123(カトリナ視点)
それはフランさん達が緊張状態の続く隣国へ派遣されるという事だ。
戦争の可能性がある地域に行くという事は当然、命の危険もある。
2人はは念のためだと笑い飛ばしていたがシシーとアランドレに限らずフランさんとエイブリーさんまで。
さらにこの時、ネリアがパン屋の店主がコッピーニ村へパンを焼きに行くから仕事が忙しくなると報告してきた。
身の回りの事は自分でできるしコッピーニ村に里帰りしていたナビナも帰って来ていたので大丈夫だとは言ったが寂しい気持ちが強い。
そんな中、シシーとアランドレが出発の日を迎えた。
「これ、作ったの。受け取ってくれる?」
屋敷の皆も手伝ってくれたおかげで無事渡せた。
「それでは行って参ります」
「行ってらっしゃい。頑張ってね」
「はい」
そうしてシシーとアランドレの2人はコッピーニ村へと旅立った。
見送ったのも束の間、次にフランさんとエイブリーが所属する第一騎士隊が旅立つ。
専属護衛の2人よりも時間に猶予はあるものののんびりはしていられない。
私の中で戦争に行く時のお守りといえば千人針しか思いつかなかった。
色々な人に協力してもらい縫い付けてもらったが足らない分はネリアとナビナと3人で縫ったりした。
なんとか間に合い渡す事ができた。
「これは?」
「千人針という東の国のお守りです」
「ありがとう。大切にするよ」
「ありがとうございます」
そうして第一騎士隊の2人を見送ったと思ったら別の問題が発生した。
この頃の日刊紙は日々悪い報道ばかりだった。
それもあってか手紙でお父様から帰って来いと言われ続けている。
でも私がここで祖国に帰ってしまえばもう一度この国に来るのは難しいだろう。
そう思いあれこれ理由をつけて抵抗しているがそれもいつまでできるかは分からない。
やがてネリアのお店の店主がコッピーニ村から帰って来てネリアの忙しい日々は終わった。
里帰りしたナビナやネリアから店主の話を聞くとコッピーニ村はかなりひどい状況だったらしい。
特にコッピーニ村で栽培している農作物はほとんどだめになったらしくパン屋の小麦も仕入れが難しい状況だという。
「エコピットさんにクライドさんの農園を紹介しても良いでしょうか?お願いします」
そしてそうお願いされた。
「分かったわ。クライドさんには私から連絡しておくわ」
そう言い、手紙を書いて送るとすぐに返事があり快諾してくれた。
「良いそうよ」
「ありがとうございます」
クライドさんに指定された日に農園へ向かう。
シシーとアランドレの代わりは屋敷付きのグレンとダナが務めてくれる事になった。
「グレンとダナと申します。これからカトリナ様を全身全霊でお護りいたします。よろしくお願いします」
「ミール・カトリナです。よろしくね」
ちなみにコクルト国では男性には変わった名前を、女性には最後がナで終わる名前をつけると幸せになれると言われているそうだ。
確かにコクルト国で知っている女性はナで終わる名前の人が多かったような気がする。
そうして農園に到着するとクライドさんが出迎えてくれた。
「クライドさん、今日はありがとうございます」
「こちらこそありがとうございます。ご希望に添えるものかは分かりませんがこれがうちで作っている小麦です」
「お〜これ買い取らせて頂いても良いですか?実際にこれでパンを作ってみたいので」
結局、店主はクライドさんの小麦を買い取りそのままパンの試作をするというのでパン屋に向かった。
「2人とも今日は案内してくれてありがとうございました。おかげで良いパンができそうです」
それから数日で試作ができ試食会をするからと招待を受けた。
試食会にはネリアの同僚達がいて挨拶もさせてもらった。
「初めまして。ミール・カトリナと申します。いつもネリアがお世話になっております」
「今回の小麦もこの方のご紹介なんだよ。本当にありがとうございます」
「いいえ。美味しいパンを作って頂くためですから」
同僚達はネリアが侍女をやっている事もあまり知らなかったようで驚いていた。
「初めて聞いたから驚いたよ」
そして出された試食用のパンは純粋に美味しかった。
しかし長く勤めている店員には分かるようでまた作り直すみたいだ。
その後、再び試食を頼まれ改良されたパンを食べると確かにより初めて食べた時のパンに近いような気がした。
「すごい!美味しい!」
「ではこれで良いでしょうか?」
結局、満場一致で改良版のパンを正式に販売する事が決まった。
クライドさんにもお礼はたっぷりしておいた。
お金は受け取ってもらえなかったので農園の手伝いをたくさんしそれ以外の雑用もこなした。
ちなみにこの前、言われていた通りボーナスをもらったがこのご時世なのでもしものために貯金している。
しかし日々暗い話題ばかりの日常にこの後、吉報が舞い込む事になる。
ここまでお読み頂きありがとうございます。




