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そして迎えた舞踏会当日。
私のエスコート役はライドさんが勤めてくれた。
ライドさんがせっかくの舞踏会なのだから踊ろうと言ってくれた。
「俺達も踊ろうよ」
すでにお嬢様はフェルソニー様と踊っている。
「私は踊りは分かりませんから」
「俺に体預けてくれればいいから」
とホールの中央に引っ張られた。
今日初めて聞いたのがライドさんは田舎の男爵家の次男坊だそうだ。
男爵家と言ってもほぼ平民みたいな生活だし家督を継ぐ予定もないから好きにやっていると言っていた。
私にとっては爵位を持っているだけだけですごいと思う。
さらにダンスも上手くてさっきから体を預けて基本のステップをなんとなく踏んでいるだけなのに様になっている。
きっとライドさんがそう見えるように頑張ってくれているのだろう。
「あれ気になる?」
ぼーっとしていた私にライドさんが小声で囁く。
「あっすみません」
と集中し直した私に
「いや、大丈夫だよ。あれはコクルト国の正装だね」
と教えてくれた。
本当はその事を考えていたわけではないけど目線がそっちに向いていたから教えてくれたのだろう。
確かにコクルト国の正装は一風変わっていた。
「コクルト国では男性でもワンピースを着るんだよ」
その人は明らかに男性だったがタイトなワンピースを着ていた。
「そうなんですね」
「コクルト国には特有の文化があるからね。カドーニ出身の俺からしてみたら興味深いものばかりだよ。ダンスが終わったら挨拶してみようか?」
「そんな!私なんかが…」
「大丈夫だよ。今夜はそんなに気負わなくていい舞踏会だし俺がいるし」
「でも…」
その時、音楽が終わった。
「とりあえずカトリナちゃん達の所に戻ろう」
「はい」
すでに戻っていたお嬢様の元へと向かう。
「楽しかった?」
「はい」
途端、お嬢様に聞かれたので素直に答える。
「良かった。俺も楽しかったよ。初めてとは思えないくらい上手だった」
「いやいや…私はステップを踏んでいただけですから。ライドさんのリードのおかげです。ありがとうございました」
ライドさんが満面の笑みを向けてくるので思わず早口になってしまった。
「ふっ」
そんな私を見てお嬢様は小さく笑う。
「あっそうだ。あそこのコクルト人に挨拶して来ようと思うんだけどいいかな?」
ライドさんがフェルソニー様に聞く。
「待って。僕も行くよ。いいかな?」
「ええ」
するとお嬢様にも確認を取り結局皆で行く事になった。
「お話し中、失礼します。ご挨拶させてください。カドーニ王立情報局のライドとフェルソニーと申します。こちらは僕の妹のカトリナ、その侍女のネリアです」
お嬢様は丁寧なカーテンシー、私は深く礼をした。
「初めまして。コクルト国大使のエルマと申します」
その男性は跪いて私達の手を取りおでこをくっつけた。
「きゃっ」
お嬢様が驚いて声をあげる。
「すみません。妹はコクルト国の作法には不慣れなもので」
フェルソニー様がフォローする。
「失礼いたしました。これはコクルトの伝統的な挨拶なのです」
「いえ、こちらこそ失礼いたしました」
お嬢様は軽く頭を下げた。
それから男性陣は色々話しているが私達は微笑むだけで会話が終了した。
「今度ぜひ皆様でコクルト国へお越しください。では」
「ありがとうございます」
と大使が離れていった途端
「僕達は急用ができたからお前達はもう帰りなさい。馬車も呼ぶしあとは護衛達が守ってくれるから心配しないで」
「なぜですか?」
お嬢様は突然の事に動揺する。
「ネリアちゃんもごめんね」
「いえ」
「ネリア、カトリナを頼む」
そう言われた私はただならぬ雰囲気を感じ動揺するお嬢様を宥めながらすでに止まっている馬車に乗って宿へと戻った。
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