75(フェルソニー視点)
事態が動いたのはその翌日の事だった。
女性の意識が回復したとの連絡が入ったのだ。
ロラン達が話を聞きに行くようだがひとまず目が覚めて良かったと思いながら仕事をしているとノックの音がした。
「ミール・フェルソニーさんですね?」
「はい?」
フルネームで呼ばれるのは久しぶりなので驚いてしまった。
「カドーニ王国警備隊です。先日の女性傷害事件についてお話を聞かせてください」
「分かりました」
「こちらへ」
少し驚きながらも頷くと警備隊の男2人に別室に連れて行かれた。
「さっそくですが先日の件についていくつか質問させてください。まずあなたの名前はミール・フェルソニーさんで間違いありませんか?」
「はい」
「では当日の状況をお聞かせください」
「あの日は僕の妹であるカトリナ達の歓迎会で和食という異国の料理を公園で食べていました」
「ミール・カトリナさんですね?」
「そうです。会が終わろうかという頃、女性の悲鳴が聞こえてきてそっちの方へ向かいました」
「なぜ警備隊などを呼ばずにすぐにそっちへ行ったんですか?」
「ただ事ではないと感じたしあの時、おぼろげですが誰かの刺されたという声が聞こえた気がします」
「その人の姿は見ていますか?」
「いいえ。妹の護衛にも周辺を探させましたが特に怪しい人物はいなかったようです」
「そうですか。他に何かありますか?」
「いいえ。特には」
「分かりました。ありがとうございます。その他なにか思い出した事がありましたらご連絡ください」
「はい」
それからもいくつか質問されたのち聞き取りは終了した。
この件があってから昼食はなるべく大勢で摂るようになった。
皆がカトリナ達の作った弁当を興味津々で見ている。
「美味しそうですね、とても」
「おひとついかがですか?」
カトリナがおかずを1つ渡す。
「美味しいです。ありがとうございます」
「皆さんは普段はどうしているのですか?」
「局内の食堂で食べる事が多いかな」
「そうですね」
「そうなんですね」
その食事の最中、カトリナが服が欲しいと話し出した。
「ちょっとお聞きしたいんですが、この国にズボンはありますか?」
「ズボンですか…?」
「はい」
「それはなんだい?」
僕もズボンは知らなかった。
「服なんですけど。今度の休日に服屋に行ってみてみようと思って」
「いや、聞いた事ないですね」
「そうですか…ありがとうございます。すみません」
「もし良かったら一緒に行こうか?」
「確かに男性ものに近いからお兄様について来てもらった方がいいかもしれません」
「男性ものに!?男性ものを着るのかい?」
僕は驚いてしまった。
今までカトリナが男性ものを着たいなんて言った事なかったからだ。
「そっちの方が動きやすいのですよ」
「でもやっぱり女性はスカートが定番ですよね」
「そうなんですけど家庭菜園のお世話をする時などは歩きづらくて」
「ああそうですよね」
「分かった。じゃあついて行くよ。もしなかったら仕立て屋に行こう」
そして次の休日に街へ出る事が決まった。
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