44
「美味しいです!お肉も野菜もほろほろで」
「ビールで煮込んでるからこんなに柔らかくなるんだ」
ライドさんがみんなに教えてくれた。
「ビールで?」
「うん。ビールあんまり馴染みない?」
「いえ。ただビールを料理に使う事はあまりないので」
「そうなのか。ビールの炭酸で肉が柔らかくなるんだ」
「そうなんですね。世界にはまだまだ知らない事ばかりです」
「分からない事があったら聞いてね。なんでも教えるから」
「ありがとうございます。皆さんこれからよろしくお願いします」
「はい。こちらこそお願いします」
「でもみんなで食べてるから美味しいのもあるかもしれませんね。ねっ?」
「えっ?」
今までお嬢様の隣で黙々と食べていた私は突然話しかけられて驚いた。
「そうですね。みんなで食べると美味しさ2倍って言いますし」
「あっそういえばカトリナちゃんはなにかやりたい事あるの?」
「はい。なにかお仕事をしてみたいなと思ってます」
「仕事?」
怪訝そうな目線を向ける。
いくら外国であったとしても公爵令嬢が仕事をするというのは聞いた事がないのだろう。
「なにか仕事を探してみようかって話してた所なんだ」
フェルソニー様が付け足す。
「そういえば情報局の事務員が人手不足だって聞いたな」
「事務員ってどんな仕事をするんですか?」
「う〜ん。受付だったり電話対応だったり他にも多岐に渡ります。事務全般って感じで」
「面白そうです。私はこの国に来るまで仕事という仕事をやった事が無くて…やりたくてウズウズしていたんです」
確かに前の世界でばぁばは小さな会社で事務員をしていた。
普段からなにかしていないと落ち着かないと言っていた事もある。
だからこの世界に来た後もお菓子作りや花の世話などで動いている事が多かった。
そんなお嬢様にとってまたとない仕事だろう。
しかし。
「待て!情報局はダメだ!」
「なぜですか?」
「男が多すぎる。カトリナを口説いてくる奴がいるはずだ。絶対」
「じゃあ俺の知り合いのパン屋にする?」
「パン屋ですか?」
「1人でやってたんだけどきつくなってきたから人を雇いたいって募集かけてるみたいなんだけどなかなか集まらないみたいで」
「だめだ!男性客がカトリナを口説いたらどうする?」
「そんな事言ってたらどこもだめじゃねぇか」
「そうです。お兄様は黙っててください」
「でもそういう意味で言ったら情報局がいいんじゃないかな?」
「なんで?」
「だってフェルソニーが見守っていれるじゃん」
「確かに。他の所で働くよりも近くで見守れる。他の奴が近づいても僕が追い払う!」
「お兄様、落ち着いてください」
「本当に人手が足りないみたいだからネリアちゃんも一緒にやったら?」
「へっ?」
思わぬ提案にまぬけな声が出る。
「だってカトリナちゃんが働いてる間どうするの?」
「それは…部屋の掃除をしたり洗濯をしたり色々やる事はあります」
「ネリアさんは家事が得意なんですよね?」
「得意というわけではありませんが全般的にできます」
「それなら清掃員として情報局で働いてくれませんか?いえ、うちの部署の専属清掃員として。どうかお願いします」
「へっ?」
再びの思わぬ提案に素っ頓狂な顔をしてしまった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。




