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その人物とはフェルソニー様だ。
その知らせを受け取ったのは私達が朝の身支度をしている時だった。
「カトリナ!大変だ」
といつもならノックをして入って来るはずの叔父様がいきなりドアを開け放った。
私達はその音に驚きとっさに振り向く。
「どうしたのですか?」
「フェルソニーが…フェルソニーが!大変なんだ!」
「落ち着いてください。お兄様がどうしたんですか?」
「疫病に感染してしまったようなんだ」
「えっ!?それは本当ですか?」
「ああ」
「マスクは…?」
「してはいたようなのだが…」
「そうですか…」
その途端、お嬢様は膝から崩れ落ちた。
「お嬢様!」
私はお嬢様を支える。
「お兄様の様子は?」
お嬢様はしゃがみ込んで静かに言った。
「今は隔離されて誰も近づけない。カトリナも急いで兄上の元に帰った方が良い。もう誰がいつなってもおかしくない状況なんだ」
「お兄様をこの国に1人にしろという事ですか?」
「フェルソニーの事はこっちで面倒を見る。逐一状況も報告する」
「できません!できません!だって死ぬ可能性もあるんですよ。そんな…誰もいない最期を迎えさせるかもしれないなんて…できません!私は別に罹っても構いませんからここに居させてください!」
お嬢様は声を震わせながら首を振る。
「少し落ち着いてくれ。気持ちは分かる。ただ自分が罹っても良いなんて馬鹿な事は言うな」
「気持ちが分かるなんて…言わないでください。他人の気持ちなんてそう簡単に分かるわけない」
「そうだな…それは悪かった。だが今回は本気だ。フェルソニーだけではなくカトリナまでなってしまったら耐えられないんだ。分かってくれ」
そう言う叔父様の表情はとても悲しそうでその表情にお嬢様もハッと表情を変える。
「叔父様のご意見は分かりました。しばらく考えたいので1人にしてください」
「ああ。分かった」
部屋から出ていく叔父様もそれを見送るお嬢様も意気消沈という感じで私もどう声をかけるか迷ってしまった。いや、声をかけて良いものか分からなかった。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「ええ。少し休むからネリアも下がって」
その声は明らかに大丈夫ではなかったが今無理矢理押し切るより時間をおいた方が良いと思った。
「承知しました。何かありましたらすぐにお呼びください」
と私もお嬢様の部屋を出て自分の部屋に戻った。
本当はメイドとしてやるべき事がたくさんあるがとてもそんな気分ではなかった。
元々はこの世界の人間ではないとしてもこの世界で過ごしてきて関わった人達には色々な思いを抱いている。
私達にとってもうこの世界で出会った人達は物語の中の単なる登場人物ではなくしっかりと血の通った大切な人達だった。
だから今回の件も簡単には受け入れられないしお嬢様の気持ちも理解はできる。
だからこそこれからどうすれば良いのかどうするべきなのかは分からない。
それでも自分にできる事をやるしかないと気持ちを切り替える。
ここまでお読み頂きありがとうございます。




