36(フェルソニー視点)
僕はミール・フェルソニー。ミール公爵家の長男だ。
今、僕はカドーニ王国にいる。
表向きは留学という事になっているが、真の目的は他国の情報収集だ。
王太子殿下からの特命で各国を飛び回っている。
そんな僕は妹が倒れて婚約破棄されたと聞いて急いで実家に戻る馬車へと乗り込んだ。
手紙には倒れた際に記憶喪失にもなったと書かれていた。
大丈夫なのかという心配と不安と数年ぶりに実家へ向かう緊張とでずっとソワソワドキドキしている。
そしていざ到着すると顔馴染みの執事が驚いているのをよそに妹の場所を聞きすぐに向かった。
数年ぶりの妹は前に見た時よりも少し背が伸びていて元気そうに使用人達と花の世話をしていた。
まず一安心する。
久しぶりに会えて感極まる気持ちと驚かせたいという少しのイタズラ心がせめぎ合った結果、後ろから抱きつくことを思いついた。
「我が愛しの妹よ〜元気にしてたか?」
「ちょっと?なにしてるんですか?」
意外にも妹の反応は冷静なものだった。
妹は驚くとすぐに大声を上げるはずなのに。
まぁでもこれも数年ぶりだし前よりも大人になって変わったのかもしれない。
「あれ?愛しのお兄様のこと忘れちゃった?」
「お兄様?」
「ああ記憶喪失になったんだってね。じゃあ改めてミール・フェルソニー。君のお兄様だよ。みんなに内緒でちょっと間、帰国したんだ」
困惑している妹に改めて自己紹介をする。
「良いのですか?」
そもそも妹は僕の事を気にするタイプではなかった。
帰って来ても良し、帰って来なくても良しという感じだった。
「う〜ん。まぁ大丈夫。それよりお父様に旅に出たいって言ったんだって?」
「なんでそれを?」
本当はさっき執事から聞いたのだがそれでは面白くないのでそう言った。
「お兄様をあまり舐めないで。妹のことはなんでも知ってるよ」
「ふふふっ。あははっ」
途端、思い出し笑いをしてしまった。
「いや、ふふっ。ごめん。王子婚約破棄されて数日で今度は旅に出たいってカトリナもかなり大胆だね。面白い。ふははっ」
さすが僕の妹というべきだろう。自由でぶっ飛んでいる所がある。
「お兄様、そんなに笑わないでくださいませ」
「ごめんごめん。で?どうなったの?」
「お父様は数日考えさせてくれと…」
しばらく考えた後、決心する。
(こんな真剣な目は久しぶりだ。ここは一つ、愛する妹のために僕が父上に相談してみるかな…)
「そっか。カトリナは許しが欲しいんだよね?」
「当たり前です」
「分かった。ちょっと待ってて」
改めて意思を確認したのち父上の執務室に向かった。
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