37(フェルソニー視点)
心ばかりのノックをしてすぐに部屋に入る。
「失礼します」
「フェルソニー!?」
突然、入って来た僕を見て父は驚いて立ち上がる。
「お前、ノックくらいしろ!それと手紙くらい寄越せ」
「しましたが?それに父上は僕が手紙を書かない理由ご存知でしょう?」
「せめて入室の許可を得てから入って来い。お前の事情は分かっているがそれでも1通くらいは出せるだろう」
家族の中で唯一、父上だけは僕が特命を受けている事を知っている。
元々筆まめではない僕は頻繁に殿下へ報告の手紙を書かなければならないのでそれだけで手一杯になってしまう。
また色々な国を飛び回っているので移動していて受け取れない場合もある。
「それよりカトリナが旅に出たいと申し出たそうですね」
「なぜそれを?」
「先ほど使用人から聞きました」
「私も今までカトリナには苦しい思いをさせてきたから望みはできる限り叶えてやりたいが…」
父は悩んでいるようだった。
「では今私がいるカドーニ王国へ来るというのはいかがでしょうか?」
「カドーニ王国に?」
「はい。それとカトリナには専属の護衛はいませんよね?」
「ああ」
「これを機に専属の護衛を雇い旅の様子などを逐一報告するようにすれば良いのではありませんか?」
「しかし…そんな簡単に見つかるものではないだろう」
「そこは私にお任せください。殿下への報告のついでに腕利きの者がいないか聞いてみます」
「王家に?」
「はい。あっ父上が心配なさるような事にはならないようにしますのでご安心ください。あのバカ王子が僕の妹に傷をつけたと言えばやらざるを得ないでしょうから」
父は僕が王家にまた無理を言うのではないかと心配している。
それは今まで破天荒なお願いをした事も少なくなかったからだ。
「お前のそういう所が本当に怖いよ」
僕の言葉と表情を見て絶対にやらせるという意思を感じたのか頭を抱えている。
「くれぐれも王族の方々にご迷惑をおかけする事は絶対にだめだからな」
と念押しされた。
「もちろんです」
頭を下げて意気揚々と部屋を出た。
ふと窓の外を見ると馬車が止まっていてカトリナの姿も見えたので走って追いかけた。
「どこ行くの?」
「これから王立図書館に行くんです」
声をかけるといきなり現れた僕に驚いていた。
「なんで?」
「旅に出るための準備です」
「えーせっかくこれからカトリナとゆっくりお茶しようと思ったのに」
久しぶりにお茶でもしながら話したかった。
「それは魅力的なお誘いですが、また今度」
「じゃあ僕も行く。エスコートしますよ。お嬢さん」
ほぼ無理やり手を差し出す。
カトリナは仕方なさそうに手を取った。
「お父様達にはご挨拶したのですか?」
「したよ。すごく驚いてた」
「そうでしょうね」
「それより外国の事なら僕に聞いた方が早いのに」
「お兄様はお忙しいでしょう」
その言葉に少し寂しさを覚えながら続ける。
「全然。妹のためなら時間作るよ」
そんなやり取りをしながら王立図書館に到着した。
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