56(カトリナ視点)
そこから皆で宿屋に向かうと明るい女主人が出迎えてくれた。
この人がロランさんの叔母さんかと思いながら挨拶をする。
「初めまして。お兄様がお世話になっております。妹のカトリナと申します。こちらは侍女のネリアと護衛のシシー、アランドレです」
「初めまして。ロランの叔母でこの宿屋をやっているカミィです。泊まるのはこの4人だけかい?」
「はい」
「3ヶ月ね」
「もしかしたら延びるかもしれないのですが大丈夫ですか?」
「ああ。大丈夫だよ。今のところたくさん部屋はあるしもしどうしても無理になったら知り合いの宿を紹介する事もできるからね」
叔母さんは快くOKしてくれた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「でもう1つお願いがあるんだけど厨房を貸してくれないかな?」
「厨房を?」
「私、お菓子作りが好きなんです。それでできればここでも作れたらと思っていて。お菓子の他にも料理もしたいんです。だめでしょうか?」
「客にご飯を出す時間以外ならいつでも使っていいわよ。その代わり私にも食べさせて」
「はい!ありがとうございます」
ロランさんのおかげで厨房も使える事になった。
和食の他にもこの国のお菓子や料理をたくさん作りたい。
宿のお手伝いをしているというルナリアさんにも挨拶をした。
見れば明らかに私達より年下で子供だと分かる。
その後お兄様やロランさん、ライドさんから明日情報局に持参するための履歴書の書き方を教えてもらった。
履歴書を最後に書いたのはもう何十年も前だ。
書き方などとっくに忘れている。
この世界の履歴書もそこまで書き方が違うわけではなかった。
帰りたくないとごねるお兄様をなだめてロランさん達に丁寧にお礼をし見送った。
その日は早めに寝て迎えた翌日。
お兄様と共に面接に向かうとすでに採用担当の職員さんが待っていた。
男女2人だったが私の担当はジム・ケイリーという眼鏡をかけた女性だった。
事務員の採用担当がジム・ケイリーとはダジャレみたいで面白い。
「こちらへどうぞ」
ネリアとは別室で面談を受ける。
「必要な書類は持って来ましたか?」
「はい」
私は履歴書を差し出す。
それを受け取り静かに眺めるといくつか質問をされた。
「カトリナさんはミール公爵家の御息女でフェルソニーさんの妹君。合ってますか?」
「はい。そうです」
「今までに事務や領地の執務経験はありますか?」
「実際にやるのは初めてですが父などから話はよく聞いていますのでできると思います」
前の世界の事は言えないので申し訳ないと思いながらも父を使い少しだけ嘘をついた。
「そうですか。分かりました」
それからも事細かに話を聞かれ、長いと思いながら答えていた。
「質問は以上です。では明日からよろしくお願いします」
「それは採用という事ですか?」
「はい」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
私は思いっきり頭を下げた。
全て終わった頃にはネリアはいなくてロランさんの部署に行っていると聞いてそっちへ向かった。
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