表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園物語  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/20

第2話「初めての昼休み」

入学式から数日が過ぎた。

高校生活にも少しずつ慣れ始めた頃だった。

前田敏弘は教室の窓際の席で外を眺めていた。

春の風が校庭を吹き抜ける。

サッカー部が練習をしている姿が見える。

「平和だな……」

そう呟いた時だった。

「前田くん!」

元気な声が聞こえる。

振り返ると岡倉真優美だった。

「おはよう。」

「おはよう!」

真優美はいつも明るい。

朝から笑顔を絶やさない。

その笑顔を見ると敏弘も自然と気持ちが軽くなる。

「今日も早いね。」

「新聞配達終わってから来たから!」

「大変じゃない?」

「慣れたよ!」

真優美は笑う。

だが敏弘は少し心配だった。

毎朝早起きして働き、その後学校に来る。

普通なら疲れていてもおかしくない。

それでも彼女は弱音を吐かない。

一時間目。

数学。

真優美はスラスラ問題を解いていた。

先生に指名されても即答する。

「すごいな……」

敏弘は感心した。

勉強は得意な方だが、真優美ほどではない。

周囲の生徒たちも驚いていた。

「岡倉さん頭いい。」

「特待生って本当だったんだ。」

真優美は少し照れていた。

昼休み。

チャイムが鳴る。

生徒たちは一斉に弁当を広げ始めた。

敏弘もカバンから弁当箱を取り出す。

家の料理人が作った豪華な弁当だった。

だが開いた瞬間、周囲がざわつく。

「うわっ!」

「高級料亭みたい!」

「何これ!」

敏弘は苦笑する。

自分にとっては普通だった。

しかし他の生徒から見れば異常らしい。

「今日も豪華だね。」

真優美が近づいてきた。

「そうかな。」

「そうかなじゃないよ!」

真優美は笑う。

そして自分の弁当を取り出した。

小さな弁当箱。

中身は白ご飯と卵焼き、漬物だけだった。

敏弘は少し驚いた。

「それだけ?」

「今日は節約の日だから!」

真優美は笑う。

だが敏弘には無理をしているように見えた。

「もしよかったら。」

敏弘は弁当のおかずを差し出した。

「え?」

「唐揚げ好き?」

「好きだけど……」

「食べる?」

真優美は慌てて首を振る。

「悪いよ!」

「余るから。」

「本当に?」

「うん。」

真優美は少し考えた後、小さく頷いた。

「じゃあ一個だけ。」

唐揚げを口に入れる。

次の瞬間。

「おいしい!」

目を輝かせた。

敏弘は思わず笑った。

「そんなに?」

「すごく!」

その様子を見ていたクラスメイトたちも笑う。

教室の空気が少し和やかになった。

放課後。

敏弘は図書室へ向かっていた。

本を借りるためだ。

すると奥の席に真優美がいた。

参考書を広げて勉強している。

時計を見る。

まだ午後四時。

アルバイトの時間まで勉強しているのだろう。

「頑張ってるね。」

声をかける。

真優美は顔を上げた。

「あ、前田くん。」

「勉強?」

「うん。」

机の上には問題集が何冊も積まれていた。

「将来のため?」

「そう。」

真優美は真剣な表情になる。

「大学行きたいんだ。」

「いい大学?」

「できれば。」

「すごいね。」

真優美は首を振る。

「すごくないよ。」

そして小さく笑った。

「お金ないから、勉強で勝負するしかないんだ。」

敏弘は言葉を失った。

その一言に彼女の現実が詰まっていた。

帰り道。

駅へ向かう途中。

真優美のスマホが鳴った。

「もしもし?」

母親からだった。

真優美の表情が少し曇る。

「うん。」

「大丈夫。」

「分かった。」

通話が終わる。

敏弘は聞いた。

「何かあった?」

真優美は少し迷った。

だが隠さなかった。

「お父さんの病院代が増えたみたい。」

敏弘は驚く。

「大丈夫なの?」

「大丈夫じゃないかも。」

真優美は苦笑した。

しかし次の瞬間。

「でも頑張るしかない!」

そう言って笑った。

無理をしているのは分かった。

それでも前を向こうとしている。

敏弘は胸が苦しくなった。

その夜。

前田家。

大きな食卓に豪華な料理が並ぶ。

だが敏弘は食欲がなかった。

真優美の弁当。

真優美の言葉。

病院代。

頭から離れない。

父親が尋ねる。

「どうした?」

「何でもない。」

敏弘は答えた。

しかし心の中では考えていた。

(自分に何かできることはないのかな。)

生まれた環境が違う。

持っているものも違う。

それでも。

友達として力になりたい。

そんな気持ちが少しずつ大きくなっていた。

一方その頃。

真優美はコンビニのレジに立っていた。

夜九時。

疲れているはずなのに笑顔で接客する。

仕事が終わり帰宅したのは十時過ぎだった。

古いアパート。

狭い部屋。

眠る父親。

洗い物をする母親。

真優美はそっと微笑む。

「私、もっと頑張るから。」

その言葉は誰にも聞こえなかった。

しかしその決意は確かに胸の中にあった。

そして翌日。

二人の高校生活に新たな出来事が訪れようとしていた――。

第3話へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ