82(シシー&アランドレ視点)
「私はミール公爵家のミール・フェルソニーだ。あなた達には妹、カトリナの護衛を頼みたい」
その後、今回の雇い主フェルソニー様に会った。
「シシーとアランドレです」
「ああ。さっそくだがこれから時間あるか?」
「はい…?ありますが…」
そこからみっちり言葉遣いや礼儀作法を学ばされた。
「うちは公爵家だ。本人だけではなくその使用人まで注目される。その使用人がなっていないと我が家の品位が疑われる。少なくとも公の場では丁寧な言葉遣いを心がけるように」
「はい」
そしてついに護衛対象であるカトリナ様に出会った。
「初めまして。カトリナ様。シシーと申します」
「初めまして。アランドレと申します」
「初めまして。ミール公爵家長女カトリナと申します。これからよろしくお願いいたします」
カトリナ様は丁寧なカーテンシーで挨拶をしてくれた。
「カトリナお嬢様に忠誠を誓います」
私達はカトリナ様の前に跪いた。
正式にお嬢様の護衛になってからすぐにフェルソニー様が留学しているカドーニ王国へと向かった。
理由はお嬢様が旅に出たいと申し出たからだ。
そうこのお嬢様は今までの貴族令嬢のイメージを覆す規格外のお嬢様だったのである。
私達の貴族令嬢のイメージは大きな屋敷で窓辺に座って本を読んだり刺繍をしたりして過ごし夜には豪華なドレスを着て社交の場に出る、そんな感じだった。
もちろんお嬢様も本を読んだり刺繍をしたり適度に社交の場にも出ているようで普通の令嬢としての面もあった。
しかし公爵家の令嬢が旅に出たいなんて普通は言わないし、ましてや仕事をしたいなんてありえない話だ。
結局、お嬢様はフェルソニー様も働いているカドーニ王立情報局で働く事になった。
私達は毎日交代でお嬢様の護衛をし帰りは2人で護衛する。
私達は一応カドーニ王国の騎士団預かりとなったが護衛が休みの時には宿の庭で訓練したりお嬢様が手伝っている家庭菜園の手伝いをしたりして騎士団に行った事はない。
それもミール公爵家が口利きをしてくれたらしい。
それにミール公爵家の皆様は私達の素性を無理に聞こうとする事はなかった。
あまり詮索して欲しくない雰囲気を感じ取ってくれたのかもしれない。優しい人達だ。
またお嬢様は寄付にも積極的で自分の個人的なお金はもちろん自分で刺繍したものなどを孤児を預かる修道院に寄付したりもしていた。
貴族にとって孤児や弱い立場にある人達は目を背けたいものだ。
現に寄付などの慈善活動は自分のブランドイメージを上げるために仕方なく行なっている人が多くその実情は他の人間に任せっきりで自分は一切関わらないという場合も少なくない。
でもお嬢様は真剣に楽しそうに取り組んでいる。
自分で作ったお菓子を持って定期的に修道院を訪れ子供達と楽しそうに遊びなにか困っている事はないか聞いていた。
お嬢様はカドーニ王国でも同じように自分で稼いだお給金をできる限り寄付したり休みの日に作った刺繍をチャリティーバザーに出したりしていた。
カドーニ王国でも色々な目に遭ったがその中で最も衝撃だったのは女性の傷害事件と平民街でお嬢様が行方不明になった時だ。
お嬢様は時々私達の知らないものを本で読んだと教えてくれる事があった。
でも事件が起こるのは大抵そんな時。
女性の傷害事件もお嬢様の歓迎会だと言って本で読んだという東の国の料理、和食を食べていた時だった。
私達は花街でそんな場面を見かける事はあったが目の前で見たのは初めてだったしお嬢様も初めての事に相当ショックを受けていた。
その後、私達を含めたあの場にいた全員が話を聞かれた。
私達2人は別々で話を聞かれ特に身分に関しては慎重だった。
「あなた方はどういう経緯で専属護衛に?」
当たり前だ。ミール公爵家にも屋敷付きの護衛がいるらしいがそのほとんどがちゃんとした家から出た者達だそうでなぜ縁もゆかりもない貧しい家で育った私達が専属護衛になったのかと思うだろう。
別に隠す事でもないので今までの経緯を全て説明した。
その後の調査でコクルト国の大貴族が関わっていると分かったらしいが詳しくは知らない。
そしてお嬢様が行方不明になったのもお嬢様がズボンという服が欲しいと平民街へ向かった時だった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。




