38(フェルソニー視点)
「ちなみに行きたい国とか決まってるの?」
「特に決まっておりませんが、食べ物の美味しい国がいいですわ」
楽しそうに話す妹を見ていて思った。
(こんなに表情豊かだっただろうか?)
僕は妹の希望と治安などを考慮してその国の本を選び取っていく。
そして席に座ってその本を読んでいるカトリナに国の説明をする。
僕の話を真剣に聞くカトリナを見て懐かしくなった。
昔はよく僕の話を一生懸命聞いてくれていた。
僕が各国を回るようになってからはそんな機会はなくなってしまったけれど。
感傷に浸っているといきなりそう質問される。
「お兄様はなぜそんなに色々な国に留学なさっているのですか?」
「えっ?」
「お母様から色々な国を転々としていると聞きました。手紙もあまり寄越さないと」
「カトリナと同じだよ。僕も自由になって今まで見た事ないものを見たかった。最初は両親に跡取りなのにって反対されたけどなんだかんだ僕達には甘いから諦めたみたいだね。手紙を書かないのは単に文章を書くのが苦手なんだ。実際に会って話す方が好き」
特命の事は言わなかったがこれも本心だ。
「そうなんですね」
その後、カトリナが読み終えた本を戻すためカトリナ付きのメイドのネリアちゃんにもついて来てもらって一緒にしまう。
そして隣に並んだ時、そっと声をかける。
「カトリナは随分君に懐いてるみたいだね」
「そうでしょうか?」
「昔のカトリナはね、どこか遠慮してるようで自分の気持ちをあまり言わなかった。雰囲気も冷たい感じだったけど今のカトリナは表情が豊かになったし1番君に心を許している気がする」
「そう思って頂けているのだとたら嬉しい限りです」
「これからもよろしく頼むよ。たとえどんな人間だとしても我が愛しの妹と大切な使用人には変わりないからね」
少し鎌をかけてみた。でも半分以上は冗談だった。
それなのに分かりやすく動揺していたので安心させるように耳元で囁いて先に戻る。
「安心して」
それから僕馴染みの店で食事を楽しんだ。
ここは貴族、庶民関係なく人気の店で色々な国の料理が食べられて味も美味しい。
妹達を家に送り届けた後、すぐに僕はまた馬車に乗り王宮へと向かった。
理由は殿下への報告とカトリナの専属護衛を見繕うためだ。
いざ到着するともう顔見知りの殿下の侍従がすんなり案内してくれた。
「失礼します」
挨拶をすると案の定仕事をしている。
殿下は仕事人間なのだ。
「久しぶりだな」
「ええ。誰かさんの無茶振りのせいでなかなかこちらには帰って来れないものですから」
と嫌味たっぷりに言っても気にしていない様子で
「いつもすまないな。でもお前が1番適任なんだ」
とケロッとしているのにはちょっとイラッとする時もある。
殿下と僕は幼い頃からの仲だ。
お互い大体の事は分かっている。
「それで報告は?」
まずはカドーニ王国についての報告をする。
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