147(カトリナ視点)
私は正直、反対されるのも覚悟していたし反対されても引く気はなかった。
最初に叔父様に薬学を学びたいと言った時は案の定、ポカンとしていたが話している内に私の本気度を分かってもらえたようで研究所よりヘルムード学院に行った方が良いとのアドバイスまでくれた。
もちろんただで行けるわけではない。
お父様を説得し出された課題を全てクリアすれば行っても良いと許可を得た。
でもお父様の説得が意外に大変だった。
まず最初に私の意思を伝えるために手紙を書く。
頻繁に書いているにも関わらず緊張する。
ご機嫌伺いの挨拶から始まり私の近況、そしてシスカ公国に薬学の勉強のため行きたいと思っている事を丁寧に書いた。
これでお父様がどんな反応をするか分からないが、とりあえず1通目の手紙としては上出来だと思う。
そしてさらに嬉しい知らせも届いた。
「カトリナが希望していたフェルソニーとの面会の件だが扉越しでなら良いようだ」
「本当ですか!?」
「ああ。フェルソニー本人からも許可を得た。本人も楽しみにしているよ」
「本当にありがとうございます!嬉しいです」
扉越しでも会えるなら嬉しい。私は何度も頭を下げる。
「当日は私も一緒に行く」
「分かりました。ありがとうございます」
「それで話は変わるが兄上の方はどうだ?」
あれから私は叔父様に貸してもらった本を読み込み勉強をする傍らお父様の返事を待っている。
本当は勉強するために家庭教師をつけようかと提案されたが、適任者を探すには時間がかかるしそこまで頼るわけにはいかない。
そう思ってできる所は自分でやっている。
幸いカトリナ自身の元々持っているポテンシャルが高いおかげで今の所はなんとかできている。
「手紙を書きましたが返事はまだです」
仕事についても聞かれたが、疫病の影響で1つの場所に集まるのは控えるべきという事で仕事はほとんどが家だ。
そのため辞めても問題ないだろうし勉強に集中するため辞めるつもりだ。
そう素直に伝え、最後に深くお礼をした。
そして迎えたお兄様との面会当日。
事前にそんなに物は持っていけないと聞いていたので手紙とお守りと言われる石のネックレスと私が縫った巾着に家族写真を入れて渡そうと考えた。
場所に乗り、1時間ほどかかる場所でお兄様は療養していた。
その場所に着いた瞬間、なんだか緊張してしまってお兄様の部屋の前に案内されるともっと緊張した。
「フェルソニー、私だ。体調はどうだ?今日はカトリナも連れて来たぞ」
最初に叔父様が声をかけてくれた。
「ゴホッゴホッ、カトリナ…?」
その声を聞いた瞬間、泣けてきてしまって上手く話せない。
「はい。お兄様、お加減はいかがですか?」
「ああ。その声はカトリナだ。ゴホッ」
しかもお兄様は調子が良くないにも関わらず扉の所に来てくれた。
その証拠にドスッという体を扉に預けるような音が聞こえたし扉の隙間から覗けば手が見える。
「はい。カトリナです。お兄様」
「カトリナ、泣かないで」
「なんで分かるんですか…」
「あっ合ってた。ゴホッ…僕はカトリナの事ならなんでも分かるんだ」
相変わらずお兄様は顔を見ていないのになんでも分かっている。
「ふふっ。そうでしたね」
私も頑張って落ち込んでいる所は見せないようにしているのにお兄様にはバレバレだ。
「ああ…慰めてあげたいけど無理だな。ゴホッゴホッ…ごめんね」
「なに弱気な事言ってるんですか。早く治していつもみたいに慰めてください」
「あはは…頑張るよ」
お兄様も私が悲しくならないよう元気なフリをしてくれるがその声は今にも消えてしまいそうだ。
「薬の…ゴホッ勉強したいんだって?」
たぶん叔父様から聞いたのだろう。
「はい。まだお父様からお許し頂いておりませんが」
「ははっ。難しいだろうなぁ。ゴホッ…父上はカトリナの事すごく心配してたから」
「それを言うならお兄様もですよ。お父様もお母様もお兄様の体調、すごく心配していました」
お兄様が疫病に罹ったと知り、叔父様の所に手紙が届いたらしい。
なぜ私の所ではないのか分からないが…
まぁあんな事を言ったからだろう。
その手紙で会いたいと書いてあった事を伝えると断ってくれと言われたのでその代わりに伝言はないかと聞いた。
すると
「こんな息子でごめんなさい。2人の息子として生まれてきて幸せでした。今までありがとうございました。かな?」
ここだけは咳もせずはっきりと言い切った。
「そんなこれで最期みたいに言うんですか。それはご自分で言ってください」
私は悲しくなりそれを隠すように言った。
「ゴホッゴホッ…ふふっ」
「今日は渡したいものがあるんです」
「なに?」
「これ受け取ってください」
そして今日持ってきたものを渡す。
「すごいなぁ。ありがとう。ゴホッ」
「ゴホッ…ああ。今すごくカトリナを抱きしめたいけど無理だ。ゴホッ…父上と母上の事よろしく頼む。カトリナ、ありがとう。僕はいつでもカトリナを思ってるよ。我が愛しの妹」
「私こそありがとうございます。お兄様のおかげでリラックスパンツも好調ですしたくさん助けられています。だからこれからもどうか一緒にいてください。我が愛しのお兄様」
その言葉を聞いて私は静かに涙を流した。
そのせいで後半は言えていなかっただろう。
それでもお兄様は聞き取ってくれた。
「ははっ。嬉しいな。ゴホッゴホッゴホッ…そろそろ疲れたから休むよ。叔父様もありがとうございました」
「ああ。分かった」
叔父様は今まで私達の会話を邪魔しないよう静かに見守ってくれていた。
そして最後の時には私達だけではなく叔父様も悲しそうに顔を歪めていた。
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