98(カトリナ視点)
お兄様に騎士団の針子の仕事を紹介してもらった私は騎士団との顔合わせを経て正式に針子となった。
私の指導係となったソンナさんは無愛想ながらも頼りがいのある人だ。
というかソンナさんを含め針子さん全員が黙々と作業をしている感じでカドーニ王立情報局の雰囲気とはまるで違う。
でも前世で事務員をやっていた経験から黙々と作業するのも好きだ。
その日の夕食時、叔父様に仕事が決まったと報告する。
「そうか。針子の仕事に正式に決めたんだな。」
「だめでしたか?」
「いや、もしあれなら書類仕事を手伝ってもらおうと思っていたんだが…良かった」
「ありがとうございます」
「乾杯しよう」
叔父様が私のグラスにこの国特産のスパイスワインを注いでくれた。
一方、ネリアはパン屋の店員に応募したようだ。
今回初めて別々で働く事になる。
騎士団では専属護衛であるシシーとアランドレも訓練をさせてもらっているので何かあってもすぐ駆けつけられる。
「こういう破けに対しては布を当ててこう縫って」
初日からたくさんの制服が運び込まれ1着1着手縫いしていく。
また汚れた服やタオルなどのクリーニングも私達が行なう。
これは大変な作業だが前世の知識とカトリナ本来のセンスの良さでこなしていく。
「初めてにしてはきれいね。合格」
「ありがとうございます」
無事ソンナさんから太鼓判を押されどんどんやっていく。
初日でもこれだけの量をやるのは大変だと感じた。
日が沈みかけた頃。
「今日はここまででいいよ」
とソンナさんに言われた。
「いいんですか?」
「ああ。お疲れ様」
私は帰りの準備をし「失礼します」と言って作業部屋を出た。
もうそろそろ専属護衛の2人も来るはずだと思い廊下を歩く。
そこからは騎士達がトレーニングしている練習場も見え今も数人の騎士達が汗を流している。
「お〜カトリナちゃん今帰り?」
「フラン隊長!お疲れ様です」
「隊長〜カトリナさんに絡みに行かないでください。カトリナさんは公爵令嬢なんですから失礼のないように」
「エイブリー、絡んでねぇよ。会ったから挨拶しただけだ」
2人は騎士団の中でも厳しい事で知られている第一騎士隊の隊長と副隊長だ。
よく訓練で破けた制服を持ってくるのでそれで仲良くなった。
「いえ。今はただの針子ですから。気にしないで気軽に声かけてください」
第一騎士隊はその名の通り有事の際には真っ先に向かうため実力主義な事でも知られているがその隊の中でもフラン隊長とエイブリー副隊長はずば抜けて強い。
「お帰りですか?」
「はい」
フラン隊長は誰にも話しかけるフレンドリーなタイプでエイブリー副隊長は真面目でしっかり者のタイプ。
タイプは違うが2人は良いコンビだ。
「お嬢様!」
その時、シシーとアランドレがやって来た。
「お待たせして申し訳ございません」
「お〜シシー、アランドレお疲れ様」
「フラン隊長、エイブリー副隊長お疲れ様です」
シシーとアランドレが頭を下げる。
シシーとアランドレは第五騎士隊に所属している。
第五騎士隊は主に災害などが起こった時に派遣される部隊で何もなければ普段は街の警備などに当たる。
「いいえ。そんなに待ってないから大丈夫よ」
「行きましょう。失礼します」
「うん。お疲れ様」
「気をつけて」
2人が見送ってくれる。
そして専属護衛の2人とコクルト国特有の三輪車のような乗り物で帰るため乗り場に向かう。
見るとその乗り物がズラリと並んでいる。
こっちでは馬車よりも主流で安い。
私達が屋敷に到着するとちょうどネリアも帰って来た。
「ネリア、おかえり」
「ただいま帰りました」
「私達も今、帰って来たところなの。今日はどうだった?」
こうしてお互いの仕事中の様子を話すのが最近の日課だ。
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