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暗いニュースが多い日々の中でも現実はそう悪くはなかった。
新しい配合のパンの売れ行きは好調でパン屋の仕事も屋敷の仕事も順調に両立できていた。
ただ騎士団やレストラン、家庭への配達が減ってしまったのは悲しい。
でも店舗の方は相変わらず大繁盛だ。
「こっち足りません」
「はい」
「予約の方が受け取りに来ました」
私は裏とホールを行き来しながら働く。
「お待たせしました。こちらです」
「ありがとうございます」
「パン焼けたよ〜持ってって〜」
「はい」
「ただいまパン焼きたてです。おひとついかがですか?」
パンを並べたりお会計や呼び込みをしたりせっせと動いている。
でも以前より呼び込みで入ってくれるお客さんは少なくなった。
やはりこの情勢で財布の紐も堅くなっているのだろう。
現にお嬢様も私ももらったボーナスはあまり使わず貯金している。
「お疲れ様でした。明日もよろしくお願いします」
「ああお疲れ様。明日もよろしくね」
そうして私は仕事を終え屋敷へ戻る。
今日は私の方がお嬢様よりも早い帰宅だ。
お嬢様が帰って来るまでの間にお嬢様のお部屋を整えたり、お嬢様宛ての郵便物をチェックしたりと仕事から帰って来てもやる事はたくさんある。
でもここでいつまでできるか分からない。
というのもお嬢様が旦那様から帰って来いと言われているそうだ。
もうすでにコクルト国の事はあっちでも噂になっているだろう。心配するのは当たり前の事だ。
お嬢様は一生懸命抗っているが、いよいよ戦争にでもなれば帰る事になるだろう。
そう思いながら動いているとお嬢様が帰って来る時間になった。
「お帰りなさいませ」
「ただいま」
それから楽な服装への着替えを手伝い、お茶を淹れる。
次にやる事がない時は一緒にお茶を飲む事もたまにある。
「本日はいかがでしたか?」
「最近はそんなに忙しくないから落ち着いてできるわ」
「そうですか」
「でも皆噂好きだから色々聞くのよ」
「どんな事をですか?」
「最近、制服の持ち込みが減っているから私達が解雇されるんじゃないかとか今隣国と戦争しないように色々交渉しているみたいだけどどんどん悪い方に行っているとか。事実かどうか分からないけどね」
お嬢様は少し顔色を曇らせた。
「ネリアの方は?」
「私の方はいつも通りですよ。配達は減りましたけどお店は繁盛しています」
「そう。良かったわ。いつもならこういう話には耳を貸さないんだけどこの情勢だからそうかもって思ってしまうわよね」
「確かにそうですね。この先どうなるかは誰にも分かりませんから。不安ではあります」
「そうよね。カドーニ王国での事件もいつ解決するのかしら?」
「今フェルソニー様達が頑張ってくれていますよ。だからもう少し待ちましょう」
「そうね。まさかこの国に来てこんな事になるなんて思わなかったわ」
「どこにいても何が起こるかは誰にも予想できませんから」
そう話していた数日後、思わぬ吉報が届いた。
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