146(カトリナ視点)
(熱い…苦しい…)
高熱で意識が朦朧とする中、たくさんの夢を見た。
カトリナがカトリナとして生きていた頃の夢や前世の私の夢、他にも今まで過ごしてきた時の夢も見た。
その中でもカトリナは愛されていた。
家族との思い出は楽しいものばかりでお父様もお母様もお兄様も慈愛に満ちた目で私を見ている。
だから余計に悲しくなった。
もう私の中で今まで出会ってきた人達はただの物語の登場人物ではなく、感情を持った生身の人間なのだ。
私だって色々な事を思うし感じる。
ただ本を見ている感覚とは違うのだ。
それに前世の夢を見てあの日々が奇跡みたいで泣けてしまった。
「お嬢様!お嬢様!」
「んっ…」
「あっ起こしてしまってすみません…とてもうなされていたので」
ネリアが私の額を拭ってくれる。
「泣かれていたようですが大丈夫ですか?」
「えっ…」
その言葉に目の辺りを触ってみると濡れていた。
「本当だわ…」
「お水飲めますか?」
「ええ…ゴホッ…ありがとう」
「食欲はありますか?」
「ない…」
「そうですよね。では今日はこのままお休みください」
「ありがとう…」
それからもしばらくは体調が戻らなかったが、ネリアがおかゆを作ってくれたりして徐々に回復していった。
でもこの世界の薬は苦すぎる。
これだけはなんとかならないのかと思っている。
やがて体調が回復し叔父様から呼び出しを受けた。
「カトリナ、体調はどうだ?」
「おかげさまで回復しました」
叔父様からは両親の元へ帰るように言われ、その方向で両親と連絡を取っていると言われた。
「せめて最後にお兄様とお話をさせて頂けませんか?ドア越しでも良いので。そうしたらおとなしく両親の元へ帰ろうと思います」
誰も近づけないよう隔離されていると聞いていたのに最後の要望としてつい言ってしまった。
だってやはりお兄様を1人にはできない。
「う〜ん…実際に実現できるかどうかは分からないが聞いてはみる」
なのに叔父様はまだ余地を残してくれた。
「ありがとうございます。あのそれでお兄様の容体はどうなのでしょうか?」
「良いと言い切れる状態ではないが頑張っているようだ」
「それはすなわち悪いという事ですか?」
「知っているだろう?この病気は確かな特効薬はないんだ。その都度症状を緩和するための薬しかない。だから軽はずみに元気だとは言えない」
「確かにそうですね…」
「フェルソニーも弱っていく自分を見せたくないから両親の元に戻った方が良いと言っていた。また状況が落ち着いたらこっちに来れば良い。いつでも歓迎するよ」
「分かりました。でもそれはお兄様と話ができてからです。ですからどうかお願いしますね」
自分の部屋に戻った瞬間、涙が出る。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
ネリアが心配そうに寄り添ってくれる。
「ええ。少し身近な人が死んでしまうと思うと悲しくなっただけ」
お茶を持ってくると離れていくネリアをとっさに引き止めてしまう。
「良いわ。大丈夫。大丈夫だからここにいて」
「これで最後になるかもしれないわね。旅に出た時はあんなに楽しい気持ちだったのに。こんな事になるなんて思わなかった」
それからネリアに思いの丈をぶつける。
話しているうちにある事を思い出した。
それは本で読んだシスカ公国にある薬草の研究所の事だった。
前々からずっと気になっていてせっかくならそこで学んでみたいと思っていた。
そしてネリアにもそれを伝え、宥めるネリアに懇願する。
「分かりました。お嬢様の人生ですからね。叔父様に相談してみましょう」
ついにはネリアが折れてくれ、叔父様に相談する事になったのだ。
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