122(カトリナ視点)
その危機を初めて認識したのはある朝の事だった。
その日は珍しくいつも朝食を一緒に摂っているはずの叔父様がいなかったのだ。
それを執事に聞くと気まずそうに日刊紙を差し出す。
そこには大きな見出しでコッピーニ村で豪雨災害があった事とコクルト国が隣国と緊張状態に入ったと伝えていた。
コッピーニ村は確かナビナの出身地だ。
私はすぐにナビナの方を向きなんで故郷に帰らせないのかと聞いた。
すると執事は旦那様の判断だと言う。
私はすごく心配だがこの屋敷の主人は叔父様だ。
叔父様がそう判断したのならば仕方がない。
それにナビナもそれで納得しているようだ。
だがもう1つ心配なのは隣国と緊張状態に入ったという事だ。それは言わばコクルト国が隣国と戦争になる可能性があるという事。
執事が宥めてくれはするもののその事実は衝撃的で緊張が走る。
針子の作業場でもその話題で持ちきりだった。
「コッピーニ村、大雨で大変らしいわ。第五騎士隊は出動するのかしら?」
「隣国と緊張状態って事は戦争の可能性もあるって事?嫌だわぁ。またものが高くなるじゃない」
などさまざまな世間話が飛び交う中私は黙々と作業をする。
昼食を摂り午後の仕事も無事終え「お疲れ様でした」と作業場を出るとすでに2人が待っていた。
「待たせてしまったかしら?ごめんなさい」
「いえ。本日もお疲れ様でした」
「お疲れ様。でも2人が待っているなんて珍しいわね。どうしたの?」
いつもは私が2人を待つ方だ。
「実は大切なお話しがありまして」
2人の表情はいつになく真剣だった。
「分かったわ。とりあえず屋敷に帰って落ち着いてからでもいいかしら?」
「はい」
それから屋敷に帰り、ちょうど帰ってきたネリアにも大切な話があると伝える。
そして。
「実は私達、コッピーニ村の災害派遣に行く事になりました」
と告げられた。
私は一瞬、動揺したが直後納得した。
皆が言っていた通りになったのだ。
一方、ネリアは動揺が顔に出ていた。だから私は極めて平然と
「そう。いつ行くのかしら?」
と聞く。
「数日中には」
その言葉を聞いて数日で作れるお守り的なのを思い浮かべるがなかなかない。
その中で1つ思い出したのがコクルト国の伝統的なお守りだ。
それを作ってみる事にする。
しかし今は気軽に作り方を聞けるナビナがいない。
ナビナの家族と連絡が取れたためコッピーニ村に里帰りしている。
どうしようかと考えて思いついたのは執事のマールに聞く事だった。
「これは色々な願いを込めたチャームに三つ編みにした糸を繋げて作ります」
それはまるでミサンガにチャームがついているようなものだった。
「無事に帰って来て欲しいの」
「それでしたら十字架かアンカーが良いでしょうね」
執事は良さそうなチャームを見繕ってきてくれた。
ではアランドレが十字架でシシーがアンカーにしましょうか」
2人いるのでどちらも作る事にする。
「あとはこれを繋ぐ紐を作りますが…これは好きな色で編んで頂いて結構です」
「分かったわ」
「何やってるの?」
その時、叔父様が覗いてきた。
「旦那様、お帰りなさいませ」
執事のマールが頭を下げる。
「ああ。で何をやってるんだ」
「コクルト国のお守りを作ってるんです。シシーとアランドレに」
「ああ。2人の事は聞いたよ。寂しくなるな。屋敷の中でも優秀な者を護衛に付けるつもりだから安心してくれ」
「はい。ありがとうございます」
「手伝っても良いか?」
「良いんですか?お忙しいのに」
「ちょっとした気分転換だ」
と言って私の隣に座り、編むのを手伝ってくれた。
しかしこの後さらに衝撃的な事を耳にする事になる。
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