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この国には公式に平民街、貴族街など明確な区別があるわけではないので平民でも貴族でもどんな人でも行くことができる。
ただ地元民の感覚として高級店ばかりが並んでいる街を貴族街、貴族街よりも治安が悪い地区を平民街と呼んでいると聞いた。
今まで行くのはいわゆる貴族街ばかりだった。
「着きました」
実際行ってみると確かに貴族街とは少し違った。
人もいるにはいるが貴族街に比べたら少ないし並んでいる商品も華やかなものが多い高級店とは違いシンプルなものが多い。
「まずはこのお店に入ってみようか」
ウィンドウに並んでいる商品を見てフェルソニー様が言った。
「はい」
「いらっしゃい」
「すまないのだけどここにズボンはあるかな?」
もしもの事があったらとお店とのやり取りは全てフェルソニー様がやってくれた。
「ズボン…ですか?」
「ああ」
「聞いた事はありませんね」
「そうか。ありがとう」
「はい。またお越しください」
それからも何店舗か回ったがどこにもなく気づけば昼になっていた。
「ないみたいだね。じゃあやっぱり仕立て屋に行ってみよう」
「もう昼ですから何か食べましょう」
「そうだね」
「屋台がたくさん出ていますね。食べたいです」
確かに貴族街より屋台がたくさん出ていた。
むしろレストランがない。
「そうしようか。何がいい?」
「見て回りたいです」
全員で見て回り好きなものを買っていく。
「美味しいですね」
「そうだね」
「普段はなかなか食べないですから」
屋台のものは普段、なかなか出会えないものが多かった。
皆で楽しく食べた後。
「じゃあこれ片付けてくるよ」
皆が大体食べ終わったのを見てフェルソニー様が動いて空の容器を片付ける。
その間、私達は少し残っていたものを口に入れた。
「これも片付けてきます」
アランドレが空の容器を受け取って片付けに行く。
「ありがとう」
お嬢様はそう言い任せていた。
2人で皆を待っているとお嬢様が突然席を立ちどこかへ行ってしまった。
「お嬢様!?」
「ごめん。ちょっとだけ」
シシーもフェルソニー様に用事を言いつけられて今は席を離れている。
私は急いでお嬢様の後をついて行った。
するとそこには年老いたおばあさんが尻餅をついて痛そうにしていた。
「大丈夫ですか!?」
お嬢様はそれに真っ先に気づいて助けたのだった。
そこは建物の影なのにどうして分かったんだろうと思いながらお嬢様と一緒に助ける。
「イッタタ…」
おばあさんは普通に歩けないようで
「少し触らせてください」
お嬢様が遠慮気味におばあさんの足を触った。
「痛いですか?」
「痛い!」
「あっすみません。これは?」
「それも痛い」
「これはもしかしたら骨が折れてるかもしれません。馬車を呼びますから医者に行ってください」
「そんな医者に行くお金なんてないから大丈夫だよ。ありがとう」
と言って行こうとする。
それを見て
「ちょっと待ってください。これで足りると思います」
お嬢様は腰につけていた巾着から何枚かのコインを取り出す。
「そんなのもらえない」
おばあさんは遠慮するが
「骨折を甘く見てはいけません」
とお嬢様が説得していたその時。
「よぉ〜お嬢ちゃん随分金持ってるんだなぁ」
ガラの悪そうな男達が近づいて来た。
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