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翌日から私は護身術の習得とお嬢様の荷造り、普段のメイドの仕事と忙しい日々を過ごした。
護身術は屋敷付きの警備兵兼護衛のパトリックに習っていた。
考え方によっては不用心だと思うかもしれないが、これまでお嬢様に専属の護衛はいなかった。
私達が転生する前はあまり出歩かなかったようだし外出する場所も大体決まっていたので護衛はパトリックさん達が担ってくれていた。
「護身術の目的は相手を倒す事ではありません。もしもの時、相手に隙を作りお嬢様と安全に逃げる事です」
「はい」
「しかし今回はある程度攻撃性を持たせた技もお教えします。女性が本気で男に押さえつけられたらやはり力ではとても敵いませんから。余計な力を入れず相手の力や力の向きを利用するんです」
それからみっちり数時間、練習する。
「今日はここまでにしましょうか。ネリアさん、なかなか筋がいいですね」
「そうですか?」
「ええ。初めてでここまでできる人はなかなかいません」
「ありがとうございます」
以前の世界で少しの間だが武道を習っていたからそれが生きたのだろうと思う。
それからお嬢様の荷造りを手伝う。
「これは置いてくでしょ…これは持っていく」
「お嬢様、こちらはどういたしましょうか?」
「あーこれは…う〜ん…なるべく物は減らしておきたいから置いて行きましょう。あと何点か売ろうと思うの」
「えっ?」
「ドレスもアクセサリーも素敵だけど多すぎて私には持て余すし旅のために少しでもお金を持っておきたいから」
「しかし…」
その時。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
旦那様の執事が呼びに来た。
「失礼します」
私達が旦那様の執務室に入るとフェルソニー様と見知らぬ男女が立っていた。
「おおっ。来たか」
「お呼びでしょうか?」
「護衛が決まった。2人とも腕利きだよ」
すると先に女性の方が1歩前に出て挨拶した。
「初めまして。カトリナ様。シシーと申します」
さらに男性も前で出て挨拶する。
「初めまして。アランドレと申します」
「初めまして。ミール公爵家長女カトリナと申します。これからよろしくお願いいたします」
お嬢様は綺麗なカーテンシーで応える。
「でもよくこんな短期間で見つけられましたね?」
「婚約破棄の際に腕利きの者がいないか陛下にも探して頂いたんだよ。なんでもするって言うからね。ちょうど専属の護衛をつけようと思ってもいたから」
「そうなのですね。ありがとうございます」
「改めて2人ともよろしく頼む」
「はい。カトリナお嬢様に忠誠を誓います」
2人はお嬢様の目の前で跪いた。
前の世界でこのポーズはプロポーズでしか見たことがなかった私は内心少し興奮していた。
やっと異世界っぽい雰囲気を感じたからだ。
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