表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園物語  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/20

第4話「すれ違う視線」

翌日。

朝の教室は、昨日よりも少し空気が重かった。

前田敏弘が席に座ると、すぐに周囲の会話が止まる。

そしてまた小さく始まる。

「昨日さ……保健室まで運んでたよね」

「やっぱり付き合ってるんじゃない?」

「でも前田ってレベル違うしな……」

敏弘は何も言わず、机に視線を落とした。

(またこれか)

悪意というほどではない。

だが、確実に距離を測られている感覚。

そのとき。

「前田くん!」

岡倉真優美が教室に入ってくる。

いつも通りの明るい声。

だが一瞬、教室の空気が止まった。

真優美はそれに気づかない。

「おはよう!」

敏弘は軽く手を上げる。

「おはよう。」

その何気ないやり取りが、さらに周囲の視線を強くした。

一時間目のあと。

廊下で真優美が友達に囲まれていた。

「ねぇ岡倉さん」

「前田くんと仲いいよね?」

「付き合ってるの?」

矢継ぎ早の質問。

真優美は目を丸くする。

「え、違うよ!」

「ただのクラスメイトだよ!」

必死に否定する声は、少しだけ震えていた。

その様子を少し離れた場所で敏弘が見ていた。

(……俺のせいか)

胸の奥が少し重くなる。

昼休み。

真優美は弁当を持ったまま、教室にいられず廊下を歩いていた。

「どこ行こう……」

屋上は昨日のことがある。

図書室は人が多い。

迷っていると――

「ここ。」

声がした。

振り返ると敏弘が立っていた。

「前田くん……」

「また屋上行く?」

真優美は少し迷ってから頷いた。

屋上。

風が強い日だった。

雲が早く流れている。

二人は柵の近くに座る。

しばらく沈黙。

真優美がぽつりと言った。

「私のせいで、前田くん変に見られてるよね。」

敏弘は即答した。

「気にしてない。」

「でも……」

「気にするなって。」

その声は少し強かった。

真優美は驚く。

敏弘は視線を空に向けたまま続ける。

「俺は勝手に距離取られるの、慣れてる。」

その言葉に、真優美は少し胸が痛くなる。

(慣れてるって……)

放課後。

事件は突然起きた。

教室で一人の男子が言った。

「前田ってさ、どうせ親の金でなんでもできるんだろ?」

一瞬、空気が止まる。

敏弘はペンを止めた。

「……何?」

「だってそうじゃん。努力とか関係ないし」

周囲がざわつく。

真優美が立ち上がろうとする。

「ちょっとそれは――」

しかし敏弘が先に口を開いた。

「じゃあ、何がダメなんだ?」

静かな声だった。

教室が一気に沈黙する。

敏弘は続ける。

「親が金持ちだと、俺の何が悪い?」

「俺自身は関係ないだろ」

男子は言い返せない。

そのとき。

真優美が小さく言った。

「前田くんは……すごいよ」

全員が振り向く。

真優美は少し震えながらも続ける。

「家がどうとかじゃなくて、ちゃんと人を見てる」

「それって簡単じゃないよ」

敏弘は驚いて真優美を見る。

周囲も静まり返る。

その日。

噂はまた形を変えた。

「庇ってたよな」 「やっぱり特別なんじゃない?」

しかし二人の間には、少しだけ違う空気が流れていた。

“噂”ではなく、“信頼”に近いもの。

夜。

真優美はアパートの机でノートを開いていた。

だが手が止まる。

(前田くん……)

今日の教室のことを思い出す。

自分の言葉。

少し勇気を出した言葉。

胸が熱くなる。

同じ夜。

敏弘は自室で窓の外を見ていた。

広い部屋。

静かな空間。

だが頭に浮かぶのは一人の少女。

(岡倉さんは……まっすぐだな)

誰に何を言われても曲がらない。

その強さが、少し眩しい。

そして翌日。

二人の関係に、さらに大きな転機が訪れる出来事が待っていた――。

第5話へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ