148(カトリナ視点)
私は帰りの馬車の中で決意した。
一刻も早くヘルムード学院に入学する事を。
そのためにやるべき事をやる。
そう決めてから私は毎日、お父様に手紙を出した。
すると最初は断固反対だったお父様もだんだんと態度を軟化してくれた。
それと同時並行で勉強にも力を入れる。
1分1秒でも惜しく寝る時間や食事の時間を削って勉強した。
本当は悪い事だと分かっていたが、私の心にはそれだけ焦りがあった。
(早くヘルムードに行かなければ…)
心の中はそれだけだった。
私も自分がどんどん荒んでいくのを感じていたある日。
ネリアに注意された。
私を心配して言ってくれていると分かっているのにその時は私も余裕がなくて強い言葉を返してしまう。
それからネリアに自分の思いをぶちまけてしまった。
私の気持ちを全て受け止めてくれたネリアは静かに抱きしめてくれる。
焦らなくて良いと、1人じゃないと言ってくれてだいぶ気持ちが楽になった。
それからもネリアは私の欲しい言葉をかけてくれる。
「大丈夫ですよ、お嬢様。お嬢様が今でも努力されております。その努力は裏切りません」
そのおかげもあって食事も睡眠もしっかりと取りながら勉強に取り組む事ができている。
そしてこれを機にさらに勉強へ集中するため仕事も辞めた。
手紙でしかやり取りできないのが残念だが、このような状況なので仕方がない。
それでも無事、退職金らしきものをもらえてありがたい。
これはシスカ公国で使うつもりだ。
一方、叔父様も私のために動いてくれていてシスカ公国で住む場所を見つけてくれた。
ヘルムード学院の寮に住む事もできるが私はできる限りネリアと専属護衛の2人にはついて来て欲しいと思っている。
もちろん本人の意思を尊重するがもし全員がついて来てくれるなら寮では狭かった。
そのため外部に借りようと思っていたがこの状況で探すのは至難の業だったので一安心だ。
その後、皆の意思を確認すると皆ついて来てくれるようだ。
「もちろんお嬢様について行きます」
ネリアには先に確認し了承をもらっていたが、専属護衛のシシーとアランドレがそう言ってくれた時は嬉しかった。
(皆と離れずに済む…)
そう思うと勉強にも気合いが入り、遂に叔父様に貸してもらった本は全て終えた。
その少し前にお父様からの許可も得たので全ての準備が整った形だ。
薬に関して実績のない私は推薦書が必須だ。
推薦書を書いてもらうため叔父様と簡単な試験を受ける約束をしている。
なんでも知り合いに薬学に関する問題作成を頼んだらしい。
力試しにもなるしちょうどいい。
そして叔父様から出された課題を全てクリアした私は試験をお願いし迎えた試験当日。
朝から気合いを入れて勉強に取り組む。
そして今回問題を作ってくれたクロウィン様に挨拶をする。
クロウィン様はヘルムード学院出身でこれは後から知ったが叔父様とクロウィン様は幼い頃からの顔見知りらしい。
試験は叔父様が用意してくれた部屋で1人で受けた。
「では準備はいいですか?」
「はい」
「時間は45分です。頑張ってください」
それから黙々と問題を解いていく。
正直、難しい問題もあったができる限り力を尽くした。
「はい!45分です。ペンを置いてください」
クロウィン様はそのまま採点作業に入る。
すると叔父様がやって来た。
「どうだ?」
「今、採点中です」
私は緊張した面持ちで待つ。
するとネリアがお茶を持ってきた。
私には分かる。ネリアも緊張している。
やがてクロウィン様が顔を上げ
「これ本当に独学なんですよね?」
と言った。
「ええ。そうです」
「教師をつけた方が良いのではとも思ったのだが、適任者がなかなかいなくてな。カトリナもいなくても進んでそうだったし」
叔父様が付け足して説明してくれる。
「とにかく結果はどうなんだ?」
「すごいですね。少し難しい問題も入れたのにほとんど間違いがありません。これならヘルムードも問題ないでしょうね」
ヘルムード学院も大丈夫と聞いて嬉しかったのと同時に間違った所があった事が悔しかった。
その後もクロウィン様に頼んで勉強を見てもらった。
その流れで夕食も一緒に食べる。
2人のやり取りを見ていると本人達はあまり認めていないが仲が良いように思う。
結局、その後もずっと私室でお酒を飲んでいたらしく翌日、推薦書を受け取りに行った時は完全に二日酔いだった。
そしてなるべく早く出発した方が良いとの事で出発が3日後に決まってからはとにかく忙しかった。
荷物はそんなにないものの今までお世話になった人達へのお礼や長く滞在していたため整理するものが結構あった。
それらを大急ぎでやっていく。
特に感謝の手紙は多いが次にいつ会えるか分からないので絶対にやりたい。
そしてお兄様へ行ってきますの手紙も書いた。
書きたい事が多すぎて長くなってしまったが…
そうしてなんとか当日までに書き終え皆に渡せた。
今回の見送りは疫病のため屋敷の皆だけだがそれで充分だ。
「ナビナ、今まで本当にありがとう。これ、少しだけど。畑の事もありがとね」
ナビナは私達が穀物やスパイスを育てていた畑も引き続き世話をしてくれる事になり、少しばかり謝礼を渡した。
「そんな、頂けません」
「いいから。もらっておけ」
結局、叔父様の言葉で受け取ってくれた。
「では…ありがとうございます。短い間でしたが私こそお仕えできて幸せでした。シスカ公国でも頑張ってください」
「ありがとう。叔父様も本当にありがとうございました」
深く頭を下げる。
「ああ。気をつけてな。あっちでも頑張ってな」
そうしてコクルト国を旅立った。
今回は疫病のため観光目的ではどこも寄らなかったが、道中もひたすら勉強をし不思議と寂しいなどのネガティブな気持ちにはならなかった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
これにてコクルト国編は終了です。
思ったよりも長くなってしまい申し訳ございません。
お付き合い頂きありがとうございました。
すぐにシスカ公国編をスタートさせ今回入れられなかったフェルソニー視点や専属護衛の視点はシスカ公国で少し入れられたらと思っております。
そしてシスカ公国編も長くなる予定ですがよろしければお付き合い頂けると嬉しいです。
また皆様の評価やブックマーク、とても励みになっております。
いつも本当にありがとうございます。
読者の皆様にはこれからも正直な評価をお願いしたいと思っております。
では次回もよろしくお願いいたします。




