそうか。
一軍は内野。
二軍は外野。
三軍は外野側のサブグラウンド。
その一軍の中に、翔太はいた。
同じ一年なのに、最初からあっちの人間みたいな顔をしている。
「おい、結城」
振り向くと、小柄な男子が立っていた。
「俺、足立隼人。二塁手。たぶん」
「たぶん?」
「三軍だしな。まだ何でもありだろ」
言いながら笑う。
「才木の幼なじみなんだって?」
「そうだけど」
「へえ。じゃあお前もそのうちエース?」
「いや、野手なんだけど」
「じゃあ大谷翔平?」
「話が飛びすぎなんだよ」
足立はけらけら笑った。
そのあと、もう二人がこっちに来た。
一人はキャッチャーミットを持った、少しがっしりしたやつ。
もう一人は背の高い、おとなしそうなやつだった。
「神崎大地。捕手」
「丸山健吾。一塁」
「結城蓮です」
短いやり取りだけだったけど、二人とも変に構えた感じがなくて、少しだけ安心した。
「未経験らしいぞ」
と足立が言う。
「お前が言うなよ」
「いや、情報共有は大事だろ」
「そんな堂々と言われるとへこむんだけど」
「大丈夫大丈夫。三軍なんてだいたいそんなもんだって」
その雑な励ましはどうなんだと思ったけど、少し気は楽になった。
三軍の練習は、想像以上に地味だった。
走る。
捕る。
投げる。
また走る。
それだけなのに、ちゃんときつい。
「痛っ」
キャッチボールで変なところにボールが当たって、思わず声が漏れた。
「結城、ほんとに何も知らないんだな」
足立が笑う。
「だから最初からそう言ってるだろ」
「いや、ここまでとは思ってなかった」
「そこまで正直に言わなくていいだろ」
「でも新鮮でおもしろい」
「おもしろがるなよ」
神崎がため息をつく。
「ちゃんと前で捕れ」
「……うん」
「でも、打球の反応は悪くないと思う」
「分かっても体が追いつかないんだよな……」
「そこは慣れじゃないか」
その言い方に、少しだけ救われた。
休憩のとき、ふと一軍を見る。
翔太が投げていた。
やっぱり、あっちは遠い。
「見てるなあ」
と足立が言う。
「まあ、少し」
「分かる。俺もたまに一軍見る」
「憧れとか?」
「いや、あっちの空気うまそうだなって」
「空気は一緒だろ」
「夢がないな、結城」
足立はけらけら笑った。
練習の最後、俺はコーチに聞いてみた。
「あの、バッティング練習っていつやるんですか」
コーチは少しだけ眉を動かした。




