208
それから私達は具体的な事を話した。
量産も納期もなしでその時、できたものをその都度買い付けるという形で契約を結んだ。
品物はメイナーさんの屋敷に行った際やお嬢様とサロンに行った際に渡す事になった。
今日も品物をメイナーさんの所に持って行く日だ。
数量は時が経つにつれて少しずつ増えていてだんだんと腕も上がっているような気がする。
チャリティーの刺繍も続けているので時間を見つけて刺繍も編み物もやっていたが、明日からお嬢様が実習に行くのでできる時間が増えると思う。
これを機に集中して作ろうと思う私であった。
「こんにちは。商品を届けに参りました」
「こちらへどうぞ」
「ネリアちゃん、いらっしゃい」
「品物をお持ちしました」
「はい。確かにお預かりしました。今回分はまたサロンでの売れ行きも含めて次回お支払いするとして、これが前回の分よ」
と渡された封筒には予想外の金額が入っていた。
「これ、間違っていませんか?」
「えっ?間違ってないわよ。冬だから防寒具人気なのよ。それに小物も結構売れたから」
実はメイナーさんの提案でマフラーだけではなく小物も作ってみる事にしたのだ。
最初は売れるか不安だったが予想以上に売れたようだ。
「これはあなたの仕事に対する正当な対価よ。気は遣わないで」
「ありがとうございます。頂きます」
「はい」
私は恐縮しながら受け取った。
「さてお茶にしましょうか」
最近は商品を納品後、お茶をするのが定番だ。
「大変じゃない?」
メイナーさんは毎回、そう聞いてくれる。
「大丈夫です。お嬢様が明日から実習なので集中して作るつもりです」
「カトリナちゃん、実習なの?」
「はい。薬草を採集してその場で色々な調合を試すみたいです」
「そう。面白そうね。私ももう一度学生をやりたいわ」
「メイナーさんも学生だったんですか?」
メイナーさんは頷き続ける。
「そうよ。考えてみればあの頃が1番自由だったわ」
メイナーさんはしみじみと語る。
「そうなんですね」
「学園を卒業してからはたくさんの事があってまぁ幸せな事もあったけど大変だった」
私はメイナーさんの話に黙って耳を傾ける。
「だからあなた達が羨ましく感じる時もあるの。若くてパワーがあって」
「そんな事ないと思いますけど」
「いいえ。ネリアちゃんだってカトリナちゃんだって新しい事にどんどん挑戦してるじゃない。私にはもうそんなパワーはないわ」
「そうですかね?私にはメイナーさんがすごくパワフルに見えますよ」
「あら!嬉しいわ。若い人にそんな風に見てもらえるなんて」
「ふふっ」
そんな事を話しながら一緒にお茶を飲んで過ごした。
「また次回もよろしくね。ネリアちゃんの編み物とても人気だから」
「いえいえ。そんな…こちらこそよろしくお願いします」
そろそろ帰宅時間となり玄関先で話していると
「ネリアさん!来てたんですね」
とシリルさんが現れた。
「シリルさん、こんにちは」
「納品に来てくれたのよ。でももう私とお茶して帰らなきゃいけない時間だからそんなに話せないわよ」
とメイナーさんがシリルさんに言う。
「分かってますよ。挨拶くらいは良いでしょう?それに2人でお茶したなら呼んでくれても良かったのに」
「女子トークよ。それにあなた忙しそうだったじゃない」
「でもお茶する時間くらいはあります」
「ぷっ確かにそうね。ごめんなさい。これから誘うわ」
と少し面白そうにしながらメイナーさんが言った。
シリルさんは不満そうな恥ずかしそうななんともいえない表情で「はい…」と言った。
ここまでお読み頂きありがとうございます。




