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学園物語  作者: 優貴(Yukky)


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第1話「正反対のふたり」

四月。

春の柔らかな風が吹き抜ける朝だった。

私立青葉学園高等学校の正門には、新しい制服に身を包んだ新入生たちが集まっている。

期待と不安。

そんな感情が入り混じる中、一台の黒い高級車が校門前で静かに停車した。

周囲の生徒たちが思わず振り返る。

「すごい車……」

「芸能人でも来たの?」

車のドアが開く。

中から現れたのは、一人の少年だった。

身長は百七十五センチほど。

整った顔立ち。

黒髪。

そして落ち着いた雰囲気。

彼の名前は前田敏弘。

今日から高校一年生になる。

実は彼の家は全国展開する企業グループを経営している超お金持ちだった。

父は実業家。

母は海外でも活躍する投資家。

都内に複数のマンションを所有し、自宅はまるでホテルのような豪邸。

だが敏弘自身は派手な性格ではない。

「送迎は今日だけでいいよ。」

車の中の運転手へ言う。

「ですが坊っちゃん。」

「普通に通学したいんだ。」

運転手は苦笑した。

「かしこまりました。」

敏弘は軽く頭を下げ、校門へ向かう。

しかしその頃――

校門から少し離れた場所では別の少女が全力で走っていた。

「やばい、やばい、やばい!」

息を切らしながら駆ける少女。

岡倉真優美。

同じく高校一年生。

だが敏弘とは正反対だった。

彼女の家はとても貧しい。

父は病気で働けず、母は昼も夜もパートを掛け持ちしている。

真優美自身も新聞配達やコンビニのアルバイトをして家計を支えていた。

今朝も配達が長引いてしまったのだ。

「入学式初日から遅刻なんて嫌だー!」

全力疾走。

だが慌てすぎていた。

歩道の段差につまずく。

「あっ――!」

前へ倒れる。

その瞬間だった。

ガシッ。

誰かが腕を掴んだ。

真優美の身体が倒れる寸前で止まる。

「大丈夫?」

優しい声。

振り返ると敏弘がいた。

「あ……」

真優美は顔を真っ赤にする。

「ご、ごめんなさい!」

「謝らなくていいよ。」

「ありがとうございます!」

「急いでるの?」

「はい!入学式が!」

敏弘は時計を見る。

「俺も新入生だよ。」

「え?」

「一緒に行こう。」

真優美は目を丸くした。

そして二人は並んで校門へ向かった。

体育館。

入学式が始まる。

新入生たちはクラスごとに整列していた。

敏弘は一組。

真優美も同じ一組だった。

「えっ!?」

「同じクラス!?」

二人は同時に驚く。

担任教師が笑った。

「仲が良さそうだな。」

「ち、違います!」

真優美が慌てる。

クラス中が笑いに包まれた。

敏弘も思わず笑った。

その笑顔を見て真優美は少しだけドキッとする。

(優しそうな人だな……)

昼休み。

自己紹介が始まった。

敏弘の番になる。

「前田敏弘です。よろしくお願いします。」

短い。

だが教室後方から声が上がる。

「前田って、あの前田グループ?」

「マジ?」

「金持ちじゃん!」

一気にざわつく。

敏弘は困ったような表情を浮かべた。

「ただの高校生です。」

しかし周囲の反応は変わらない。

昼休みになると男子たちが集まってくる。

「家にプールある?」

「車何台?」

「お小遣いは?」

質問攻めだった。

敏弘は苦笑するしかない。

一方。

真優美の自己紹介。

「岡倉真優美です。」

そこまでは普通だった。

だが担任が何気なく言った。

「岡倉さんは入学特待生です。」

教室が驚く。

青葉学園の特待生。

学年トップクラスの成績でなければなれない。

「すごい……」

「頭いいんだ。」

真優美は照れくさそうに笑った。

実は彼女は勉強だけが取り柄だった。

貧しくても努力だけは負けたくなかったのである。

放課後。

真優美は急いで帰ろうとしていた。

コンビニのアルバイトがある。

だが校門で敏弘に呼び止められた。

「岡倉さん。」

「前田くん?」

「今から帰り?」

「うん。」

「駅まで一緒にどう?」

真優美は少し驚く。

金持ちの前田と自分。

住む世界が違うと思っていたからだ。

「いいの?」

「もちろん。」

二人は歩き始めた。

春の夕暮れ。

桜が舞う。

しばらくして敏弘が聞いた。

「将来の夢ってある?」

真優美は少し考えた。

「お母さんを楽にしてあげたい。」

敏弘は目を見開く。

「それが夢?」

「うん。」

真優美は笑った。

「だから勉強頑張る。」

その笑顔はとても眩しかった。

敏弘は思う。

(すごいな。)

自分は恵まれた環境に生まれた。

だが彼女は違う。

それでも前を向いている。

気づけば敏弘は彼女に興味を持っていた。

その夜。

豪邸の自室。

敏弘は今日のことを思い出していた。

真優美の笑顔。

真っ直ぐな言葉。

「お母さんを楽にしてあげたい。」

その言葉が頭から離れない。

一方。

古いアパートの一室。

真優美も今日のことを思い出していた。

「前田くん……優しかったな。」

窓の外には満月。

まだ出会ったばかり。

だが運命の歯車は、静かに動き始めていた。

第2話へ続く。

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