70(フェルソニー視点)
この店はカドーニ王国の名物ではミベイルパイの名店だった。
事前に予約をしなければ入れないほどの人気店でその味も折り紙付きだ。
店内に入るとすぐに店員に席へと案内される。
「本当に人気なんですね」
満席の店内を見てカトリナが言う。
「ここは国で1番有名な店なんだ」
「お腹空いてたから嬉しい。ミベイルパイを食べれるなんて」
「そんなに美味しいんですか?」
「うん」
ミベイルパイとは野菜と肉を柔らかくなるまでビールで煮詰めソースを絡めてパイ生地で包んだものだ。
「今日はお前の奢りか?奢りだよな?」
「ライド、はしたないですよ」
ロランがライドを注意する。
「ああ。今日は僕の奢りだからたくさん食べてね。カトリナ」
「よろしいのですか?」
「ああ。今日はカドーニ王国最初の日だからね」
「ありがとうございます。お兄様」
「やった。ご馳走様です」
「ライド、お前は食べ過ぎるなよ」
ライドはこの中では1番の大食いだ。
「はいはーい」
「ライドさんは大食いなんですか?」
カトリナが聞くと
「この中だと1番食べます」
ロランが答える。
「お待たせしました」
その時、目の前に大皿に乗ったミベイルパイが運ばれてきた。
「来た!」
ライドが目を輝かせる。
皆に切り分けるためパイを割ると湯気と共に美味しそうな肉と野菜が姿を現し良い匂いが立ち込める。
僕も食べる機会がいつもあるわけではないので久しぶりだ。
「どう?」
「とても美味しいです」
「良かった。たくさん食べてね」
「この味はなんなのでしょう?」
「なんでも秘伝のソースで味付けしてるらしいよ」
「あっそういえばカトリナちゃんはなにかやりたい事あるの?」
皆で談笑していたらふとライドが言った。
「はい。なにかお仕事をしてみたいなと思ってます」
そこで移動中の会話を思い出した。
カトリナは働いてお金を稼いでみたいと言っていた。
「仕事?」
「なにか仕事を探してみようかって話してた所なんだ」
2人が怪訝な表情をするので僕もフォローをする。
僕だって最初に話を聞いた時は驚いた。
公爵令嬢が働くなんて聞いた事がなかったから。
でもその話をするカトリナの目を見たら今までにないくらい真剣な目をしていた。
「そういえば情報局の事務員が人手不足だって聞いたな」
「事務員ってどんな仕事をするんですか?」
「う〜ん。受付だったり電話対応だったり他にも多岐に渡ります。事務全般って感じで」
「面白そうです。私はこの国に来るまで仕事という仕事をやった事が無くて…やりたくてウズウズしていたんです」
しかしすぐにライドが情報局の仕事を提案した事、カトリナがそれに乗り気だった事に動揺した。
だって情報局は男ばかりだ。
「待て!情報局はダメだ!」
「なぜですか?」
「男が多すぎる。カトリナを口説いてくる奴がいるはずだ。絶対」
働いているのを想像しただけで不安になる。
「じゃあ俺の知り合いのパン屋にする?」
「パン屋ですか?」
「1人でやってたんだけどきつくなってきたから人を雇いたいって募集かけてるみたいなんだけどなかなか集まらないみたいで」
「だめだ!男性客がカトリナを口説いたらどうする?」
カトリナは可愛すぎる。絶対男は口説くに決まっている。
「そんな事言ってたらどこもだめじゃねぇか」
「そうです。お兄様は黙っててください」
ライドやカトリナにも呆れられたが気にしない。
「でもそういう意味で言ったら情報局がいいんじゃないかな?」
「なんで?」
「だってフェルソニーが見守っていれるじゃん」
「確かに。他の所で働くよりも近くで見守れる。他の奴が近づいても僕が追い払う!」
「ネリアさんは家事が得意なんですよね?」
「得意というわけではありませんが全般的にできます」
「それなら清掃員として情報局で働いてくれませんか?いえ、うちの部署の専属清掃員として。どうかお願いします」
そして結局2人は情報局で働く事が決まった。
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