145(カトリナ視点)
パン屋や商会でもマスクの売れ行きは好調でその分、忙しくはあったが嬉しかった。
屋敷の使用人達にも手伝ってもらい、なるべく量産できるように頑張っている。
もちろんその分のお手伝い料は少しだが渡している。
連日の日刊紙では徐々に患者数が増え、街中でマスクを着ける人も増えるとなんだか複雑な気持ちになった。
マスクで少しは予防できていると良いなと思いつつもなぜ特効薬がないのか、私に医学の知識があれば何かできるのではと思うようになった。
そんな時、最悪の知らせが届く。
その日もいつも通り、身支度を整えていた時。
いつもなら必ずノックをするはずの叔父様がいきなり入ってきた。
「カトリナ!大変だ」
しかも今までにないくらい焦っている。
後から入ってきた執事のマールさえも目に入っていないかのように。
「どうしたのですか?」
私が驚きながら聞くと
「フェルソニーが…フェルソニーが!大変なんだ!」
「落ち着いてください。お兄様がどうしたんですか?」
「疫病に感染してしまったようなんだ」
(まさか…お兄様が…そんな…)
その瞬間、そんな事を思いながら私は膝から崩れ落ちてしまった。
それでもなんとか問いかける。
今、1番心配なのはお兄様の事だ。
「お兄様の様子は?」
「今は隔離されて誰も近づけない。カトリナも急いで兄上の元に帰った方が良い。もう誰がいつなってもおかしくない状況なんだ」
実は以前からお父様には帰って来いと言われていたが理由をつけてはそれを拒否していた。
それがもう出来なくなると思うとまだやりたい事がたくさんあるのにという残念な思いと皆私のために言ってくれているんだという思いでモヤモヤする。
それでも…
「お兄様をこの国に1人にしろという事ですか?」
それはできない。
「フェルソニーの事はこっちで面倒を見る。逐一状況も報告する」
「できません!できません!だって死ぬ可能性もあるんですよ。そんな…誰もいない最期を迎えさせるかもしれないなんて…できません!私は別に罹っても構いませんからここに居させてください!」
私はいつの間にかこの世界の人間に情が湧いてしまったようだ。ただお兄様を1人にしてここを離れたくない。
「少し落ち着いてくれ。気持ちは分かる。ただ自分が罹っても良いなんて馬鹿な事は言うな」
「気持ちが分かるなんて…言わないでください。他人の気持ちなんてそう簡単に分かるわけない」
今、誰が何を言おうと聞きたくない、聞けない気持ちが強かった。
「そうだな…それは悪かった。だが今回は本気だ。フェルソニーだけではなくカトリナまでなってしまったら耐えられないんだ。分かってくれ」
そう言う叔父様の悲しそうな顔を見てハッとする。
「叔父様のご意見は分かりました。しばらく考えたいので1人にしてください」
自分も今は冷静ではない。
少し頭を冷やすため叔父様にもネリアにも下がってもらいすぐにベッドに横になった。
そこからはもうほとんど記憶がない状態で気づいたら熱を出していた。
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